「ぐりとぐら」のカステラやタモリめしを再現!! 「クレイジーキッチン」潜入レポ
文●高城歩(@maccha_iri)
2014年06月18日 18時00分
ピンクのタピオカを作る様子。「一瞬口に入れるのをためらう色……
niconicoのユーザーたちは、時代の先を読む眼力に長けている。そんな彼らがアツい視線を注ぐジャンルのひとつに料理がある。キャラ弁やコミックに登場する料理を実際に調理してみるマンガ飯などの流行が記憶に新しいだろう。
そんな料理に対して「実験」というアプローチを試みるユーザーたちが一堂に会するイベントが「クレージーキッチン」だ。今回は6月14日に東京都大井町で開催したクレイジーキッチン4に潜入した。
人は舌だけで味を感じているのにあらず!?
香りで味が変わる不思議な体験
イベントの流れを順に追っていくことにする。まずは初参加者向けに、恒例の「オリジナルソーダ水」作りから始まった。簡単に言えば、香りや見た目でも味が変わってくるという実験になる。
用意されたのは17種類の香料、そして市販のソーダ水だ。おもむろに目の前にあったコーヒーとミルクの香料をソーダ水に溶かしてみたところ、ミルクコーヒーの香りが漂う不思議な炭酸水ができ上がった。飲んでみるとコーヒーの味が口の中に広がっていく。ほかの参加者が作ったソーダ水も味見させてもらったのだが、焼き芋の香りがするソーダ水からは、芋の風味がたしかに感じられるではないか。
「前回の実験で香りが味覚にも影響を及ぼすことが分かったんです」と主催の伊予柑さん。「予測できない色の料理は心理的負荷がかかります。料理における安心感や清潔感は、色と形が左右するんだということも理解できました」と補足すると、参加者から「本物の紅茶と、紅茶フレーバーのお湯を比べてみては?」と提案が上がった。そこでお湯に紅茶の香料と着色料を加えたものを用意して、最高級ダージリンと飲み比べることになった。
色のついたお湯のほうは、香りがあっても出がらしの紅茶のように感じる。一方、本物の紅茶は、飲んだ参加者たちが「やっぱり違う」と納得する風味だった。疑問に感じたことをすぐさま実験で試せるのも、当イベントの醍醐味といえるだろう。
電気で味覚をハックせよ!
次に電気味覚研究で知られる東京大学大学院の「あぱぱ」さん(中村裕美博士)が、アーク放電を利用した「エレクトリックピクルス」を披露。
さらに特製の導電素材に包まれたフォークを握り、チーズが舌に接触すると電気が流れて味が変わるというデモも見せてくれた。実際に体験すると、舌先にピリリとした刺激を感じるとともにアルミホイルを噛んだときのような味が広がる。そしてだんだんと濃くなっていくチーズの塩味から、人間の味覚は電気刺激の影響を受けるのだなと身をもって理解した。
このイベントは科学実験的な側面が強いかと思いきや、ここで「タモリめし」の著者である「オバ」さんが登壇して、「タモリカレー」や「生姜焼き」といったオーソドックスなメニューを手際よく調理し始めた。
オバさんは、あめ色玉ねぎペーストを手にしながら「タモリめしのポイントはいい意味で手を抜くこと。タモリさんは道具もテフロン加工のフライパンを使うなど、便利だと思ったものは進んで取り入れている」と解説。2時間煮込んだカレーを味見させてもらったが、1口目よりも10口目に「これはウマイ!」と唸る味わい深さだった。
誰でも幼少期に一度は絵本で読み、憧れる夢のメニュー「ぐりとぐらのカステラ」の再現にも挑戦した。
やはりクレイジーキッチンというべきか、登場したのはなんとダチョウの卵。重量は1338グラムで、持ってみるとずっしりとした重みを感じる。つるつるとした冷たい殻に覆われた卵はまるで頑丈な作り物のようで、こつこつと叩いたぐらいでは割れる気配が全くない。卵の底をタオルで固定し、周りをペンチで叩きながらヒビを入れて、わずかにできた隙間に指を差し込んで割ると、中からはジェルのような卵白とドロリとした黄身があらわれた。普通の鶏卵のおよそ20個分だという。
あとはパウンドケーキの要領で生地をつくり、バターをたっぷり塗ったフライパンで焼きあげていく。途中経過を確認すると、表面は焦げているが中まで火が通っていない。結局、絵本のような丸い形にはならなかったが、参加者はどこか懐かしい味のカステラをほおばりながら「ぐりとぐらはフライパンとたき火でカステラを完成させていたけれど、無理じゃないか。あれは本当にうまくできたんだろうか」と笑いあっていた。夢のレシピを現実に持ち込んだ際に起こる、ちょっとした齟齬もまた面白い。
ランダム食材から発想した自由すぎる創作料理
ここまではいわゆる実験パートであったが、クレイジーキッチン最大の魅力は、参加者それぞれが持ち寄った食材をランダムに配分し、2グループにわかれて料理する「調理」にある。
共通の食材は生きたままのロブスター。各々のキッチンブースには春巻の皮や野菜、バナナ、ヤシの実の砂糖漬け、タピオカなどが並んでいた。混沌とした食材を目の前に、メンバー全員で試行錯誤しながら少しずつ料理を完成させていく。作るべき料理の輪郭が見え始めた瞬間の打ち解けた雰囲気はなんともいえずいいものだ。
グループ内の会話も自然と弾む。今回がイベント初参加の「ハコ」さんは、「このイベントはニコニコ学会で知ったんです。有名なニコ生ユーザーがいるのでもっとハードルが高い企画だとばかり思っていたけど、参加してみるとそうでもなかったですね」と笑みをこぼしていた。
途中、昆虫食伝道師の「地球少年」さんが食用の虫を調理する場面では、部屋中にすえた臭いが充満するという珍騒動もあったが、無事に両グループともに料理が完成。
女性が多かったグループは、餃子の皮を用いたピザと、ゆでたロブスターの上にトマトとナスのソースを大胆にかけたもの。春巻の皮をハサミで器用に切ってつくったエビや蝶、文字の飾りが華やかで、「職人技だなぁ」と関心を集めていた。料理名は「『赤坂離宮』ですかね!」と笑顔で教えてくれた。
一方、男性のみのグループは鳥ハム、リンゴのワイン煮、バナナとココナッツの春巻を作ったようだ。まぁ、ここまでは普通なのだが、「……あとピンクのタピオカドリンク、中華風トマト煮込みの食用ゴキブリのせ、ロブスターのポタージュのミルワーム添えも作りました」とまさにクレイジーなメニューとなっていた。
焼いた虫をおそるおそる口に運ぶと、メザシの頭の部分のような苦みが口の中に広がる。イベントに参加しなければ一生食べなかったであろう料理との出会い──。百聞は一見に如かずとはこのことだろう。仲間とともに作り上げた料理が並ぶテーブルを囲んだ食事風景は、まるで家庭のような温かさに包まれていた。
ただ無秩序に料理して遊ぶだけでなく、もちろん後片付けも完璧だ。ニコニコ系のイベント全般に言えることだが、大人たちが全力で遊び騒ぐ趣向の裏にはこのような堅実さがある。水回りからコンロ周りまでくまなく磨き上げられたキッチンは、イベントの理念を表しているかのように思えた。
次回は今年10月に開催
イベント終了後、伊予柑さんに話を伺うと「4回目にしてかなりクレイジーな……、極北まで来てしまった感じがする。次は逆に普通のことをやってみたい!」と、ビジョンを語ってくれた。次回は今年10月に開催されるそうだ。
仲間と協力し合いながら「なにか」を作り上げる喜び、そして「ものづくり」の原点に触れることのできるクレイジーキッチン。イベント終了後、料理がもっと楽しく自由なものとなった気分を味わえた。ちなみに当イベントの様子はニコ生のタイムシフトで視聴できる。
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