iOS 9の隠れた目玉機能、「広告ブロック」とは何か? - モバイルWeb広告における影響を考える
文●鈴木淳也(Junya Suzuki)、編集●ハイサイ比嘉
2015年09月22日 09時00分
Appleの「iOS 9」の配信が、日本時間9月17日午前2時に開始された。以前のiOS 8とは異なり、比較的少ないストレージ空き容量でインストールできたり、アップグレードにおける目立ったトラブルが少ないということもあり、すでに導入して利用しているユーザーも多いかもしれない。
このiOS 9ではいくつか新機能が導入されているが、その中で一部で大きな話題となっているのが「広告ブロック」(Ad Blockers)機能だ。iOS 9で広告ブロック機能が導入される話は以前から出ており、チェックしていた方は少なくないだろう。一方で、実際に「どうやって機能を有効化すればいいかわからない」と思った方もいるはずだ。本稿では、同機能の簡単な利用ガイドと概要、そして「広告ブロック」機能が周囲にもたらす影響と反応についてまとめたい。
デフォルトでは利用できない、「広告ブロック」を有効化する方法
さて、iOS 9で導入された広告ブロック機能だが、実はデフォルト状態では利用できず、設定項目さえ出現しない。機能自体はiOSのWebブラウザであるMobile Safariで提供されるもので、Safariの設定でその機能を有効化できる。ただ「Safari自体は広告ブロックの機能を備えていない」ため、別途アプリで同機能を追加しておく必要がある。この広告ブロック機能を持ったアプリはApp Storeからインストールできる。
Safariで広告ブロック機能を有効化する手段が提供されたことで、同機能を提供する各種アプリがiOS 9の配信開始とともにApp Storeから検索できるようになっている。利用可能なアプリの一覧はThe Loopなどのサイトで紹介されており、適時新しいアプリが発見されるごとに更新されているようだ。
注意点は、これらほとんどが有料アプリとして提供されていることだ(だいたい3〜5ドル程度)。無料版もあるが、基本的に機能が限定されており、アプリ内課金(In-App Purchase)で機能ロックを外してやる必要がある。後述するが、ウイルス駆除ソフトウェアが有料販売されているものと考えればいいだろう。今回はこのうち、Marco Arment氏の「Peace: Block Ads and Trackers, Powered by Ghostery」(2015年9月21日現在、利用不可となっている。後述)を例にインストールや設定手順をみていく。
まずはiPhone(iPad)またはiTunesでApp Storeを開いて「Peace」を検索してインストールする。Peaceアプリそのものは起動しても設定メニューしか表示されない。「Enable Peace」が有効になっているかを確認した後、iOSの「設定」を開いて「Safari」の設定項目を開く。広告ブロック機能を備えるアプリがインストールされない限り、このSafariの設定には該当する機能の項目は一切出現しない。
ここで、「Peace」がインストールされた状態で設定メニューを開くと、「一般」カテゴリの「ポップアップブロック」の後ろに「コンテンツブロッカー」という項目が出現しているはずだ。これを選択すると、現在インストールされている「コンテンツブロッカー」(「広告ブロッカー」ではない点に注意)が一覧表示されるので、「Peace」を有効にしてやればいい。これで準備完了だ。
試しに、ASCII.jpの記事をサンプルに「Peace」の効果を見てみる。通常時と「Peace」を有効にしたものの2種類を比較のために載せているが、広告バナーのほか、TwitterやFacebookなどのSNSへのリンクとなる「ソーシャルウィジェット」が削除されていることが確認できるだろう。スマートフォン版のビューでは広告が少なく表示されるため、PC版ビューに切り替えるとその効果はさらにわかりやすい。これがiOS 9で導入されたSafariの広告ブロック機能だ。
なお、ソーシャルウィジェットが削除されるのは「Peace」に用意された特有の機能で、設定項目にある「Block Social Widgets」の機能を有効化していることに由来する。
「コンテンツブロッカー」という表記が示すように、iOS 9に導入された新機能は広告ブロックにとどまらず、Webページ内のさまざまなコンテンツ要素に作用する。「Peace」のメイン機能は広告とソーシャルウィジェットのブロックだが、このほか拡張で適時ブロック可能なコンテンツを増やしたり、「コンテンツブロッカー」として導入されるアプリによっては、さらに異なる特徴を備えるものが存在したり、ブロック機能の性能が異なるなど、iOSのカスタマイズに幅が出てくるものとなっている。
複数の「コンテンツブロッカー」を試す
本稿は、当初「Peace」のみを例にコンテンツブロッカー導入方法について紹介していたが、作者のMarco Arment氏が同アプリを公開から2日でApp Storeより取り下げてしまい、その後の更新も行わない意向だと伝えている。詳しくは後ほどフォローするが、詳細な経緯は同氏のBlogの「Just doesn’t feel good」というエントリに記されており、興味ある方は読んでみるといいだろう。Arment氏はTumblrやInstapaperの開発でも知られるiOSアプリの人気デベロッパーであり、今回の結果は残念だ。
設定不要、“ブラックリスト”を順次拡張する「Crystal」
Arment氏はPeaceの乗り換え候補として「Purify Blocker: The Best, Simplest, and Fastest Blocker for Safari」(480円)と「Crystal」(120円)のふたつを挙げているが、ここではまず、日本でも人気アプリとしてランキング上位に位置している「Crystal」を簡単にフォローしておく。
|
|
|||
| Crystal - Block Ads, Browse Faster.
|
|||
|---|---|---|---|
| 価格 | 120円 | 作者 | Dean Murphy |
| バージョン | 1.0.1 | ファイル容量 | 2.5 MB |
| 対応デバイス | iPhone 5s以降、iPad mini 2以降、iPad Air以降、iPad Pro | 対応OS | iOS 9以降 |
|
|
|||
| Purify Blocker: The Best, Simplest, and Fastest Blocker for Safari
|
|||
|---|---|---|---|
| 価格 | 480円 | 作者 | Chris Aljoudi |
| バージョン | 1.0.1 | ファイル容量 | 10.4 MB |
| 対応デバイス | iPhone 5s以降、iPad mini 2以降、iPad Air以降、iPad Pro | 対応OS | iOS 9以降 |
「Crystal」は英国のアプリ開発者Dean Murphy氏の開発したコンテンツブロッカーで、その最大の特徴は「設定は基本的に不要」というシンプルさにある。先ほどの「Peace」と同じ手順でApp Storeにアクセスしてアプリをインストールし、後はSafariの設定で「Crystal」を有効化するだけでいい。
設定が不要な一方で、広告ブロックを適用するサイトの報告フォームがアプリ内に用意されており、審査の後に「ブラックリスト」(ブロックリスト)を順次拡張していく方式のようだ。そのため、今後の改良でさらに使いやすくなる可能性を秘めている。
ただし、「Crystal」はインストール直後は広告ブロック機能が働かない。アプリを起動してしばらくするとネットワーク経由で「ブラックリスト」が自動更新されることでバージョンが上がり、ここで初めて広告ブロックが有効になる。もし現時点で広告ブロックがうまく働かないサイトがあったとしても、今後の更新で順次適用されていくことだろう。
Web行動履歴の追跡も除外、「1Blocker」
今回はこれとは別にもうひとつ「1Blocker」(無料、アプリ内課金)も紹介しておく。
|
|
|||
| 1Blocker - Block ads, tracking scripts, anything
|
|||
|---|---|---|---|
| 価格 | 無料(アプリ内課金) | 作者 | Salavat Khanov |
| バージョン | 1.0 | ファイル容量 | 4.8 MB |
| 対応デバイス | iPhone 5s以降、iPad mini 2以降、iPad Air以降、iPad Pro | 対応OS | iOS 9以降 |
「1Blocker」も基本的にはほかのふたつと同様だが、アプリそのものは無料であり、アプリ内課金で同時に利用できる機能(フィルタ)の数を増やせるという特徴がある。広告フィルタだけでなく、Webの行動履歴の追跡などの除外も可能なため、使い方次第では強力なツールになるだろう。
また、個々のルールのカスタマイズや拡張も可能なようなので、興味ある方はApp Storeにアクセスしてみてほしい。なお、コンテンツブロッカーは複数を同時に利用することが可能で、これによってブロック可能な機能を相互補完することもできる。
「コンテンツブロッカー」は、Webアクセスをスピーディにする
この「コンテンツブロッカー」の機能はiOS 9の世代のSafariで初めて導入されたもので、すでにOS X版Safariでは提供されている「Content Blocking Safari Extensions」を拡張したものだ。Content Blocking Safari Extensionsを利用して「コンテンツブロッカー」機能を提供するアプリは、Safariに適切なJSONファイルを渡しておくことで、SafariのWebコンテンツ表示に関する機能の一部を引き受けることができる。
JSONファイルは、「コンテンツAがWebページに記述されていた場合に、行動Bをとる」といった、「トリガー」(trigger)と「アクション」(action)を規定したもので、広告を含むコンテンツ表示ルール(フィルタ)の記述書となっている。基本的に、Webページを表示するたびに「Peace」などのアプリに処理を戻すわけではなく、Safariがコンテンツブロッカーの機能を備えるアプリ側から渡されたJSONファイルをバイトコードに変換して一括処理する形態となっている。そのため、どれだけ使いやすいフィルタを出力できるかがアプリごとの差別化ポイントとなる。
コンテンツブロッカーが提供する機能は多彩で、TechCrunchが「1Blocker」というアプリで紹介しているように、広告ブロックにとどまらず、ユーザー行動の追跡防止機能や各種コメントやウィジェットの無効化、アダルトサイト排除、ブロック対象のURLのカスタマイズなどが可能だ。
本来の目的としては「ユーザーが意図しない、あるいは望まないコンテンツの表示を無効化することでWebアクセスをスピーディにする」ことにあり、そのための手段としてContent Blocking Safari Extensionsの解放と、同機能を利用するアプリのApp Storeへの登録を可能にしたのだと考えられる。
これらコンテンツブロッカーを利用する最大のメリットは、モバイル端末でのコンテンツへのアクセスをスピーディにすることだ。前述のように、もともとOS X版Safariには導入されていた機能であり、その意味ではiOSにもようやく導入が進められた状態だ。
ただ、モバイルにはPCと違う事情が2点ほどある。ひとつは、もともと広告ブロック機能がない世界を前提にコンテンツ配信ビジネスが構築されていたこともあり、iOS 9の登場によりこれが崩れてしまうということ。
ふたつ目は、PCが屋内外でも比較的パフォーマンスの安定したネットワーク経由でインターネットに接続するのに対し、モバイル利用では電波状況が一定せず、データ容量制限があるネットワークや従量制ネットワークを主に利用するため、ユーザー体験が大きく異なる点が挙げられる。
コンテンツブロッカーを利用することで、Safariは広告などメインのコンテンツ以外をサーバへと読みにいかなくなるため、結果として表示速度が速くなり、さらに読み込むデータが減るため消費するデータ容量を削減できる。
なお、Appleの説明によれば、パフォーマンス上の問題からContent Blocking Safari Extensionsは“64bit限定”の機能となっている。そのため、iOS 9対応ながら32bitプロセッサしか搭載しないiPhone 4SやiPad 2など、旧世代のiOSデバイスでは利用できない。
コンテンツフィルタの有効範囲
もう1点、気になるのはコンテンツフィルタの有効範囲だ。例えば前述の「Peace」の例でいえば、ソーシャルウィジェットのブロック機能で「Twitter」や「Facebook」は除外できているものの、日本固有(というと語弊があるが……)のサービスである「Line」や「はてなブックマーク」はそのまま残っている。つまり、フィルタを最大限に有効化するには地域特性を考慮したカスタマイズが必要だ。
また、広告についても今回はうまく排除できているようだが、一般的な広告配信ネットワークを経由しないケースなど、URLによるフィルタリングが難しいケースも考えられる。例えば違法コンテンツを扱うサイトやアダルトサイトなど、広告の多くがフィルタを通り抜けて表示されてしまうことも十分考えられるだろう。さらに前述のように、現在App Storeで配信されているコンテンツブロッカーの多くが海外ベースのものであり、日本や米国外で運営されるサイトに対してどこまで有効かは難しいところだ。
対応すべきアクションを増やすとフィルタが肥大化し、結果としてWebアクセスを損ねるだけの結果にもなりかねず、悩ましい問題だ。このあたりは、今後日本向けのアプリも多数登場し、だんだん機能が洗練されてくるだろう。
「コンテンツブロッカー」は
Webの広告収益モデルを破壊するか?
話はiOS 9が初めて正式発表された今年6月の開発者会議「WWDC 2015」に戻るが、AppleがiOSに広告ブロック機能搭載を明らかにした後、これが理由で携帯コンテンツを介した広告収入モデルに悪影響が出るのではないかと懸念され始めた。もし、ユーザーが広告モデルのおかげで無料または安価にコンテンツを楽しめていたというのであれば、iOSの広告ブロック機能が原因でコンテンツ市場が衰退してしまうのでは……と懸念されるのもわかる話だ。
広告ブロック機能と付随して、iOS 9にはもうひとつ興味深い新機能がある。それが「Newsstand」改め「News」アプリだ。Apple謹製のこのアプリは、いわゆるコンテンツキュレーション型のサービスを提供するものであり、ユーザーの好みに応じてその日のヘッドラインから注目すべきニュースをピックアップして一覧表示する。ユーザーはすばやく好みのニュースを移動の合間などにチェックできるというわけだ。
だが、こうしたニュースコンテンツはWebや専用アプリ経由での配信も行なわれており、もしAppleがこれを乗っ取る形で「News」アプリを提供するのであれば、広告ブロック機能と合わせて「Appleは(広告ブロック機能で)コンテンツパートナーの収益機会を奪う一方で、自らが「News」という同等の機能を提供するアプリをリリースしている」という、ある意味で矛盾した行動に出ているという見解もある。
だが実際のところ、この懸念は“現時点では”杞憂に終わるのではないかというのが筆者の見解だ。ひとつは、冒頭でも説明したように、広告ブロック機能こと「コンテンツブロッカー」を導入するには若干の手間とハードルがあり、多くの一般ユーザーに周知されるには時間がかかるだろう。
一方で、すでに最新トレンドに敏感なユーザーはコンテンツブロッカーの導入に走っている。The Guardianなども紹介しているが、iOS 9公開から1日でApp Storeの「ユーティリティ」カテゴリでは「Peace」などのコンテンツブロッカーのアプリがダウンロードランキング上位に君臨している。
これは象徴的な出来事だが、一方でこの手のユーティリティがランキング上位に居続けるかは難しいところだ。しばらくは、本稿をはじめとするコンテンツブロッキング機能紹介の記事が出てくる中で、実際に「iOS 9で最初にすべきこと」としてコンテンツブロッカー導入を試すユーザーが出てくると思うが、トレンドとしてはそれほど長続きしないのではと筆者は考えている。
最初は、雨後の竹の子のように大量の“有料”版コンテンツブロッカーが登場してバブルのような状況を作り出すが、それほど時を置かずして、有名セキュリティスイートの一部といった形など人気アプリに話題が収束していくのだろうと予測する。
「Peace」が突然App Storeから消えた理由
こうした中、先ほども紹介したように一時人気アプリトップに君臨していた「Peace」が突然App Storeから取り下げられて話題となった。
公開36時間で有料アプリランキングトップに踊り出たことは作者のMarco Arment氏も「自身のキャリアでも特筆すべきこと」だと述べているが、「Peace」は無差別に広告そのものを除去すべく動作するため、「All or Nothing」の状態となり、これが及ぼす悪影響を憂慮したという。
Wiredによれば、同氏は独立系出版社の友人から同アプリが及ぼす影響について懸念を述べられたことがきっかけのようだ。ただし、出版社の収益に悪影響を及ぼさないようにフィルタを通過できる広告を選別するようになると、複雑な仕組みを導入せざるを得ず、Arment氏がシンプルなiOSアプリとして導入可能な機能には限界があるとしている。そこで、アプリの登録そのものを見直す決断となったようだ。
コンテンツブロッカーに関する、さまざまな議論
コンテンツブロッカーが及ぼす影響について、さまざまな見解がある。例えばMediaPostが紹介しているAdobeとPagefairが行った最新調査によれば、この種の広告ブロック機能により出版社は今年2015年だけで218億米ドルもの“損害”を受けていると報告している。
現在、多くのメディアの収益源は単純なディスプレイ広告やテキスト広告だけに依存しているわけではないが、一方でページビューやそれに依存した広告表示による収入比率が高いメディアやコンテンツもあり、その影響は一様ではない。
もし将来的に従来型の広告モデルに影響を及ぼすようなことが続くならば、今後は記事の体裁を採る記事広告や、あるいはネイティブ広告と呼ばれる、一見すると広告とはわかりにくい形での掲載など、広告手法にも変化が現れるかもしれない。
コンテンツブロッキング機能を提供するアプリが、その立場を利用して悪意ある行動を採る可能性も指摘されている。前述のように、現在コンテンツブロッキング機能を提供するアプリは有料またはアプリ内課金を通した収益モデルを採用しているが、それとは別に「広告フィルタを通過するための“ホワイトリスト”への登録権を有料で販売している」ケースがあると、BGRはフランスのBlogサイトであるInfo iGenを引用して紹介している。
前述の通り、仕組み上は広告ブロック機能は完璧ではない。一般には参照URLなどの情報を基にフィルタをかけて広告を非表示にしているだけで、フィルタにかからない広告はそのまま表示させてしまう。これを利用して、例えばフィルタを通過するための「ホワイトリスト」に特定の広告URLを登録し、その見返りに報酬を受け取るというパターンだ。
もっとも、これはこれで考えられるビジネスモデルではあるものの、よほどの寡占市場でもない限り、ユーザーの悪評につながる行動はマイナスにしかならず、結果としてアプリやサービスの寿命を縮めるだけにしかならない。その点での懸念は薄いだろう。
サイト解析やユーザーの消費行動分析への影響
むしろより注視されるのは、広告の表示そのものよりも、ユーザーの行動を把握するためのツールが無効化されてしまうことかもしれない。
Marketing Landが指摘しているが、Google Analyticsを含む複数の主要行動把握ツールを無効化してしまうiOS用コンテンツブロッカーがあり、これを利用してサイト解析やユーザーの消費行動分析を行なっていたマーケターやアナリストらが影響を受ける可能性が懸念されている。
PCに比べ、これまで比較的ユーザー行動解析のネットワークを広げやすかったモバイルプラットフォームにおいて、iOS 9へのコンテンツブロッカー導入を機にトレンドが大きく変化してしまうのは、未知の影響を与える可能性がある。直近では影響が少ないものの、今後の最大の懸念はこの点なのかもしれない。
Appleが「News」アプリをリリースする背景
iOSを含むコンテンツブロッカーの仕組みがモバイルプラットフォーム全体にどれくらい広がり、広告排除による損失が今後どれだけになるのかは、いまだ推測の域を出ない。
ただ、ニュース配信などを行なっているサイトでは、Webサイト経由でユーザーに直接届ける以外に、自ら閲覧用のアプリを提供したり、あるいはNewsstandなどの仕組みを介してサードパーティ用プラットフォームでの配信も行なって収益機会を増やす方向性を模索している。サブスクリプションを含むコンテンツの切り売りをするケースもみられ、収益構造は多様化しており、こうしたサービスでは必ずしも広告ブロック機能が即ビジネスを破壊するわけでもないようだ。
こうした配信先プラットフォームのひとつとして提供されているのがAppleの「News」アプリだ。Newsstandでは電子書籍スタイルでのコンテンツ提供がメインだったが、「News」アプリはWebサイトのフォーマットを若干改変したキュレーション型アプリの体裁を採っている。こちらのレビューにもあるように、現状の「News」アプリでは広告が基本的に排除されているため(ベータ版の状態だとみられる)、どのようにコンテンツ提供者が利益を得ているのか不明だ。あるいは、ベータ期間のみApple側が対価を支払っている可能性がある。
もともとAppleが「News」アプリをリリースした背景には、Facebookが6月にスタートした「Instant Articles」への対抗があるといわれている。著名ニュースサイトや新聞社など、コンテンツパートナーとの提携でニュース記事のヘッドラインをユーザーのタイムライン上に表示させる機能で、同社の収益源のひとつとして注目を集めているものだ。Facebookは最終的にはリアルタイムでのトレンド解析も交えて、FacebookをTwitter以上にリアルタイム性の高いニュース検索ツールとして活用してもらう手段としても考えているようだ(関連リンク)。
Instant Articlesでは、コンテンツパートナーの自社広告の場合は100%、Facebookの広告プラットフォームを利用した場合には売上の70%を配分としてもらう契約となる。ユーザーのFacebook内の巡回度合いやアクセス比率が高いことを利用したサービスであり、コンテンツパートナーが収益源のひとつとしてニュース記事を提供する理由もこの点にある。
Wall Street Journalによれば、AppleのNewsアプリも同様のモデルを採用するようだ。自身で広告を販売したのであれば100%、Appleが広告販売を担当した場合には7:3の分配比率となる。
現在、特定のメディアには特定のスポンサーがつく形態となっているが(例えばGQにはBurberryといった具合に、特定の広告スポンサーがついている)、これは今後広告販売形態の変化により違ってくるだろう。ただ、Apple自身はFacebookほどユーザーの取り込み度が高くなく、例えば2014年にFacebookが米国内のモバイルディスプレイ広告の37%を占めていたのに対し、Appleはわずか5%と低い。そのため、Appleは必ずしもコンテンツパートナーに対して強気の条件を提示できるわけではなく、むしろFacebookに対するカウンターとしてAppleの存在に期待を寄せる関係者もいるようだ。
その意味では、『Appleが自身の広告プラットフォームに誘導するために、広告ブロック機能を導入して「News」アプリへの誘導を図っている』という指摘が的を射ているとは限らない。
コンテンツ配信の手法は日々変化と進化を続けており、コンテンツ配信側は収益化の方法を常に模索している状態だ。広告ブロック機能の導入はきっかけのひとつに過ぎず、リスクを分散しつつ、収益構造を変化させていく過程の只中にあるのだろう。
現状では直接的な影響は軽微だが、数年後にはモバイル世界における広告やコンテンツ収益に関する構造も変化し、多様化してくると考える。
■関連サイト
■関連記事
- 新型iPhone&iOS 9、徹底特集!
- iPhone 6sと過去のiPhoneのスペックを詳細表で丸ごと比較!
- 薄く軽くなった「iPad mini 4」がすぐ買える A8+800万画素カメラを搭載
- iPhone 6s/iPhone 6s Plus発表、9月25日発売・12日予約受付
- アップル、タッチパッドリモコン採用の新「Apple TV」発表
- 12.9型「iPad Pro」発表!! 11月発売で32GB版799ドルから
- 25日午前8時、アップルストア表参道で「iPhone 6s」「iPhone 6s Plus」発売開始!!
- 恒例!! 「iPhone 6s Plus」ローズゴールドを痛化だ!
- 無料のiOS 9“広告ブロック”アプリ「Adblock Plus」が公開
- iOS 9のSafariで簡単にウェブページをPC表示に切り替えるテク
- iOS 9.2配信開始、iPhoneにSDカードから直接写真を読み込めるぞ
- 「Flashコンテンツ」「Flash広告」は完全に死ぬのか? 現状と今後
- アップル、iOS 9.2.1リリース。複数のバグを修正
- アップル、「iOS 9.2.1」アップデート iTunes利用して更新
- セブン‐イレブン、500円ボーナス付きの5000円iTunes Card