そうだ! USB蚊取り器を作ればイイじゃん!

文●藤山 哲人

2011年07月27日 12時00分

前回は急遽企画を変更して、日本のナイトライフをリードするアース、キンチョー、フマキラーの「蚊取りグッズ」みつどもえ対決をお届けした。
しかし最終回は原点回帰して、虫退治をなんとかデジタルと融合させて有終の美を飾っていこうじゃないかっ!
そこで思いついたのが、電子蚊取り器を何とかしてUSBで駆動できないか? という安直な素晴らしいアイディアだ。早速、電子蚊取り器を分解して中の構造を調べてみよう!

ええっ!
リキッドタイプって100℃も過熱しないとダメなの?

さっそくリキッド式の電子蚊取り器を分解! と思いきや、各社特殊ネジを使っていていきなり出鼻をくじかれる。ただ蚊取り器を触ってみるとリキッドの芯を加熱して、殺虫成分を揮発させているようだ。そこで穴の隙間から、温度計を突っ込んでヒーター部分の温度を測ってみると……。

げげっ!150℃もあるっ!

いっぽうリキッドの芯の温度を測ってみるとちょうど100℃。市販されているUSBのコーヒーウォーマーでさえ60℃程度なのに、5V 500mAのUSB端子から電源を取って100℃以上の熱を作るのは無理だ。
とはいえパソコンには100℃近い熱源がある! そうCPUの廃熱だ。何とかCPUの熱をリキッドの芯に持ってこられないかと四苦八苦するも、肝心なことに気がついた!

 CPUが100℃になる状態ってCPUフルパワーじゃん!

これは蚊取り器を動かすと、美少女ゲームが動かないという致命的な欠陥だ。しかしWebを当たってみると、乾電池2本で動く電子蚊取り器なるものがあるらしい。それがアースの「電池でノーマット 90日用 蚊とりブタ」だ。

電池2本(3V)で動く電子蚊取り器を発見! コイツを改造しちゃる!

急いで近所のスーパーに買いに行ってみると、乾電池2本で動いてヒーターを使わずに済むらしい。どうやら空気を循環させるファンを回すだけで、薬分を染み込ませたフィルターから殺虫成分が揮発するようだ。
残る問題は電流だが、テスターで測ってみたところ9mA(電源投入時は15mA)と極わずか。これなら十分USBコネクターから電源が取れる!

これなら十分USBから電源を取れるぞ!

すなわちコレ、デジタルで虫退治である!

5Vを3Vにするイイ半導体が見あたらネェー!

USBの電圧は5V、電池で動く蚊取り器は3Vなので、電圧を下げてやらなきゃならないが、いまいちドンピシャな半導体がない。ポピュラーなのはLM317という電圧を変換する石だけど、マニュアル(データシート)によれば「入力電圧と出力電圧には最低3Vの差が必要」とある。ただ一度作って実験したことがあるが、5Vから3Vに電圧を落とすことも可能(動作保証はしないが)。かといってマニュアル通りに5Vを2Vまで下げて使うと、ほとんど電池の寿命の状態になってしまうのが辛い。
そこで半導体を色々と物色していたら、秋葉原の秋月電子でこんなものを見つけた。

低損失三端子レギュレーター[3.3V 500mA]TA48M033F。コンデンサーと半導体がセットになって1セット100円

USBの5Vから3.3V 500mAを取り出せる半導体だ。しかも入力と出力電圧の差は、わずか0.65VまででOKという。ただ問題は、出力電圧が新品の電池(1.6V(実は1.5V以上ある)×2本)より0.1V程度高くなってしまう点だ。同シリーズの3V出力タイプを入手できる場合は、そちらを使うことをお勧めするが、ここでは3.3Vタイプで無理やり動かしていこう。

作るヤツぁいないと思うが
一応作り方も載せておこう!

「僕の夏休みの工作はコレだ!」と思ったチビッ子や「USB接続の電子蚊取り器を作ってみたいぞ!」という奇特な読者に向けて、一応作り方も説明しておこう。
必要な部品は次の通りだ。

部品番号 部品名 個数 価格
1 三端子レギュレータ(出力3.3V、0.5A)(TA48M033F) 1個 80円
2 電解コンデンサー(10V以上、47μF) 1個 10円
3 コンデンサー(0.1μF) 1個 10円
4 ICクリップ 2個 140円
5 USBコネクター(オスAタイプ) 1個 200円
6 電線(模型用の細いもの) 1m程度 200円
7 名刺大のユニバーサル基板 1枚 140円
8 電池でノーマット 90日用 蚊とりブタ 1個 1500円

秋月電子では、部品番号1~3がセットになった「低損失三端子レギュレーター[3.3V 500mA]TA48M033F」として販売されている。キッチリ3Vで動かしたい場合は、東芝の三端子レギュレーター(3.3V、0.5A)(TA48M03F)を千石電商で入手するといいだろう。なお3のコンデンサーは、通常の丸く茶色いセラミックコンデンサーでもOK。

1)5V→3.3V変換回路を作る
名刺大の基板の上に、各パーツを差し込んで、次のように各パーツの足を半田付けしていく。

左側の電解コンデンサー(黒い円柱)には、マイナスの表示があるので注意すること

2)ICクリップの半田付け
ICクリップは、電子蚊取り器の電池の端子へつなぐために使う。写真のように半田付けして、キャップをかぶせると完成。

ICクリップに電線を半田付け

キャップをかぶせてできあがり

キャップを押し込むと先端からJ字の引っ掛けが出てくるので、これを電池ボックスの端子に引っ掛ける

3)ICクリップと回路の半田付け
写真のように部品を配置すると、ちょうど単3電池ほどの大きさになるので、電池ボックスに埋め込める。

パーツのレイアウトはこんな感じ

4)USBコネクターの組み立て
USBコネクターは、メス(PC側のコネクター)の左側が+5V、右側がマイナスとなっているので、写真のように電線を半田付けする。赤い電線が+5Vで黒い線がマイナスになっている。

プラスとマイナスを間違えないように半田付けすること

次に半田部分をプラスチックでカバーする。

はまる方向があるので注意

できあがったものを、金属のハウジングに入れる。

これも必ずこの向きで入れること

さらに小さいハウジングカバーをつける。

カチっ! と音がしてしっかり閉まるはず

ハウジングについている電線押さえをペンチでかしめる。

ペンチでかしめて、電線をしっかり固定。三角のツメ状になっているので、電線に傷をつけないように注意しよう

最後にコネクターカバーをして完成。

コネクターカバーをすればUSBコネクターの完成だ

あとは、電子蚊取り器の後ろ側にキリなどで穴を開け電線を通し、プラスとマイナスの電線を1)の図のように回路に半田付けするだけだ。

ブタのシッポの部分に穴を開けて電線を通してみた

4)基板をニッパなどで切断して電池ボックスに収まる大きさにする
基板を割ってしまわないように、ニッパなどを使って単3の電池ボックスに入る大きさに切断。また半田面はビニールテープやホットボンドなどで絶縁しておこう。

回路はさほど発熱しないので、ビニールテープでグルグル巻きにしてもいいみたいだ

5)プラスとマイナスのICピンを電池ボックスの端子に引っ掛ける
電子蚊取り器の向きに注意すること。手前側の電池端子に接続すると、ショートして半導体が壊れてしまう。

基板から出ているICピンと蚊取り器の電池端子に引っ掛ける

基板はICピンの下に滑り込ませる

6)薬分の含まれたフィルターを取り付ける
フィルターを取り付け、電線類が邪魔にならないように配置を整えて、裏ブタを閉めて完成だ。

裏ブタがきちんと閉まるように電線の取り回しを整える

USB電子蚊取り器のできあがり!

電圧は3.3Vと高めだけど、一晩動かしてみてもまったく発熱することもないので、たぶん(笑)安全だ。

暑苦しい夜、快適に美少女ゲームをプレイする極意!

これまで3回に渡って「暑苦しい夜、快適に美少女ゲームをプレイできる環境を構築するか?」というテーマでお届けしてしてきたが、最終回のここで総括しておこう。

掟之壱――「部屋の電気はすべてLED電球化すべし!」
LED電球化することで、網戸に集まる虫を激減できる効果がある。

掟之弐――「バックライトは暗くすべし!」
FLサイドライトでもLED式でも液晶ディスプレーには虫が集まりやすいので、部屋を暗くしてプレイする場合はディスプレーの輝度も絞る。

掟之参――「軒先にはアースかキンチョーの虫除けを吊るすべし!」
これらの虫除けは、驚くほど虫を寄せ付けないことが判明した。部屋の電気のLED化とあわせれば、網戸なしでも虫が寄ってこなくなるぐらいの効果が期待できる!

掟之四――「撃退にはフマキラーのベープリキッドを使うべし!」
もし部屋に虫が侵略してきた場合、攻撃力の高いフマキラーのベープリキッドを使うといい。

掟之五――「USB蚊取り器を作りディスプレーに近づく虫を撃退すべし!」
ペープリキッドだけでもいいのだが、せっかく作ったので……。

これら5つの掟を守る以外にも、蚊や虫が嫌う超音波を発生するソフトを併用するのもいいだろう。PC用だけでなく各種スマートフォン用のアプリもあるので、携帯することも可能だ。

蚊取り線香を使わないことでPCのHDDにも安全だ

このように何重ものトラップを仕掛けておけば、キミの血を狙う虫が一個師団で進軍してこようと、ほぼ制圧できるだろう。唯一、駆除できない虫は、

 美少女ゲームの初期ロットのバグだけだ!

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