迫力のあまり感涙!?
鳥居:さっそく3D映像を見てもらうことにしよう。これは海の中の魚などを撮影したドキュメンタリー映像だけど、わりと3D感が強調されているから、立体感などが分かりやすい作品なんだけど……。
M:た、確かに飛び出しますね。珊瑚礁の手前の珊瑚の飛び出しが凄いし、その間をすり抜けるように泳ぐ派手な色の熱帯魚も目の前にいるようです。
鳥居:今回はソニーの「KDL-55HX920」という55V型の大画面モデルを使ったから、迫力が凄いね。画質的にもかなり優秀なハイエンド機だから、熱帯魚のディテールのなまなましさや、かすんで黒く沈んだ遠景の海底はぐっと奥に引っ込んでいて、すごくリアルだね……って、あれ?
ここでMくんの方を見ると様子がおかしい。目頭を抑え、うずくまっている。もしかして、泣いている? 感涙!?
M:3Dの迫力は凄いんだけど、映像がチラつくっていうか、目が痛くなっちゃって。さっきまで徹夜でパソコン作業していたから。もともとドライアイ気味だったんですが……。映画1本を見続けるのは辛いですね。
どうやらかなりのドライアイ状態の様子。そうでなくても初めて3D映像を見た人は同じように目が痛くなるような、通常の映像に比べて見づらい印象を持つことが少なくない。
そのため、どの3Dテレビにも「長時間の視聴は避ける。適度に休憩を挟む」といった注意書きが見られる。特に小さい子供に3D映像を見せる場合は、夢中になって見続けてしまうことがないよう注意が必要だ。Mくんにも、ここでしばらく休憩を取ってもらった。
実際にはとても見やすくなっている3Dテレビ
ちなみに、筆者の印象はまったく逆で、今年の3Dテレビはいずれも昨年までのモデルに比べるとチラつき感や目の奥が痛くなるような負担は軽減され、ずいぶん見やすくなったと感じた。
これは3Dテレビの映像に見慣れていることもあるが、3D表示技術の進歩も大きい。例えば、今回使用したKDL-55HX920の場合なら、新技術として「タイミングコントローラー」を採用している。
これは右用/左用の映像を書き換える際に、描画のタイミングを最適に調整することで、結果的に書き換えにかかる時間の短縮を実現する技術だ。これは、左右の映像書き換えのタイミングと、3Dメガネの液晶シャッターの開閉タイミングのズレなどが原因で起こる「クロストーク」(左右の映像が混ざって映像が二重に見える現象)の解消にも貢献している。
また、暗い部分のLEDを消灯し、その分明るい部分では通常よりも明るくLEDを光らせて高コントラスト化を実現する「インテリジェントピークLED」を応用した新技術も搭載。左右の映像を書き換えている間に、消灯しているバックライトのLEDの電力を蓄え、書き換え後(点灯時)に上乗せして発光させる、ということも行なっている。
これにより、昨年の3Dテレビで指摘されることの多かった画面の暗さ(これも疲れ目による目の負担につながる)も解消している。
こうした3D映像技術の進化が見られるのはソニーだけではない。パナソニックはプラズマパネルの発光効率改善によって明るさを高めたり、クロストークの原因となる残光時間のさらなる短縮を行なっている。
また、パナソニック初の3D液晶テレビである「VIERA DT3」シリーズでは、新開発の「4倍速IPSαパネル」を使用し、液晶の駆動方式も改良することで、クロストークや映像のチラつきの少ない映像を実現している。
東芝の「REGZA ZG2」シリーズでは、クロストークを改善するため、液晶の応答特性やバックライトの点灯タイミング、光の広がりなどを考慮して、液晶分子の応答速度を最適に制御する「3Dクロストークキャンセラー」を新搭載している。
シャープは「AQUOS Z5」シリーズで、独自の4原色液晶パネル自体に改良を加えた「ハイスピードUV2A」技術を採用。パネルの応答速度そのものを向上することで、クロストークの発生を減らしている。
もちろん、3D映像の画質は各社でさまざまな違いがあるが、こうした技術によって3D映像はずいぶん見やすく、しかもより立体的な映像が楽しめるようになっている。昨年登場したばかりの1号機よりも熟成の進んだ今春モデルの方が、当然ながら3D映像も進化しているというわけだ。
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