Snapdragon 835の実力はいかに!? 現行最高のiPhone 7 Plusの性能も凌駕

文●石野純也 編集●ゆうこば

2017年03月22日 20時30分

クアルコムは、3月22日に「Snapdragon 835」のベンチマークイベントを中国・北京で開催した。

報道陣には、各種ベンチマークアプリがインストールされたSnapdragon 835搭載の「Qualcomm Reference Design」端末(以下、QRD)が渡され、約2時間の間、自由にベンチマークを取ることが許可された。

Snapdragon 835搭載のリファレンスモデル(右)で、ベンチマークテストを行なった。左は比較のための「Galaxy S7 edge」

Snapdragon 835搭載QRDでテストできたベンチマークアプリは「Antutu Benchmark v6.3.3」「Geekbench v4.0」「3D Mark」「PC Mark」の4本で、それぞれスコアーを測定することができた。

なお、Antutu BenchmarkとGeekbenchに関しては、比較のため1世代前のプレミアム端末向けチップセット「Snapdragon 820」を搭載したドコモ版の「Galaxy S7 edge」でもテストしている。

今回試用したGalaxy S7 edgeは先日のOSアップデートを適用しており、QRDと同じAndroid 7.0に条件を統一してある。

【Antutu Benchmark】
アップルのA10 Fusionおよび現行版を凌駕する

早速、その結果を見ていこう。まずは、Antutu Benchmark。こちらは、18万点オーバーという高いスコアーをたたき出した。アプリ内の比較では、これまで最高得点を記録していた「iPhone 7 Plus」(チップセットはSnapdragonと同じARMベースの「A10 Fusion」)を抜いてトップに。

Antutu Benchmarkのスコアーは、18万を超えた

対するGalaxy S7 edgeは、13万点台前半となり、その差は約1.4倍となった。「3D」「UX」「CPU」「RAM」と、すべての項目でSnapdragon 820を凌駕していることが分かる。

クアルコムは、Snapdragon 820と835の違いを、処理速度で20%、GPUで25%とアピールしているが、少なくともAntutu Benchmarkの結果は、それ以上に開きが出ているようだ。

「Galaxy S7 edge」との比較では、すべての項目が上回っている

スコアーとしては、アップルの「A10 Fusion」を上回っている

【Geekbench】
マルチコアでの値に大きな変化が出た

次に、Geekbenchの結果を掲載する。こちらは、シングルコアのスコアーが「2055」、マルチコアのスコアーが「6495」で、いずれも高いスコアーとなっている。

Snapdragon 820を搭載するGalaxy S7 edgeは、シングルコアで「1587」、マルチコアで「3910」となっており、差はマルチコアでの方が出ているようだ。

GeekBenchでは、CPUの性能を測定。いずれも高い結果が出た

シングルコア、マルチコアともに、「Galaxy S7 edge」よりスコアーが高い

Snapdragon 835はオクタコア構成で、処理能力を必要とする際には、パフォーマンス重視のクアッドコアを利用する。この動作クロック周波数は2.45GHz。対するSnapdragon 820は2.2GHzのクアッドコア構成で、こうした差がスコアーの違いに表れている。

【3D Mark&PC Mark】
ここでも現行モデルと比べ大幅に向上

また、「3D Mark」の「Sling Shot(ES 3.0)」を使ったベンチマークのスコアーは「4627」、「PC Mark」では「7949」を記録し、いずれもかなりの好成績を上げている。

Snapdragon 820を搭載した端末だと、前者が2000前後、後者が5000前後となっており、現行モデルと比べると大幅に向上していることが分かる。

ベンチマークでは出ない実力をデモで確認
ギガビッドLTE環境下では従来機にも影響が出る

しかし、ヘテロジニアスな処理を売りにするSnapdragon 835にとって、ベンチマークはあくまで指標の1つでしかない。CPUやGPUの性能を測るための物差しでしかないというわけで、クアルコム側もそれは認める。

こうしたベンチマークの数値では表せない結果に関しては、デモコーナーでその詳細を解説していた。

ギガビットLTEについては、米国でのシミュレーション結果を展示。LTEはカテゴリーが段階的に分かれており、それによって対応する機能や速度が決まる。ギガビットLTEは、LTEのカテゴリー16という位置づけだ。これが、過去のカテゴリーと混在した際や、カテゴリーごとの比率を変えたときに、スループットにどう影響を与えるのかというのが、このデモの目的となる。

たとえば、カテゴリー16(下り最大1Gbps)の端末が7%、残りが93%の場合、カテゴリー6(下り最大300Mbps)の端末で52.8Mbps、カテゴリー16の端末で93.38Mbpsのスループットが出る。

この割合を変更し、カテゴリー16の端末が十分普及して40%まで上がると、カテゴリー16では107.88Mbps、カテゴリー6では72.45Mbpsになる。いずれのカテゴリーでもスループットの向上が見込めており、これは周波数の有効利用ができていることを意味する。単に対応端末の速度が上がる以上に、導入するキャリアにとってもメリットがあると言いたいわけだ。

1Gbps対応の端末が増えると、全体としてスループットが上がることが分かる

高速通信は、大量の帯域を必要とする360度動画の配信などに役立つ

HDR・VR・オーディオなどのサポートや
セキュリティー機能の拡充もはかる

また、Snapdragon 835は映像のコントラストを高める「HDR10」に対応。VRに関しては、モーショントラッキングやセンサーによる移動距離の測定にも対応している。

従来型のモバイルVRだと、体の動きまでは映像に反映できなかったが、Snapdragon 835を利用すれば、こうしたコンテンツも作成できる。クアルコムが「没入感」を売りにしているのは、そのためだ。オーディオも同様に、「Aqstic Audio Codec」に対応し、ネイティブDSDの再生にも対応する。

「HDR10」に対応。VR用のリファレンスデザインも用意する

セキュリティーは、インカメラと赤外線カメラの2つを使った光彩認証をサポート。音声認証や指紋センサーにも対応しているほか、機械学習を使い、未知のマルウェアを検知する機能も備える。

このほか、カメラで捉えた物体を認識したり、音声を学習してノイズ環境下での反応率を上げたりといった、機械学習を用いた機能も展示されていた。これらの機能もSnapdragon 835がサポートしている。

光彩認証や音声認証のほか、未知のマルウェアに備えることも可能だ

機械学習にも対応。カメラに写るものを特定したり、音声認識の精度を上げたりといったことに活用できる

現時点で最高峰のパフォーマンスを誇り、通信も下り最大1Gbpsで高速。しかも映像、音楽、セキュリティーなど、用途に合わせた機能も用意しているのが、Snapdragon 835の実力だ。プレミアムな端末に搭載するのに、ふさわしいチップセットと言えるだろう。これを搭載した端末が発売されるのが、いまから楽しみだ。

■関連サイト

■関連記事