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「PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~」制作秘話を聞いた

広井王子さんインタビュー、eスポーツ青春映画の制作は広井さんにとっても青春だった

2024年03月08日 15時00分更新

文● 八尋 編集●ASCII

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第1回全国高校eスポーツ選手権の裏話が、心に響いた

──なるほど、実際にお会いになられてから取材されたわけですね。

広井さん:プロットをまとめるために、関係者に話を聞きに行くところからスタートしました。第1回目を開催するにあたって参加校を募るわけだけど、学校側は嫌がるわけじゃない。eスポーツという言葉もあるにはあったけど、「なんでうちの学校が? 生徒にゲームをやらせないといけないの?」ってところが多かったみたいなんですよね。それでも運営の方々は丹念に回って行って、説得してようやく第1回大会に繋がったという話を聞いて、とても心に響いたんです。

──たしかに第1回の頃は、今よりeスポーツという言葉が世間に広まってなかったですからね。

広井さん:でも、今は何回も開催されていているわけじゃないですか。学校には色々なルールがあると思うけど、それがなんでダメなのかという説明は放棄している。そういった大人の常識を打ち破っていく革命が、eスポーツだと思えたんです。同時に、厳しい状況でもeスポーツ大会を開催するために立ち上がった人たちにも、感銘を受けました。

──確かに、1回目の開催の際のお話は私も聞いているので、大変だったろうなと感じます。

広井さん:役所に話をつけにいったり、インフラが整っていないところは整えたり、eスポーツのクラブ活動設立を目的にパソコンも無料で貸し出しして。そうやって最初は学校側も半信半疑だったところから、本気なんだと風向きが変わり始めて、第1回の開催が実現するわけです。関わった大人たちも変化していって、もちろん高校生たちもeスポーツの大会に初めて出ることで、色々と学んでいくわけじゃないですか。その場(全国高校eスポーツ選手権)を作ったというのは、ものすごく大変なことだと思うし、よくやり切ったと思いますよ。そこら辺がすごく面白くて。最初の台本ではサードウェーブの女性社員が、会社から「高校生のeスポーツ大会をやれ」と言われて、最初は嫌々始めるんですけど、eスポーツ好きの男の子たちと出会っていくうちに、彼女自身も本気になるみたいな話を考えていたんです。

本作には選手権に出場する3人を追いかける女性社員も登場する

──え、そうだったんですか? そこから、どう青春映画になっていくんですか?

広井さん:プロットが出来上がりそうな時期に、コロナ渦になったんですね。加えて、この頃から脚本家の櫻井さん(櫻井剛さん)にも相談して、ロケのスケジュールも大変だからちょっと難しいんじゃないかってことになって、徳島県の阿南工業高等専門学校のお話にスポットを当てようとなったんです。

徳島県の阿南工業高等専門学校にスポットが当たった

本作では仲間を募集するポスターを、達郎が貼るところから物語が動き出す

──映画のモデルになった高校ですね。

広井さん:徳島の高校生があるとき、全国高校eスポーツ選手権を知って、その子はあまり学校に行っていなかったんですけど、仲間を募集するためのポスターを貼るために学校に行かざるを得ないみたいな話から、ほかにも学校は同じだけどオフライン大会に出場するまでネットでしか会ったことなかったというような話が出てきて…。昔ならこんな話ありえないですよね。

チームリーダーとして活躍する達郎。チームではエースとして活躍する一方、初心者の翔太と亘にどう上手くなってもらうかということで、頭を悩ませることになる

本作では、達郎が同じクラスだけどあまり話したことのない亘を誘うシーンがある

達郎はポスターを見て、選手権に出場することを決める

まったく友達でもなかった3人がチームを組み、選手権に挑む

──確かに(笑)。

広井さん:先生にもお話を伺ったら、野球部の顧問の先生で、練習の合間に生徒たちがスマホを熱心に見てる。そんなに学生が集中するのならと気になって調べだしたら、eスポーツがあったと。そこから理解するようになったって話も伺い、その発想もすごいなと感じました。

──そこから、現在のストーリーになっていったわけですね。

広井さん:このお話を聞いて、脚本家の櫻井さんと男の子3人の青春映画いいよねという話になって、そこから櫻井さんと相談しながら、アレンジを施していきました。

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