家にパソコンがない子どもたち
パソコンを使う子どもが減っている。子どもたちのパソコン利用実態と問題点について解説したい。
総務省の「情報通信白書平成30年版」によると、インターネットに接続する際に使用する端末は、10代から40代では各年代とも80%以上がスマートフォンを利用しており、スマホからが最多となっている。次点はパソコンだが、13〜39歳ではその差は30%前後となっている。
親世代も若くパソコンを持たない場合など、自宅にパソコンがない環境で育つ子どもも増えている。ある子は、「YouTubeを見たいから(フリーWi-Fiのある)マクドナルドに行こう」と親に頼むそうだ。パソコンがないので、家にWi-Fi環境がないという。
「スマホがあれば何でもできるし、授業では使ったけど、パソコンは使いづらい。(パソコンは)高いし要らないと思う」と話す小学生がいる。学校の授業で利用するパソコンは古いことも多く、インターネット環境も整っていないし、利用できる内容も制限されている。「家でスマホを使っているほうが何でもできるし楽しい」というわけだ。
家にパソコンがある家庭でもあまり話は変わらず、「起動するまでに時間がかかるのがイライラする」と、ある高校生はパソコンに対して好意的ではない。起動するまでの時間が待てないスマホ世代は多いのだ。「スマホなら使いたいときにいつでもすぐに使える。なぜパソコンを使うのかわからない」。
「フリック入力のほうが早い」論文もスマホ
10代の子たちは、スマホでの文字入力がとても速い。普段からSNSなどで文章入力する機会が多いためだろう。それに比べてパソコンからキーボード入力する機会は少ないため、「文章は長文でもスマホ」という。「予測変換が出るから絶対にスマホの方が早いはず」。ちょっとしたレポートや論文くらいならスマホで書いているという大学生もいる。
しかし、予測変換で書いているので、文章がありきたりということも多くなっている。以前、経験がほとんどなく手紙もメールも書けない10代の実態をお伝えしたことがある。このように、スマホしか使わないことの弊害が出てきているのだ。
スマホは便利だが、主に消費的に使うものだ。パソコンなら今注目のプログラミング学習などもでき、経験の幅が広がるだろう。子どもがスマホしか使っていないようであれば、周囲の大人が意識的にパソコンを使わせてもいいのではないだろうか。
著者紹介:高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、監修、講演などを 手がける。SNSや情報リテラシー教育に詳しい。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)、『Twitter広告運用ガイド』(翔泳社)、『できるゼロからはじめるLINE超入門』(インプレス)など著作多数。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などメディア出演も多い。公式サイトはhttp://akiakatsuki.com/、Twitterアカウントは@akiakatsuki
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