見た!撮った!これが「夜戦」だ!! 照明弾煌めく総火演・夜間演習徹底レポート

文●片田 本朔 / 写真と解説● 藤吉 隆雄・吉田/Webアキバ編集部

2008年09月11日 20時00分

いよいよ今回の総火演特集レポートも本編で最後となった。今回、ASCII.jpでは初の夜間演習取材と言うことで、取材班のテンションは高まるばかり。しかし、強まる雨に下がる気温と、取材には不利な状況が強まりつつあった!!
ということで、前編「雨の御殿場に鋼鉄の虎を見た! 」中編「後段演習開始!全兵科協同の技を見よ!! 」に引き続きいよいよ火力演習レポート最終となる本編をお送りする!

照明弾のもと、幻想的に照らし出される雨の演習場

インターミッション

1345 東富士演習場・報道向け駐車場 天候:雨
日中の取材は終了ということで、ひとまず会場から撤収することとなった。

午後2時、車両展示終了間際の会場。さすがに観覧する人も減っている

会場周辺の山。結局富士山は一度も姿を現さなかった(撮影・編集部)

雨に煙る観覧席とバス乗り場を結ぶ連絡橋。施設科が設置した自慢の仮設橋だ

バス待ち行列。これだけの大イベントだと帰宅するのも一苦労だ(撮影・編集部)

機材を担いで駐車場に戻る途中、Y戦車部長が何かを撮影し始めた。

「おお、塗装違いの軽装甲機動車が3台並んどる。撮ってくれと言わんばかりだ」

たしかに関係車両の駐車場に並んでいる。

会場左手に目を向けると多くの車両が駐車している。実際に演習に登場した車両はこの時間帯には整備に回されていることが多いので、これは人員輸送の支援車両が中心

「プラモデル的に云うと一番左が、エアブラシを使って高級感を出しているネ」
眼の付け所が違う、というか何かが大きく違うY戦車部長だった。

雨に打たれたせいか取材陣のテンションもやや下がり気味だ。筆者に至ってはまっすぐ歩いているかも怪しい。車に戻ると、疲労と睡魔が一気に襲ってきた。
車を止めるたびにハイテンションで「どっかーん」と叫んでいた藤吉カメラマンもやや小声になり、120㎜滑空砲から81mm迫撃砲ぐらいにトーンダウンしている。Y戦車部長も顔は疲れているが

「いや、軍装の令嬢いたよね」

やはり眼の付け所が違う話をしている。
窓の外には雨と霧の水田が広がっており、たまに濃緑色に塗装された自衛隊車両がすれ違う。

「ここはまるでプノンペン郊外の田園ですね」

筆者もかつて見た光景がフラッシュバックし、現実を無視した妄言をまき散らした。

雨脚は激しくなるばかり。昼食を取ってそのまま演習場に戻る案が出ていたが、筆者の体調が怪しい状態。カメラのバッテリー充電のこともあり、宿に一旦戻ってもらうことになった。

雨の進軍 泥沼踏んで ライター倒れる捨てては置けぬ

取材班は天候回復を祈念しながら、そのまま仮眠を取ることとなった。

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再び現場に

東富士演習場。霧の向こうで輝く照明弾

1600 御殿場市内某民宿 状況:雨
眼が覚めたところで、雨は止まなかった。
まさか中止ということも。Y戦車部長は自衛隊広報に確認の電話をした。

「中止は無いって」

うれしくもあり、悲しくもあり。まあ、ロッカーだって豪雨の野外ライブを決行するのだから、自衛隊ならこの程度の雨で中止はないか。
さあ、出発だ。

1700 東富士演習場・夜間演習取材エリア 状況:雨
会場に戻り、取材エリアに入る。今度は一番乗りだ。
三脚を並べていると点検射撃が開始された。車両は夜間演習本番の射撃位置に配置されている。本番では暗視装置を使うため、当然ながら場内の照明は落とされる。フラッシュ撮影も禁止だ。明るいうちに演習場内の配置を目視確認できたのは幸いといえる。

点検射撃
また、朝と同様の静かな時間が戻った。聞こえるのは砲声と雨音だけ。
時折り打ち上げられる照明弾は真昼の月のようだった。

霧雨に煙る東富士演習場

雨を避けるため一旦車に戻り、本番まで待機となった。

オーロラビジョンに夜目も鮮やかに表示される「平成20年度 富士総合火力演習」の文字。もちろん演習が始まる前に消灯される

観客席を照らす投光器。昼は一般客でいっぱいだった観覧席も、今は自衛隊関係者や自衛隊各種学校の生徒などが陣取っている

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74式戦車の白色光サーチライトで標的を照らす。これは観客に見せるためなので、実際に射撃するときは真っ暗だ

1930 東富士演習場(夜間演習) 状況:雨

ついに夜間演習開始時刻が目前に迫ったが、雨は相変わらず強い。気温も下がり吐く息が白い。夜間に雨という最悪のシチュエーションだが、いかにも「自衛隊の現場」という緊張感が漂いはじめる。
ここで筆者のムービーカメラが結露で動作不能となった。執筆のための記録なのでテレコとデジカメのムービー程度で対応できるが、他の機材は大丈夫だろうか。読者の皆様のためにも何とか最後まで持ってほしい。藤吉カメラマンは大事な商売道具を、カメラ本体の防滴構造を信用しカメラ用レインコートやコンビニ袋だけ防水している。Y戦車部長は借用機材のExilimにだけ防滴ビニールカバーをかぶせ、私物のEOS Kiss Degital Nはタオルで拭くのみの雨ざらし。

そして場内の照明が消えた。

雨のカーテンの向こうに車両の緑のライトがぼんやりと見える。このライトが緑から赤に変われば射撃する準備が整った、ということだ。
アナウンスが入り、各車両の名前が読み上げられた。

「90式戦車です」

ランプが赤に変わった。「ああ、そこにいるのか」などと呟くも、姿は見えない。明るい内に見た光景を思い出しながら、場所を確認した。
続いて各種装置の紹介が行なわれ、ついに射撃が開始された。

はじめは小銃、機銃の掃射。昼間と同じはずなのだが、曳光弾の軌跡が眼に焼きつくほど鮮やかだ。雨のおかげで地面に出来た水たまりにも反射し、美しい効果を見せている。
さらに迫力が増したのが戦車砲だ。発射炎が強烈なオレンジの光を発し、闇を切り裂いて弾が飛ぶ。

90式戦車の夜間射撃(動画よりキャプチャー)

夜間演習90式戦車の射撃(音が出ます)

打ち上げられた照明弾。しきりにY戦車部長がPS用傑作某戦車ゲームの名前を口にしているが、どうやら夜戦で戦うシナリオがあって照明弾が出てくるらしい

照明弾に照らし出された待機中の74式戦車。射撃ランプが「準備中」を意味する緑色になっている

射撃ランプが赤色の「発射」に変わったところ

照明弾射撃

照明弾が撃ちあげられると車両のシルエットが浮かび上がった。白昼の照明弾が月なら、夜ではまさに太陽である。しかし、ここでも悪天候の影響が出た。高々度に打ち上げられた照明弾ほど雲の中に隠れてしまい効果は得られなかったのである。今回、一番鮮やかに見えた81㎜迫撃砲が撃ちあげる照明弾は250mの高さで100万カンデラで照らす。1カンデラが100ワットの蛍光灯と考えれば、その威力が分かる。

81mm迫撃砲の照明弾発射シーン(動画キャプチャー)

81mm迫撃砲の照明弾発射シーン(音が出ます)。 丘陵地帯に布陣した我が陣地から照明弾発射後、雲の中から煌めく照明弾がゆっくりと降りてくるあたりが、気分はルンガ沖夜戦てな感じで雰囲気たっぷりだ。

曇り空に反射して例年の夜間演習より戦闘照明が明るく感じられる。 照明弾下の射撃に続いて、暗視装置使用下での一斉射撃

照明弾下での74式、90式戦車の射撃(動画キャプチャー)

この照明弾使用下での74式戦車、90式戦車の射撃(音が出ます)では、まず照明弾の発射と、その後3の台に向けての74式戦車の射撃、その後引き続いて4の台への90式戦車の射撃と続く。

暗視装置下での74式、90式戦車の射撃(動画キャプチャー)

 暗視装置下での74式、90式戦車の射撃(音が出ます)。戦車のエンジンのアイドリング音が轟く中、演習場奥の丘陵地帯に特科部隊が行なう射撃の着弾が続く。特科部隊の射撃が終わった直後、手前に布陣する戦車部隊が射撃を行なう。昼間の戦車砲の射撃は見慣れていた我々取材班ですら改めて感激した、激烈な閃光と轟音、そして衝撃波という三位一体の戦車砲射撃をぜひ味わって欲しい

最後は突撃破砕射撃。ターゲット周辺では曳光弾と跳弾の軌跡が飛び交い、幻想的ともいえる。まさに光のページェントだった

目標に集中する機関銃の曳光弾が美しい(動画キャプチャー)

 機関銃射撃(音が出ます)。暗闇の中、戦車のアイドリング音だけが聞こえ、そして命令一下、目標に向けて機関銃による激しい射撃が加えられる。

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「状況終わり!」
夜間演習の終了を知らせるアナウンスが場内に鳴り響いた。

悪条件下で演習を見守る隊員(Y戦車部長撮影)

照明機の光に浮かび上がったシルエットは幻想的にも見えた。当然のことだが出動する現場が常に晴れとは限らない、雨だろうと雪だろうと任務を遂行するプロフェッショナルなのだ。

隊員「まだまだ。こんなもの大したことないですよ」

土砂降りの中で毅然として立つ隊員たちが頼もしく思えた。

長かった一日の終焉

我々取材班は機材を担いで、体温低下と疲労でやや重い足取りのもと、駐車場まで撤収した。
Y戦車部長「とりあえず画像ソースが揃ったので、もう大丈夫」
もうネタもないし、終わりかな。

そうでもなかった。

取材班の乗るH15年式FITが駐車場でスタックしたのである。他社はメガクルーザーなど4駆だったので軽々脱出したが、FF車の我々だけが取り残されてしまった。

筆者「降りましょう」
Y車長「車体を軽くしよう」

Y車長と筆者が表に出て、押すことになった。

筆者「アフリカの記念に一枚!」

疲労やらなんやらで過去の冒険記憶が蘇ったのか、わけのわからないことを口走りながらシャッターを切った。

写真を撮っている場合ではないが、大慌てで撮った一枚

それどころではない車を押さなければ。
二人がかりで押して何とか轍を突破、あとは隊員の誘導と藤吉カメラマンのハンドル捌きのおかげで無事に駐車場を脱出した。

素材は揃ったことと、風邪をひいたことを理由にY戦車部長と筆者は翌日帰投を決定 藤吉カメラマンは雨の中、一人一般公開日の撮影に向かった。

戦い済んで日が暮れて…… 

後日になって、取材陣全員が体調を崩していたことが判明した。

・人的損害
Y戦車部長:最終日から極度の疲労と発熱に襲われた。
藤吉カメラマン:取材後に筆者宅に荷物を届けるため、濡れた体のまま車を走らせた。その優しさが仇となり全治一週間の体調不良。
筆者:取材前日の不調がそのまま悪化。執筆している現在も微熱に悩まされる。

・物的損害
Y戦車部長:防水防滴機能を持たないEOS Kiss Degital Nが数日間合焦せず不調
藤吉カメラマン:防水性能の完全ではなかったレインフードを廃棄処分
筆者:冠水したビデオカメラはY戦車部長提供の簡易ドライボックス(ビニール袋にシリカゲルを入れたもの)で何とか再生機能のみ復活した。

総合火力演習・東富士演習場のレポート「状況・終わり」

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おまけ……その3 EX-F1のハイスピード動画で見る火力演習

文責・編集部

今回、EX-F1で様々な映像を撮影することができた。都合で本編に掲載しなかったもののうち一部をここで紹介したいと思う。

74式戦車の射撃(動画キャプチャー)

 ハイスピード動画で撮影した74式戦車の射撃シーン(無音)だ。なお、本動画は私がEX-F1の操作に習熟していなかったため、冒頭が欠けてしまったが、迫力があるので掲載した。

89式装甲戦闘車の79式対舟艇対戦車誘導弾発射シーン(動画キャプチャー)

 ハイスピード動画で撮影した89式装甲戦闘車の79式対舟艇対戦車誘導弾発射シーン(無音)。誘導弾が発射されるとまず二段構えで噴射が行なわれていることがわかる。

FH-70の射撃シーン(動画キャプチャー)

 これもハイスピード動画で撮影したFH-70の射撃シーン(無音)。発射後、砲口から煙が盛大に吹き出し、その後砲弾が飛び出していく様がありありとわかる。

指向性散弾の炸裂(動画キャプチャー)

 ハイスピード動画で撮影した指向性散弾の炸裂(無音)。敵兵に見立てた風船が一気に破裂している。これが実戦で使われるような状況にならないことを祈るばかりである。

走行間射撃を行う90式戦車(動画キャプチャー)

ハイスピード動画で撮影した走行間射撃を行う90式戦車(無音)。停止後、各車がそれぞれ発砲する。後半には目標への命中の閃光も捉えられている。


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