NECパーソナルコンピュータは29日、発売が予定されている軽量ノート「LaVie Z」シリーズの開発陣による、説明会を実施した。
細かい、細かすぎる……変更点
10月15日に発表された第2世代のLaVie Z(関連記事)は、先代機の875gよりもさらに80g軽量の約795gとなった(タッチパネルなしの場合、タッチパネル付きモデルは約964g)。
またパネルも従来のTNではなく広視野角のVA(IGZO)またはIPS(α-Si)とし、高解像度を追求している。2560×1440ドット(221ppi)のIGZO(軽量モデル)または1920×1080ドット(165ppi)のIPS(タッチ対応モデル)が選べる。鮮やかさの面でもコントラストがともに2倍、色純度も1.6倍に向上した。NEC PCによると、タッチ対応と軽量さのどちらを優先するかの要求はほぼ半々となっており、工数が増えても、2モデルを投入する形としたという。
従来機種からの改善ポイントは多岐にわたる。特に軽量化ではレースカーを肉抜きするような地道な改善が加えられており興味深い。たとえば、軽量化の特徴であるマグネシウムリチウム合金は材料組成を変更。プレス加工の時の反りを低減する新しい加工方法も採用し、ボトムケースを従来の0.5mmから0.4mm。また、キーボードのパームレスト部分なども0.5mmから0.45mmに一部薄肉化して5.0gの重量削減。キーボードの底板を高強度アルミに変えて0.3mmから0.265mmに薄くし、さらに肉抜きを実施して5.0g削減(クリック感を出すメンブレンやPETシートも薄型化)。ファンのカバーをアルミニウムからマグネシウム合金に変更して2.1g削減、基板の部品点数を減らして約13gの軽量化、液晶パネルのガラス厚を0.4mmから0.25mmに減らして20~30%の軽量化……といった具合だ。
面白いのはバッテリーに関する部分。軽量モデルでは4セル(2000mAh)のバッテリーを搭載するが、これは初代機の6セル(3000mAh)より少ない。通常であればバッテリー駆動時間の向上を目指すところだが、バッテリー自体の密度が向上した点やCPU/液晶パネルが低消費電力化したことで4セルでも従来を上回る駆動時間を得られるということで、あえてバッテリー搭載量を削った。これにより18.2gの削減が可能となった。
液晶パネルの調達には苦労、堅牢性を確保するための工夫も
これ以外にもタッチモデルでは、液晶とタッチパネルを密着させて薄型化と操作性が両立できる“ダイレクトボンディング”方式にするなどして薄型化を目指した。ちなみに使用するLCD Cellは従来よりもかなり薄型化したほか、フィルム材質にも配慮して、軽量化を目指している。こうした細かなカスタマイズが必要であるため、液晶部材の調達には通常の2ヵ月程度に対して、5ヵ月と長期の時間が必要となった。これは適切な部品が当初なかったためで、結果として薄型の液晶セルだけを作れるメーカーを口説き落とし、試作し、実装検証を繰り返すところまで含んだ時間が必要だったためだという。
もちろん軽量なだけではダメ。モバイル使用でも十分なNECとして最低限の堅牢性は確保しなければならない。そのための工夫もいくつかある。たとえば筐体のデザイン。ボトムケースにアールをもうけていた初代機に対し、第2世代機では角ばったデザインを採用しているが、筐体を囲う部分の高さを上げ、厚みを増やして傾斜させ、さらにリブも設けている。またサポート部品も増やすなどして対応している。
なお、タッチ対応モデルではダイレクトボンディング工法の採用により組み立て方法も変わっており、天板(外装)に取り付けていく方法ではなく、液晶パネルの枠(ベゼル)に取り付けていく方法で各部品を組み立てている。また開いた状態で天板の上に来るアンテナ部分のカバーは従来別パーツに分割していたが、今回は一体成型。金属製の本体に樹脂を一体化したハイブリッド構造にしたため、樹脂の選択や塗装、経年変化、成形性の確認などにも難しさがあったという。
薄型軽量でもデザイン性にも配慮したLaVie Zシリーズ。開発に携わったメンバーは以下のように語る。
「これで十分だ、満足するなという脈々と受け継がれたDNA。新技術をLaVie Zに盛り込むとどこまでいけるのかを追求した。1点、初代は900gをきるという明確なターゲットがあったが、今回は875gより軽くしてくれとしか言えなかった。前人未到で想像もできなかったため」(商品企画本部 コンシューマ商品企画部 モバイル担当の中井祐介氏)
「LZの後継機なので驚いてもらわないといけない。きりがある数字をきるということにインパクトがある。簡単に他社に追いつかれてはいけない。ぶっちぎりで軽くする、800gを切るという点を開発者に要求した」(第1商品開発本部 商品開発部でプロジェクト管理を担当した飯田昌暢部長)
「やれそうだという感触はあったが、絶対にできるかはわからない。やるからにはとことんやろうという意識で望んだ。(航空機やレーシングカーに迫るような)レベルの高い仕事ができた。机上の部品積み上げの時点でターゲットが切れず、技術者全員でアイデア出しを実施した。その中からバックライトフィルムの材質変更と、ファンプレートの板材変更などのアイデアが出てきた」(第1商品開発本部 設計技術部で機構設計を担当した梅津秀隆主任)
商品企画の中井氏は「サプライズが1週間で飽きてしまってはだめだ。3年も4年も持ち上げて使う軽さを実感できるものにしなければならない」と話す。LaVie Zはどんな驚きをユーザーに提供してくれるのだろうか。