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ローカライズは翻訳だけ 世界100カ国に拡大する女性向け恋愛ゲームアプリ:アクセーラ堀内大取締役

2015年01月16日 07時00分更新

文● 北島 幹雄(Mikio Kitashima)/大江戸スタートアップ

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  『モンスターストライク』や『パズル&ドラゴンズ』、『キャンディークラッシュ』など、年末年始に数多くのテレビCMを目にした人も多いだろう。世界トップクラスの市場になっている日本のゲームアプリだが、12月には『パズドラ』が『モンスト』を追いかける形で中国展開を発表するなど、成長が鈍化しつつある国内市場から海外へシフトが始まっている。

 そんななか、すでに世界100か国以上、日本語を含む7言語圏で展開するアプリを展開しているベンチャー企業がある。女性向けゲームアプリの運営を行っているアクセーラだ。アプリ1つあたりのダウンロード数は平均で約10万だが、登録ユーザーは全世界のアプリ累計で2000万人を数えるという。アクセーラのコンテンツ事業部をゼロから立ち上げた責任者である、堀内大取締役に話を聞いた。


■昼メロの需要をスマホアプリで奪った

 アクセーラが現在のような展開を行うきっかけは、2009年12月にmixiにてリリースした診断アプリ『究極の恋愛能力診断』だ。それまでは、M&A仲介やゲーム会社の受託支援が事業の中心だったが、ソーシャルゲームを作ってみたところ、配信1ヶ月で約25万ダウンロードという大きな反響があったという。好調に合わせてどんどんアプリを出していくなかで、ユーザーからの問い合わせに直接の恋愛相談が開発元に届くようになる。サービスの範囲外ではあったが、恋愛に関する悩み相談に答えていくうちに、それ自体をコンテンツとしたゲームを作れないかと堀内氏は検討を行い、実際に作り始めるようになったという。

 当初は恋愛ゲームの主要なボリュームゾーンである10代女性を想定してリリースを行ったが、競争が激しく、結果は得られなかった。「正直なところ、始めは若い人向けだった。学園ものを普通に出したらだめ、“彼氏がドS”といった特徴でもだめ。うまくいかなかった」(堀内取締役)

 堀内氏はこの失敗経験に対して、海外ドラマをヒントに別の方向性を探った。2011年7月にリリースした『禁断の恋?許されない2人?』は業界に先駆けたメロドラマ系恋愛ゲームとして20万ダウンロードのヒットとなる。新たにターゲットとなるのは、海外テレビドラマを見慣れているような女性層だ。「若い層をパスして25歳以上をターゲット」(堀内取締役)にしたアプリ展開で、最悪な出会いのシーンから始まるような甘いだけじゃ物足りないといった内容は、恋愛診断アプリで獲得したユーザー層とも相性が良かった。

 一般的な女性向け恋愛ゲームではNGとされる、攻略キャラがプレイヤーを否定するシーンや恋敵となるライバル女子の存在などがウケたという。ユーザー層は狙い通りの既婚者や恋人がいる25歳~30代半ばが中心で、言ってみればかつてTVが担っていた昼のメロドラマなどの需要をスマホアプリで奪った形だ。

 恋愛ドラマを楽しむためには、必ずしも生身の俳優である必要はない。「ポイントとなるのは、エンドユーザーの喜怒哀楽を刺激して、ゲームのなかで怒りを持ち上げて下げること。実際の反応を見ながら、A/Bテストのように内容をブラッシュアップする」と堀内氏。利用者の反応をダイレクトに反映できる点で、アプリゲームは最適といえる。


■重要なのは、「とりあえず翻訳してだしてみる勇気」

 現在のMAU(月間アクティブユーザー数)は全世界で約27万人。国内でもDAU(日次でのアクティブユーザー数)は10万人を超えているという。アクセーラの海外版の主たる展開先は、北米、韓国・中国・台湾・香港などのアジア圏、さらにドイツ、フランスとなっている。12月にはタイ語版、1月にはスペイン語版の展開も始まった。さらにロシア語ほかを現在は準備中だ。各国ごとにユーザーの反応は若干異なるというが、ベースラインのストーリーやイラストなどは変更していないと堀内氏は語る。

 好調を維持する海外進出のきっかけになったのは、アクセーラに出資を行うサムライインキュベートの榊原健太郎氏の一言だった。海外で同じようなゲームが受け入れられるかどうかの前に、実際にまずは動くことを勧められた。「結局のところ重要だったのは、とりあえず翻訳して出してみる勇気」だと堀内氏は語る。

「普通に翻訳して出しただけだったが、すごいことになった。北米展開といっても広告などは行わず、Facebookでの口コミなどで広がったもの。特にフランスでは調子がよく、現地のSNSコミュニティのなかで女性層に受けて盛り上がりがある。海外の人のコメントは日本と変わらない」(堀内取締役)

 累計2000万ダウンロードへの拡大には、国内でも海外でも女性コミュニティでの口コミが大きく寄与しており、TwitterやFacebookなどのSNSなどが主。売り上げの内訳でも、日本が49%と半数を切っており、アメリカ・韓国・台湾などを中心に売り上げを伸ばしているという。同様の女性向けアプリの競合には、ボルテージやサイバードがあるが、「うちほど海外に進んでいるところはない」と堀内氏は語る。ビジュアルやゲーム慣習といったローカライズでの懸念は、シンプルなアプリであることと、「恋愛ドラマ」を軸に乗り越えられた形だ。

 主な収益源は、ゲーム内のアイテム課金。1日あたり5枚の無料チケットを提供して、早く続きが読みたい人に課金チケットを買ってもらう仕組みだ。1人のキャラを攻略してクリアするまでには、100~200枚が必要となる。ユーザーがゲームの世界観にハマれば、キャラクター攻略も広がっていく。現在の年商は約2億円。堀内取締役によれば、今後はよりペースも早める形で海外展開を進め、全世界での女性ユーザー増、ローカライズを進めるという。野望は、110カ国33言語での全世界に向けたコンテンツ配信だ。「拡大フェーズ、上場は狙っているが3~4年先を見込んでいる。あくまで得意分野で伸ばしていく」

 アクセーラでは、ゲームアプリだけではなくユーザー層との相性が良いキュレーションメディアも2014年4月にスタートしている。「Verygood[ベリーグッド] 恋するアナタを応援!」は、占い、スピリチュアル、婚活の記事を中心に約50万MAUを集めているという。こちらもトライアルとして、英語・繁体語での拡大を展開中だ。「サンフランシスコからのアクセスが多い。恋愛ゲームアプリとキュレーションメディアでPDCAがまわっている状態をより加速したい」と堀内氏は語る。


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