これで楽勝!? 3TB HDDをWindowsで使うツボを解説
文●外村克也(タトラエディット)
2012年09月11日 12時00分
前回は3TBのHDDについて、その速度や仕様を見てきた。今回は、実際に大容量のHDDをデータ保存用ドライブにしたり、Windowsの起動ドライブにするために知っておくべきポイントと具体的な手順を解説する。
2TB以上のHDDをWindowsで利用するのは、それ以下の容量の製品とは利用方法がまったく異なる。対応しないOSもあったりするので、自分のOSが対応しているのかをあらかじめチェックしておくことも必要だ。
加えて、3TBのHDDをデータ保存用ドライブとして利用するのと、OSをインストールし、ブートディスクとして利用するのとではPC環境による制約が異なってくる。
まずは、「3T HDD買ってきた! 今すぐ使いたい!!」という方のために、比較的簡単にデータドライブとして使う手順を理屈抜きで見ていこう。
Windows 7/Vistaなら特に問題なし
とりあえずデータ用HDDとして使う方法
2TB以上のHDDをPCに接続して使う際、「GPTディスク」(GUIDパーティションテーブルの略)に変換する必要がある。GPTディスクについての解説は後述するが、使用する場合にはOSがGPTディスクを扱えることが前提条件だ。
3TB HDDをデータドライブとして利用できる環境 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
OS | Windows 7 | Windows Vista | Windows XP | |||
バージョン | 64bit | 32bit | 64bit | 32bit | 64bit | 32bit |
可否 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × |
Windowsの場合はWindows Vista/7(32bit/64bit)またはWindows XP 64bit版ならGPTディスクが利用可能となる(以下は基本的にWindows 7での手順を解説する)。逆に上記のOSがない環境だと基本的に3TB HDDをフル活用できないので注意しよう(どうしてもなんとかしたい、という方は最後のページをご覧ください)。
対応OSで3TB HDDを利用するには、まずGPTディスクの変換を行なう。変換は、ディスクの管理画面から行なえるようになっている。
まずはWindowsがインストールされたPCに3TB HDDをつないで起動し、ディスクの管理を開く。そして、3TB HDDを右クリックして「GPTディスクに変換」を選択する。
次にパーティションをフォーマットする。GPTディスクに変換するとパーティションの前領域が「未割り当て」となるので、右クリックして「新しいシンプルボリューム」を選ぶ。
最初の手順で正しくGPTディスクに変換できていれば、シンプルボリュームサイズに約2.8TBの領域を割り当てられるようになっているはずだ。
3TB HDDにWindowsをインストールするには
64bit OS+UEFIが必要
次いで、3TB HDDをブートディスクとして利用する方法について解説する。ここからの作業は多少腰を落ち着けて挑んでいただきたいので、多少理屈も交えて解説する。
まず、3TB HDDをブートディスクとして扱うには64bit版のOSを利用する必要がある。
3TB HDDをブートドライブとして利用できる環境 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
OS | Windows 7 | Windows Vista | Windows XP | |||
バージョン | 64bit | 32bit | 64bit | 32bit | 64bit | 32bit |
可否 | ○ | × | ○ | × | × | × |
32bit版のOSでは、2TBまでの領域しか扱うことができない。また、Windows XPは64bit版であっても非対応となり、Windows VistaのSP1以前のブートCDもUEFI非対応である。その理由は、GPTディスクをブートディスクとして利用できないという仕様上の制限があるからだ。
このOSの制限に加えて、PCのマザーボードに関する制限もある。3TBのHDDはこれまで一般的だった「BIOS」を利用するマザーボードではほぼ起動できないのだ。その理由は、2.2TB以上のHDDを管理するために使うGPTを利用できないからだ。
ここでGPTとは何かに触れておこう。Windows 7/Vistaでは、大容量のHDDをフォーマットする際、MBRとGPTのどちらを使うかを選べるようになっている。
いずれもHDD内のパーティションを管理するためのもので、ブートディスクとして利用する場合に、どのパーティションから起動するのかといった情報が書かれている。
MBRとGPTの大きな違いは、扱える容量にある。MBRは最大で2.2TBまでのパーティションしか管理できない。3TBのHDDを利用する場合、残りの約800MBほどの領域はパーティションを作成することができず、無駄になってしまうのだ。
3TB HDDのすべての容量を扱うには、必然的にGPTを使用することになるわけだが、これを使うには、マザーボードが「UEFI」(ユニファイド・エクステンシブル・ファームウェア・インターフェース)に対応している必要があるのだ。
ちなみに、一度MBRディスクを作成してしまったあとでも、GPTディスクへ変換することが可能。しかし、一度すべてのパーティションを削除する必要があるため、保存されているデータはすべて消えてしまう。
このため、3TB HDD購入後はとりあえずGPTディスクを作成しておくことをお勧めする。もし、MBRディスクでパーティションを作成したら、中のデータをバックアップしてから作業しよう。
注意! インストールDVDはUEFIから起動する
UEFIを採用しているマザーボードの起動メニューは、これまでのBIOSに比べてとても高度な作りだ。マウスを使った操作が可能で、見た目もがらりと変わった。
また「EFI Shell」という、コマンドラインインターフェースを備えている。これはメモリーテストやリカバリーといったHDDに保存されたEFI用プログラムをOSの起動なしに実行するためのものだ。
UEFIはSandyBridge世代以降に対応する、比較的あたらしいマザーボードに搭載されているが、ここ2~3年前のBIOS搭載マザーボードでも、UEFI経由の起動に対応しているものがある。起動優先順位の設定項目に「UEFI」という項目があれば、GPTのHDDをブート可能だ。
3TB HDDへWindows 7をインストールするには、ちょっとしたコツが必要だ。いつもどおりにインストールDVDを起動すると、HDDをMBRで作成しようとしたり、GPT領域にWindowsのブートマネージャを書き込まなくなる。
これを回避してGPTディスクを正しく扱うために、インストールDVDをUEFI経由で起動させる。
もし、DVDをUEFI経由で起動できない場合、インストールUSBを使うことで対処できることがある。詳細は次ページにて解説する。
インストールDVDをUEFI経由で起動すると、GPTディスクを扱えるようになる。インストール途中のディスク選択画面でボリュームを新規作成すると、システムファイル用の追加パーティションとして、GPT管理領域が作成されるはずだ。
ボリュームの新規作成が終わると、3つのパーティションが自動作成される。1番上に表示されている「システム」パーティションには、UEFIのシステムが保存される。2番目の「MSR」パーティションは、Windowsの回復ツールといったプログラムが入る、Microsoft システム予約パーティションとなる。
環境によっては、インストール中の再起動時にWindows Boot Manager画面が表示されることがある。「System32」フォルダー内の「ntoskrnl.exe」が見つからずWindowsの起動に失敗したという旨のメッセージが書かれているが、実際にはHDD内に存在する。下記の通りに進めることで対処可能だ。
DVDをUEFI経由で起動できない場合の対処法
例えばUEFI対応のBIOSのマザーボードなどでは、UEFI経由でインストールDVDを起動できないという場合があり、その際は上のような画面が表示される。一応このままインストール処理には進めるのだが、実際にはブートマネージャがカーネルを呼び出せず、起動できなくなってしまう。
こうした状況を回避するには、インストールDVDの内容をUSBメモリーに入れて作業を行なう必要がある。USBメモリーをインストールメディアにして起動すると、自動的にUEFIが適用され、GPT管理領域を作成できるようになる。
現状、USBメモリーをインストールメディアにする方法はいくつかあるが、注意したいポイントがある。それは、Microsoft製の「Windows 7 USB/DVDダウンロードツール」を使ってインストールメディアを作成してはいけない、ということだ。
同ツールにはUEFIまわりのプログラムに不具合があるようで、UEFI対応マザーボードから起動できない場合がある。UEFI起動をするのなら無料ソフトの「WinToFlash」がお勧めだ。
WinToFlashを起動したら、Windows Setup Transfer Wizardをクリックして作業を進めていく。
起動用のUSBインストールメディアができたら、64bitのUEFI起動プログラムをUSBメモリーに書き込む。この作業を怠るとインストーラーが起動しないので、かならずやっておくこと。
以上の作業で完成したUSBメモリーを使って起動すると、UEFI経由でインストーラーが起動するはず。もし、それでもうまくいかない場合は、マザーボードがUEFIに対応していない可能性が高いので、メーカーサイトなどで仕様を確認してみよう。
このように2TB以下のHDDに比べてだいぶ手間のかかる作業となるが、今後はUEFIでのOS起動が基本となる。3TBのHDDを入手したら、ぜひとも挑戦してみてほしい。
使える環境がないのに3TB HDD買っちゃった!
そんな人に助け舟を……
さて、とりあえず3TB HDDを買ってしまったものの、利用できる環境が揃っておらず「どうしても32bit版のWindows XPといった非対応の環境で3TB HDDを利用したい!」というときはどうしたらいいのか。
実は機器メーカーが用意するユーティリティーソフトを使うという方法がある。ユーティリティーソフトには、ドライブメーカーが提供するものとマザーボードメーカーが提供するものの2種類があり、うまく適合する機器を使っていれば利用できるかもしれない。
2TBを超える領域をフォーマットできる
ドライブメーカーのユーティリティー
まずドライブメーカーが提供するユーティリティーは、本来使うことができない2TBを超える領域をフォーマットできるようになるというものだ。現在はSeagateから「DiscWizard」が、東芝(旧HGST)から「Hitachi GPT Disk Manager」が提供されている。
「DiscWizard」は、本来利用することができない2.2TBの外の領域に新しいパーティションを作ることができるようになる。2つの領域に分かれてしまうものの、本来は無駄になってしまう部分を有効利用できるという点ではありがたい。Seagate製のHDDでのみ使うことができる。
東芝は「Hitachi GPT Disk Manager」というツールを提供。HDD内部のセクター構造を加工して、XPなどの非対応OSでも無理やり3TBの全領域を認識させるものだ。
DiscWizardとは異なり、全領域を1パーティションのボリュームとして扱えるようになる。こちらは東芝を含むHGSTのOEM製品でのみ利用可能だ。「Hitachi GPT Disk Manager」はソフト開発元となるパラゴンソフトウェアのページから入手できる。
非UEFIマザーボードでGPTディスクを扱える
マザーボードが提供するユーティリティー
もうひとつはマザーボードメーカーが用意する“アンロッカー”というタイプのユーティリティーソフト。本来、UEFIには対応しないマザーボードでGPTディスクを扱えるようにするものだ。
大容量HDDが使えない32bitのWindows XPでは、このツールを使って2TB以外の領域を論理ドライブとしてマッピングすることで、データの書き込みができるようになる。ASUSから「Disk Unlocker」、GIGABYTEから「3TB+Unlock」という名前で提供されている。
次回はBDレコにつないで録画用HDDとして活用!
というわけで、今回はPCに組み込んで活用する方法を解説してきたが、大容量のHDDは外付けにして使ってもいい。そうすればPCだけでなく、薄型テレビやBlu-ray Discレコーダーとつないで録画用として使ったりもできる。
次回は3TBの容量を活用できる家電向けHDDケースや、複数のHDDを収納して超大容量HDDが実現できる外付けHDDケースなどについてレポートする。
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