東方&艦これ!ニコ動と同人界を騒がす二大タグに迫る

文●myrmecoleon

2013年08月15日 11時00分

筆者紹介:myrmecoleon

 明治大学米沢嘉博記念図書館スタッフでニコニコ学会β幹事。趣味で同人誌やニコニコ動画関連の研究をしてる人。記事に使ったデータ元の『ニコニコ統計データハンドブック2013』など同人誌をコミケで頒布。ブロマガでは連載記事の補足も。
Twitterアカウントは@myrmecoleon。関わった近著に『進化するアカデミア 「ユーザー参加型研究」が連れてくる未来』(イースト・プレス刊)。右の画像は筆者を擬人化?して描いてもらったキャラ「ありらいおん子」。男の娘。

■Amazon.co.jpで購入

若い男の子たちの多い「東方」タグ

 「東方」は「東方Project」に関連する動画のタグです。「東方Project」は同人サークル「上海アリス幻樂団」制作の弾幕STGのシリーズを中心とする作品の総称で、最新作「東方輝針城」が今回の夏コミで頒布されました。

 ゲームのプレイ動画だけでなく、音楽やキャラクターが人気で、アレンジした音楽や手描きイラストによる紙芝居風動画(「東方手書き劇場」タグ)などがよく投稿されています。初期は一般タグでしたが、ニコニコ動画(9)よりカテゴリタグとなり、動画は現在25万以上投稿されています。

 タグの特徴としては若い男性の投稿者が多い点が挙げられます。「歌ってみた」のように、ニコニコ動画では年齢の若いものほど女性が多い傾向がありますが、東方タグは平均年齢が約24歳と若い一方、女性が1割と例外的に少ないようです。東方タグの投稿者は高校生から大学生くらいの年代の男性が顕著に多く、この傾向はpixivなど他の東方コミュニティでも見られます。これまで約4万3000名のユーザーが東方タグの動画を投稿し、月に約500名が新たに加わっています。

「東方」タグの基本データ
合計 中央値 参考:全体の中央値
再生数 19億4494万9000 1027 526
コメント数 8364万8870 25 20
マイリスト登録数 3300万9000 8 3
コメント率 - 2.45% 3.54%
マイリスト率 - 0.92% 0.87%
「東方」タグの投稿者データ(公開ユーザーのみ)
プレミアム会員の比率 49.61%
女性の比率 11.22%
国外からの動画投稿者の比率 4.57%
平均年齢 23.9歳

※コメント率・マイリスト率はそれぞれコメント数・マイリスト登録数を再生数で割った値。拙著同人誌『ニコニコ動画統計データハンドブック2013』より抜粋。2012年12月上旬調査時点の値。


 動画の特徴としては再生数が1027と比較的高く、1万再生以上が12.6%、上位0.76%の投稿者の動画に全体の再生数の半数が集中しています。タグの動画投稿・新規投稿者は2008年から2009年に急激に増加、以降は月に4000前後の動画が投稿されています。

動画投稿数は左軸、新規投稿者数は右軸。投稿数は2009年の増加以降は四千前後を上下しているが、新規の投稿者は2010年の中頃から減少を続けている

ニコニコ動画急成長の陰に東方あり!?

 東方はニコニコ動画の代表的なジャンルの中でも、特に同人文化との関係の深いものです。東方Project自体が同人誌即売会で発表された同人ゲームであるほか、オンリー即売会(ある作品専門の同人誌即売会)の中では最大規模である「博霊神社例大祭」が毎年開催され、また地方でのオンリー即売会も活発です。

 下記のグラフに博霊神社例大祭およびコミックマーケットの参加サークル数と、ニコニコ動画の「東方」タグのユニーク投稿者数をプロットしてみました。ニコニコ動画が登場した時期はちょうど東方が同人界の中で盛り上がってきていた頃でした。

 その勢いの中で「魔理沙は大変なものを盗んでいきました」などの東方アレンジ曲などがニコ動を通して紹介、一方で同人誌即売会などを通して同人作家がニコニコ動画に関心を持ち、2008年から「東方手書き劇場」などの動画が投稿されるようになり、やがて例大祭・コミケともにサークル数の劇的な増加を見せていきます。

 このように、東方とニコニコ動画は相補的な関係で2008年から2010年にかけて規模を拡大していきました。現在例大祭では毎回約5000、コミケでは約2500のサークルが東方ジャンルで参加しています。

同人誌即売会「博霊神社例大祭」各回と2007年以降のコミックマーケットの東方関連サークル数、およびニコニコ動画「東方」タグの6ヶ月毎のユニーク投稿者数をグラフにしたもの。コミケのサークル数は2009年より会場の都合から頭打ちになっている

 現在では例大祭・コミケともサークル数の激増はおさまり、ニコニコ動画についても上記のとおり投稿者の増加は落ちついていますが、いまだ同人界を代表する巨大なジャンルです。

 最近は東方から他の作品(たとえば次ページで紹介する「艦隊これくしょん」であるとか)に浮気するサークルが目立つなんて声も聞かれますが、男性主体でひとつの作品についてここまで巨大で長続きした同人ジャンルも珍しく、おそらくはこれから何年も続いていくでしょう。

東方ニコ童祭はユーザー企画の動画投稿イベント。MMD杯などと同様のものですが、参加者がサークルカットを提出し「カタログ」を作成するなど、同人誌即売会を非常に意識した仕組みをしているのが特徴的です

今週のピックアップタグ:「艦隊これくしょん」

 「艦隊これくしょん」は、角川ゲームス開発、DMM.com配信のブラウザゲームです。通称「艦これ」。

 プレイヤーが「提督」となって、日本軍で実際に活躍した軍艦たちを萌え擬人化した「艦娘」(かんむす)たちを集めながら戦場を攻略していく、というもので、今年4月23日より開始、7月にユーザー10万人を突破、8月には30万人に到達した話題のゲームです。

今回はニコニコ動画のみならず、pixivやコミケでも人気急上昇の「艦隊これくしょん(艦これ)」をピックアップ(c)2013 DMM.com/KADOKAWA GAMES All Rights Reserved.

 pixivではこれまでに5000名近い作者による1万枚以上のイラストが投稿、今回のコミケでも200近くのサークルから同人誌等が頒布されたようです。ニコニコ動画でも5月頃から投稿が見え、ユーザー登録者が急増した6月中旬を境に投稿も急増、7月下旬に艦娘のMMDモデルの公開も相次ぎました。

 上がっている動画としては初期から公開されている島風モデルなどを使用したMikuMikuDance、実況プレイ動画やゆっくり実況プレイ、MADなどがあります。これまでに800以上の動画が投稿され、また現在投稿が急増しているところです。

対象は「艦隊これくしょん」と「艦これ」のいずれかのタグのある動画。特に7月に入ってからの増加が著しい

みきとPの「いーあるふぁんくらぶ」に合わせて艦娘たちが自己紹介するMAD。テンポよくキャラを一覧でき、興味のある人にはオススメ

この連載がちょっと読みやすくなる用語解説コーナー

■タグ ニコニコ動画で動画に視聴者が自由につけられる短いキーワード。ニコ動で動画を探すさいはこのタグで検索すると便利。
■カテゴリタグ  「ゲーム」「歌ってみた」「VOCALOID」など、タグの中で特別な30個のタグ。公式ランキングが存在するなどいくつかの機能がある。
■マイリスト  ニコニコ動画の一機能。好きな動画を自分のリストに登録できる。このマイリスト登録数は、動画の再生数やコメント数とともによく評価の対象とされる。
■プレミアム会員  ニコニコ動画の有料会員のこと。動画の視聴や投稿、ニコ生の配信等にさまざまな優遇がある。
■中央値  順番に並べてちょうど真ん中になる数値のこと。動画の再生数等は正規分布してないため、平均でなくこちらが実態をよく反映している。

※このほかにも、わかりづらい用語・言い回しがあれば、記事タイトル直下のツイートボタンから気軽にご一報ください!

イベント告知

10月6日(日)まで開催

 職場の米沢嘉博記念図書館では「小松左京『日本沈没』-未来へのヴィジョン-展」絶賛開催中。

 9月1日からは明治大学博物館にて「SFと未来像展」も開催します。お楽しみに。

■関連サイト

■関連記事