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中国ロックダウンやウクライナ情勢が製造業の調達網にどう影響したのか

 製造業の受発注プラットフォーム「CADDi」などを提供するキャディ株式会社は2022年9月5日、ウクライナ情勢や中国のロックダウンなど地政学リスク、社会情勢の変化が製造業(機械、電機など)のサプライチェーンに与えた影響を独自調査した結果を発表した。同社代表取締役の加藤勇志郎氏は「従来、日本企業では調達を重視する経営者が少なかった。それが昨今の情勢で、調達戦略の重要性が再認識されている」とし、調査結果も踏まえ、調達戦略の見直しの必要性を語った。

キャディ株式会社 代表取締役 加藤勇志郎氏

 調査の名称は「地政学リスクによる製造業(食品、繊維、化学は除く)サプライチェーン・調達への影響調査」。2022年8月19日から23日の期間に、インターネットで実施。製造業(食品、繊維、化学は除く)に従事する3727人から回答を得た。主な内容は以下。

「2022年の地政学リスク・社会情勢の変化により自社のサプライチェーンが直接的・間接的な影響を受けたか」との問いに、部長・工場長クラス以上では77.5%が「影響を受けた」と回答。影響を受けた具体的な事象として、「中国のロックダウン・操業停止」が73.9%で最多。次いで「ロシア・ウクライナ問題」が66.4%、「世界的なコロナウイルス感染症の拡大」が57.2%と続いた。全体では21.4%と低めの「台中関係」は、半導体製造装置業界だと39.3%と高くなった。

「影響を受けた具体的な調達品目」では「電気部品」が65.0%と最多で、「材料」が61.3%、「メカ部品」が41.9%と続く。具体的にどのような影響を受けたかについては、「材料」の「価格高騰」との回答が8割を超えた(81.1%)。「納期遅延」との回答も多く、「電気部品」で77.9%、「メカ部品」で72.3%となった。

 こうした調達の課題に対し、何らかの対応を「行った」との回答は全体の57.2%。対策として具体的に検討、実行、完了した施策については(複数回答可)、「代替部品への切り替え・仕様変更」が最多で50.2%、「調達価格の値上げに応じる」が47.9%となった。「仕入れ・加工依頼先(サプライヤー)の新規開拓」については43.1%が検討するも、完了したのは19.2%にとどまり、ほかの施策より低い結果となった。

「自社の調達・購買の方針や戦略を中長期的に見直す必要性を感じるか」との問いには、部長、工場長クラス以上で「強く感じる」と「感じる」回答した人をあわせると91.7%にのぼった。

調達戦略を見直し、調達の柔軟性を高めることが必要

 加藤氏は調査結果を総括して、「以前に増して2022年は外部環境の変化によるサプライチェーンへの影響がみられ、価格高騰、供給制約、納期遅延が起きている。海外調達を中心に影響が広がっているが、企業の対応は進んでいない」とし、「調査結果にもあるように、経営層も調達戦略や調達網を見直す必要があると感じてはいるものの、実践できているところは少ないようだ」と語った。

 今後、企業が打つべき「必要な打ち手」として、加藤氏は「新しい調達先を開拓して調達の『アジリティ――柔軟性・俊敏性』を高め、キャパシティを広げることが必要。それを実践するためにも、社内の調達組織そのものを強化することが重要」と指摘した。

 キャディは2017年に創業。モノをつくるときの供給の流れであるSCM(サプライチェーンマネジメント)とECM(エンジニアリングチェーンマネジメント)をデジタル化することで、製造業の業務効率化やQCD(Quality品質、Costコスト、Delivery納期)の最適化・安定化を図る事業を展開。受発注プラットフォーム「CADDi」の提供を通じて製造業におけるサプライチェーンの再構築を図るとともに、国内外の工場と連携したネットワークを生かして加工部品の製造、調達を行なう。

 2022年6月には、図面データを活用して調達原価削減、図面検索工数削減を図るシステム「CADDi DRAWER」をリリース。製造業における最重要データである図面を「資産」としてデジタルデータで保存・管理し、蓄積したデータを業務効率化と生産性向上に生かす。

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