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あなたの知らない最新AVの世界 第2回

心揺さぶる重低音の迫力! 3D時代のサラウンドを体験

2011年07月27日 12時00分更新

文● 鳥居一豊

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昨年度で最も音が良いと言われた
「9<ナイン>~9番目の奇妙な人形」の生々しい音を聴く

 続いて、昨年末に発売されたBDソフトで、その音の良さで大きな話題となった「9<ナイン>~9番目の奇妙な人形」を見てみよう。これは、精密な3DCGで再現されたアニメーション作品で、人類が滅びた後の世界を舞台にした、科学者が生み出した小さな人形たちの物語だ。

 3DCGも人形を構成する銅の指先や麻布の服といった質感を極めて写実的に再現しているが、驚かされるのが音の生々しさだ。人形たちの足音が部屋の中、街の中に響き渡る質感の違いも極めて細かく再現され、実際に誰かの足音が鳴っているようなリアルさを感じる。

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編集O:これは音の生々しさにびっくりしますね。最初に人形が吊されているところで、人形と一緒に何かがゴロっと転がり落ちて、部屋の左隅の奥の方に円を描きながら転がっていく、その音の移動する感じが、実際に聞こえているような生々しさでしたよ。

編集K:いやいや、人形の足音や窓を開いた音、街の中の風が吹く音、すべてが実体感のある音になっています。「ドルビーTrueHD」の再現力がよくわかりますね。こういう音が家庭でも聴けるようになったからこそ、こうした音のリアリティーを重視した作品が登場してきたという気もしますね。

編集O:アニメーション作品だからこそ、音でリアリティーを加えようという試みは日本のアニメもやっていますが、最先端ではこんなに進んでいるんだってところにも感心します。やっぱり、サラウンド音声の映画はサラウンドで聴かないともったいない!

 実際のところ、HDオーディオのロスレス圧縮の採用で、ホームシアターの音はやっと映画館の音に追いついたと言える。そして、それは作り手にも影響は与えていると思う。

 ソフト化される時に家庭のオーディオ環境に合わせて聴きやすく加工する、ということではなく、最近はむしろ映画館の音をそのままソフトに収録する方向に変わっているような気がする。実際のところ、昔の映画のBD版などはリマスタリングされた映像だけでなく、音の点でも驚くほどクオリティが向上しているものが少なくない。

3D時代になってサラウンドの音作りも変わる?
「トロン:レガシー」を聴く

 最後に、3D制作された「トロン:レガシー」のライトサイクルによるバトルシーンを見てもらった。この作品はスタイリッシュな映像が話題だが、ダフト・パンクの音楽など音の方もなかなかこだわっている。

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編集O:サラウンドの効果が少し違っているかな? 今までのソフトは部屋全体に音が響いていた感じだけど、効果音はどちらかというと前側中心で、転倒したライトサイクルから人が放り出されて画面のこっち側に飛んでくるような場面だけ、音が前から後ろに抜けていく感じ。

編集K:BGMは部屋全体が鳴っている感じだし、バトル前の演説も声のエコー感は部屋全体に響いています。でも、ライトサイクルの走行音などは前方だけで鳴ってますね。むしろ、前側の音場の奥行きが深くなっている感じです。

鳥居:耳の鋭い人が参加してくれると、実にありがたいです。実はこれ、3D映像に合わせたサラウンド音場なんですよ。3D映像は映像に集中しやすいので、あまりにも効果音が前後に広がると映像とのズレを感じやすいので、3D映像で派手に飛び出してくるような効果音以外は、主に前側だけで再現されているのです。

編集O:3D時代のサラウンドですか~。3Dになると映像だけでなく、音も進化していくんですね。

編集K:前側の奥行きの再現などは、ステレオでも難しいもの。そうなるとホームシアターも実力の高い物が欲しくなりますね。

鳥居:こういったことは、各社のアンプ設計に関わる人がすでに注目しているので、現在の製品ならば、きちんと再現できるようになっていますよ。もちろん、上級機ほど実力が高くなるのは当然ですが。

 付け加えるならば、3D映像との関わりは前方上方向に設置するサラウンドチャンネルである“フロントハイトチャンネル”が大きい。もともと映画館の前方スピーカーは映像の映るスクリーンの後ろにあり、しかも位置は高めだ。

フロントハイトはフロントLRスピーカーの上に配置する(ドルビーの試聴室にて)

フロントハイトはフロントLRスピーカーの上に配置する(ドルビーの試聴室にて)

 家庭ではフロントスピーカーは画面の両側で、センタースピーカーは画面の下側になることが多い。これでは高さの再現が難しい。画面と音像の一致はホームシアターの命題のひとつだが、フロントハイトチャンネルの登場は、これを改善することが目的のひとつでもある。

 フロントハイトは前方の音の奥行きの再現を高める役割もある。また、すべてのAVアンプが採用しているわけではないが、フロントスピーカーの両側にスピーカーを増やす“フロントワイドチャンネル”も、前方の音場の奥行きや広がりを改善するためのものだ。

 これらのすべてが3Dのためのものではないが、3D映画が普及してくるとフロントハイト/ワイドチャンネルを積極的に活用した作品も増える可能性がある。また、音楽ソフトなどでは、リアよりもフロント方向のチャンネルを増やす方が有利なので、採用されることも増えるだろう。

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