第5回 編集部の業務改善にRPAを使ってみた

いったん挫折したRPAプロジェクト Autoジョブ名人で再起を図る

現場での開発でRPAに再チャレンジするサワーコーポレーション

文●大谷イビサ 編集●ASCII

提供: ユーザックシステム

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 本連載は、IT記者であるオオタニがユーザックシステムのデスクトップ型RPA「Autoジョブ名人」を用いて編集部の業務自動化を進めていくという内容だ。今回は同じAutoジョブ名人をチャレンジしている仲間ということで、大阪の枚方市にあるサワーコーポレーションにお話を聞いた。

クリスマス感あふれるエントリで撮影に応じてくれたサワーコーポレーション営業部の越智 亮輔さんと三原 利之さん

単純労働は機械に任せ、頭脳労働に専念したい

 今回お届けするのは、Autoジョブ名人のユーザーであるサワーコーポレーションの取材になる。同社は他社のRPAから乗り換えてきて、Autoジョブ名人の試用版を触っている段階で、現状でもロボット化された業務はまだない状態だ。なぜ今回取材するのかというと、編集部の業務のRPAで試行錯誤しているオオタニの参考になるはずということで、ユーザックシステムが紹介してくれたのだ。

 今回は営業業務支援担当の越智 亮輔さん、経理・人事・労務などを手がける総務部の三原 利之さん、そしてAutoジョブ名人の選定に関わり、今は関連会社に出向している北脇 健二さんの3人に話を聞いた。まずは会社概要の説明だ。

 1991年創業のサワーコーポレーションは基板実装や半導体の製造過程で使用するメタルマスクの洗浄機メーカー。「超音波直接伝搬方式」と呼ばれる独自の超音波洗浄を採用した同社の洗浄機は高い洗浄能力と省電力を実現。実装業界でも高い評価を誇り、国内でトップシェアを誇るという。越智さんは、「もともとメタルマスクはフロンガスで洗浄していたのですが、オゾンホールの原因にもなるので、環境負荷が大きい。そのため、環境保全の観点から創業者が作ったのが弊社のメタルマスク洗浄機になります。だから弊社の社是も『地球益につくす』なんです」と説明してくれた。

同社のメタルマスク洗浄機

 そんな同社がRPAに行き着いたのは、「単純労働は機械に任せ、頭脳労働に専念したい」というシンプルな理由だ。現在、電子部品業界は活況を呈しており、社員・パートあわせて約50名という今の規模感で、成長を実現していきたいという意図があった。もともと同社は業務改善活動が盛んで、無駄な仕事は積極的にスリム化していたが、トップが関心を持ったことで、RPAプロジェクトも一気に進んだ。各部門からRPA化したい業務を集め、製品選定にまでこぎつけたのが約2年前のことだという。

ベンダーに開発を依存し、頓挫したRPAプロジェクト

 最初に選定したのはユーザックとは別のメーカーのデスクトップ型RPAだった。しかし、RPAの開発をベンダーに依存したため、時間とコストがかかったという。開発ベンダーとのやりとりは当時慣れないLINEとZoomを使わざるをえず、ヒアリングした内容が担当者に引き継がれてなかったこともあったという。三原さんは、「ちょっとした変更や機能追加のたびに料金が必要になるし、業務についてベンダーに伝えても、きちんと反映されないことが多かった」は振り返る。

 そもそも「2年間で3ロボット」というメニューだったため、導入した効果が大きい案件を作らなければという方向でプロジェクトが進んでしまったのもマイナスだった。結局、小さく始めて拡大することができず、プロジェクトは頓挫した。北脇さんは、「結局、会社の熱量と開発スピードがまったくあっていなかった」と振り返る。

 新たなRPAとして行き着いたのが、ユーザックシステムの「Autoジョブ名人」だ。開発をベンダーに委託してしまった反省を踏まえ、製品選定において重視したのは、とにかく現場のメンバーが自ら開発できること。製品を選定し、最初にロボット化に着手した北脇さんは、「プログラムができないメンバーにもRPAに挑戦してもらい、業務を済ませてくれる小さな手をいっぱい作りたかった。他社製品も機能はいっぱいあるんでしょうけど、そんな優等生は弊社にはいらなかった」と語る。

北脇 健二氏

 その点、Autoジョブ名人では自動化したい操作をGUI環境からユーザーが定義し、順番にリストに登録していくことで処理の自動化を実現する。Webページのタグ解析により、安定した動作を実現するため、Web関連の知識はある程度必要だが、基本的にはコードを書かないで、ポイント&クリックで開発可能だ。ユーザックシステムの営業対応に惚れこんだこともあり、7月からAutoジョブ名人に切り替え、現在RPA化の真っ最中という段階だという。

普段やっているマウス操作を定義するのは率直に言って難しい

 ユーザックシステムの勉強会で、越智さんが最初に試したのは保守部隊の月次分析という業務で、消耗品の販売やメンテナンスの件数などを集計し、売り上げをグラフ化するもの。感想を聞いたところ、「プログラムなんて全然無縁でしたが、勉強会で丁寧に教えてもらって、1つ作れたことが自信につながりました。最初に動いたのを見たときはびっくりしたし、やっぱり感動しましたね」と語る。できたRPAをほかのメンバーに見せると、みんな「すごい!」というコメントがあがったという。「やっぱりほかの社員はRPAとか、ロボットってわからないんですよ。でも、実物を見せると、どんなものか理解し、こんな仕事も自動化できないかと相談しにきてくれます」越智さんは語る。

 もちろん、一朝一夕で開発が進んだわけではない。総務部の三原さんが試したのはお弁当の発注で、従業員からのオーダーを集計して、飲食店に連絡するという内容だ。「お弁当の発注なんて、やれば5~10分の仕事なんですが、毎日同じことをやっているので、なんとか自動化できないかなと」いうことで始めたそう。でも、実際に作ってみたら大変だった。「率直に言って、すごく難しかったです(笑)。普段、普通にやっているマウスの操作を教え込ませるのは大変でした」という答えが返ってきた。

 このコメントには、Autoジョブ名人を試用している私もすごく納得だ。Autoジョブ名人に限らず、RPAでGUIの操作を定義するのはかなり大変。相手が人間なら「このボタン」を指し示せばいいが、RPAの場合は座標やボタンを構成するオブジェクトを指定しなければならない。また、同じ「ボタンを押す」という操作もさまざまな実装があるので、プログラムによってはきちんと動いてくれない。「たとえば社内の仮想デスクトップでの作業を自動化しようと思ったら、仮想デスクトップ自体が一枚の画像として認識されて、うまく指定できなかったこともありました」(三原さん)。

 開発するのが現場部門の担当なので、本業とは別にRPA開発の時間を捻出しなければならないし、操作でわからないところも次々と出てくる。それでもいろいろな試行錯誤できるのがAutoジョブ名人のメリット。「正直、作っている間は壁にぶつかりまくるのですが、いろいろ試行錯誤できるところがいいなと。処理が抜けていたり、違う方法を見つけても、後からやり方を変えたりするのも簡単です」とコメントする。

 また、ユーザックのサポートにも助けられているという。もともとAutoジョブ名人を導入した理由がサポートへの期待だったこともあり、「わからないことを言葉でうまく表現できないし、毎回聞くのは気が引けるんですが、ユーザックさん側から『どうですか?』と電話をくれたり、丁寧に対応してくれています」と越智さんは語る。

現場のチャレンジで業務時間の削減を目指す

 現在、越智さんは営業の月次分析のRPA化にチャレンジしている。Excelを使って、週次は15分、月次が60分かかるとのことなので、実現すれば大きな業務時間の削減につながる。Autoジョブ名人を使えるメンバーを社内に増やし、現場でチャレンジできる環境を整備していきたいという。

大阪の枚方市にあるサワーコーポレーション本社

 一方、三原さんは販売管理ソフトのデータを会計ソフトに連携させようとしている。「ソフト同士が連携してくれればいいんですけど、今は販売管理ソフトから出力された紙の伝票を見て、数字を抜き出して毎日入力しています。月で言えば10~12時間くらいはこの作業に費やしているので、印刷なしで、ボタン1つでできればいいなと思っています」と語る。

 まだ試用段階という取材ではあったが、Autoジョブ名人のよさを感じるとともに、開発の悩みも共感できるインタビューだった。今後、業務のRPA化が進んだら、次は成功したユーザー事例として取材に伺いたい。

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