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「たてもの」と「まち」のイノベーション第7回

東大生が考える「もしも東京で大災害が起きたら」

文●ASCII

提供: 清水建設株式会社

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研究に基づいて計画を立てることが大事

── 研究者として今回の取り組みはどうでしたか。

萩原 研究室で研究をしっかりやった上で、清水建設さんと一緒に地域に入っていけたことが重要でした。これまではそこがうまく連携できていなかったので、一緒にできることになったのは非常に良い機会だったと思います。

── いままでは研究室のテーブルの上だけだったが、実際に実験もできて社会実装もできそうになっていると。

萩原 理論的なところでは研究者が調査実験をして積み上げてきたところがありますが、研究者はフィールドを作っていくことが得意ではないので、そこができてきているのはいい傾向だと思います。以前、愛媛でも同じように、避難モデルを組み合わせながら住人の方にインタビューを繰り返し、最適な避難行動はどんなものかというワークショップをやったこともありました。

── それは愛媛の自治体とやったんですか?

萩原 そうです。理論も現場も大事で、どちらか一方だけではダメなんですよね。それを研究者も理解して、企業の方、地域の方と一緒にやっていくのが大事だと。

── とはいえ生身の人間が関わるテーマですから難しいですよね。答えが出たからといってそのとおり実装できるかというと難しかったりして。

溝口 羽藤先生を中心に、「道路空間の再配分」の実証が松山の花園町通りで行なわれたことがありました。片側2車線の1車線を歩行空間としてにぎわいを創出し、ウォーカブルな街のシンボルロードとして再生するという実証です。

松山市公表の資料より

── おお〜。実際にやったことがあったと。歩道に公園を作るのは世界的にブームになっていますよね。

溝口 そうですね。週末にマルシェをやったりして、沿道に産官学の連携施設「UDCM」を配置するなど、街ににぎわいが生まれました。

※UDCM(Urban Design Center Matsuyama)アーバンデザインセンター松山の略称。柏や大宮など全国23ヵ所に展開する公・民・学連携拠点の1つ(うち2拠点は活動終了)

── その計画の裏側には研究室によるシミュレーションがあったわけですか。

溝口 羽藤先生の研究室では人口が減少し、移動が減っている世の中の変化に合わせて、新しい手法でまちづくりに取り組んでいます。様々な交通シミュレーションを行ない、道路空間の再配分、「えきまち」のあり方をデータに基づき、住民や行政との対話、交渉を重ねた市民が主役のまちづくりです。

 花園通りの話には続きがあって、松山市駅前の道路を廃止して、駅前広場にする計画が進んでいます。11月に社会実験が行なわれ、市民の反応、データ的にも問題はなかったようです。

 これを主導されているのも東京大学の羽藤先生。データに基づいて、シミュレーションをして最適化する。賑わいの創出と災害に備えるえきまち空間、都市型道の駅のあり方を豊洲のまちづくりに活かす事が必要であると考えています。今回テーマになった防災はこれからのまちづくりに欠かせないテーマであると考えています。

清水建設 スマートシティ推進室 次世代都市モデル開発部 溝口龍太部長

── すべての計画はデータに基づくものであると。これからの課題は受け手が分析結果をどう解釈するかということなんですかね。

萩原 そうですね。シミュレーションはあくまで道具であって、津波や洪水の浸水エリアのシミュレーションもそうですが、それをどう使うかが問題です。結果を踏まえてどうまちづくりを進めるかというところで止まってしまうこともよくある話なので、研究者のシミュレーション結果を、プランナー、計画者の方がどう解釈して、地域の方にどう伝えるかということが重要だと思っています。

 

(提供:清水建設株式会社)

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