米アマゾンは昨年12月、「予想出荷システム」なる特許を取得した。たとえば、ある小説の続編(2作目)が発売された場合、その1作目を購入したユーザーは続編を注文する可能性が高い――こうしたユーザーの過去の行動をパターン化し、ユーザーがアマゾン・ドットコムで商品を購入する前に、それを予測して商品を出荷するシステムを構築しようというのだ。
このシステムでアマゾンが狙うのは、ユーザーが注文してから商品を受け取るまでの時間を短縮すること。しかし、これは単にアマゾン・ドットコムのサービス向上を予見させるだけでない。同時に、アマゾンがすでに膨大な個人データを蓄積し、それをサービスやマーケティングに活用できることも含んでいる。この点に着目したのが米調査会社ガートナー(Gartner)だ。
ガートナーはこのほど発表したレポートで、モバイルアプリが2017年までに2680億回ダウンロードされ、770億ドル以上の収益を上げると予測している。これは平均すると、ユーザーが毎日100以上のアプリやサービスに個人データを提供することを意味し、ガートナーは、モバイルアプリが認識コンピューティングのために個人データを運ぶクルマになるだろう、と比喩的に表現する。
認識コンピューティング――コンピューターが状況等を認識する技術は、過去の行動パターンからそのユーザーが興味・関心を示しそうな広告を表示するターゲティング広告を思い浮かべれば理解しやすい。すなわち先述のアマゾンのほか、グーグルやアップル、フェイスブックといった大手IT企業は、膨大な個人データを蓄積しつつあり、認識コンピューティングのうえでは優位な立場にあると言える。
アスキークラウド3月号(1月24日発売)では「強者がますます強くなる クラウドの成功法則7」をうたった特集記事をまとめているが、まさにワールドワイドな規模でサービス提供と個人データ収集を両立させるクラウド企業には、認識コンピューティングでも勝機が広がっている。
ガートナーは今後の3~4年でモバイルアプリの半数がウェアラブル端末をはじめスマート家電やスマートカーなどで利用されるとレポートしている。スマホやタブレットに限らず、身の回りのさまざまなモノがインターネットにつながる「Internet of Things(IoT)」の普及を念頭に置いているわけだ。IoTであらゆるモノが認識コンピューティングのもとにサービスに組み込まれる――そんな世界がかいま見えてきた。
関連サイト
■ガートナー