楽天情報技術部エンパワーリング課環境改善グループの技術理事を務める吉岡弘隆氏は1958年生まれ、今年で56歳になる。日本DEC、日本オラクル、子会社ミラクル・リナックスを経て、51歳で現職に就いた。
吉岡氏が新卒で入った日本DECは、1980年代はエクセレントカンパニーとしてもてはやされていた。だが、1990年代にUNIXやワークステーションが流行すると、業績はたちまち落ち込み、看板商品の「RDBMS」は競合のオラクルに売却された。ところが「会社の中にいると、つぶされる流れが分からないもの」なのだという。
自社商品の方が優秀だという意識が強い大企業ほど、時代の流れは読みづらい。
「イノベーションのジレンマだ。いいものを作るほど負けてしまう、優秀であればあるほど袋小路にはまってしまう。それは会社の中で、そういう経験をしていないと分からないんじゃないかと思う」
30代で勤務先の消滅という経験を経てから、吉岡氏はいざ会社が傾いたときに備え、定期的に業務の棚卸をするようになった。上司との面談で話す「仕事」と、職務経歴書に書く「仕事」はまったく別だからだ。
「自分ができたこととできなかったことの棚卸しを、20~30代のときにやったほうがいい」
ペースは半年から1年に1回。現在の仕事と目標、また会社の中でのミッションを言語化するのが重要だと吉岡氏は言う。「大手企業の場合、上司との面談はあっても、自分のスキルがどれくらい社会的価値があるかを考える機会は少ない。とても危険なことだ」
エンジニアであれば、職務経歴書に「Perl、PHP経験あり」と書くか、「どんなプロジェクトに携わり、どんな役割を果たしていたか」を明確に書くかで、採用企業からの見え方は大きく変わる。書き方によっては、炎上だらけ・残業だらけの企業を自ら引き寄せてしまいかねない。
「(プロジェクトを炎上させる企業は)『Java経験5年』とかそういう記述だけでエンジニアを選び、人月計算で採用している。『未経験者可』なんて言っているところもあるが、バカにするなという話」
その一方で「優秀な人材」が会社をダメにすることもある──「アスキークラウド2014年7月号」の特集「『仕事ができる』ってどんな人?」では、IT業界を渡り歩く吉岡氏のようなキャリアハッカーにとって「仕事ができる」基準とは何なのかを探っている。
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