月刊アスキー 2008年5月号掲載記事
「EC-CUBE」――オープンソースのECサイト構築ツールとして無償で提供
「アドエビス」――広告効果測定システムで収益を上げる
商人の町たる大阪、ゼニの花咲く大阪に、なぜかECサイト構築ツールを“無料”で提供してしまう企業がある。「ロックオン」という企業がそれだが、別に同社が奇特なわけでも、ボランティアでやっているわけでもない。
代表取締役社長の岩田 進氏は22歳のときに、ウェブ制作会社として同社を起業した。だが、岩田氏には「世の中にインパクトを与える“製品”を作りたい」という強い希望があった。その願いを具現化した製品として開発したのが、ECサイト構築ツール「EC-CUBE」と、広告効果測定システム「アドエビス」だ。
まず「EC-CUBE」。これを無償で提供し、かつソースコードも公開したのは、岩田氏がECサイト構築ツールをパソコンにおける「OS」のようなものと捉え、プラットフォームとして広く普及させることを狙うからだ。
インターネットでの商取引はいま、約4兆円という巨大市場に膨らんでいる。この市場において、個々のECサイトが収益を上げるには相当な独自性を発揮できなければならず、それには柔軟なカスタマイズが可能なツールが必要となる。
そこで岩田氏は、いわばリナックスのように多くの人々が自由に開発できるオープンソースのECサイト構築ツールなら、ロックオンが1社で開発するより迅速かつ高度に進化するに違いないと考え、ソースコードの公開に踏み切った。
EC-CUBEがECの基盤として普及すれば、その上で動作する顧客管理や広告効果測定など、ECに必要な各種のしくみを提供することで、ソフトウェア企業も収益を上げられるだろう。
その一例として、同社は「アドエビス」を提供する。従来からウェブサイトのアクセス解析ツールは存在したが、バナーや検索広告など、広告の効果をリアルタイムに分析できるツールはなかったという。
そこに目を付けた岩田氏は、どの種類の広告からどれだけのアクセスが収益に結び付き、顧客の獲得単価がいくらだったかまでを一括して分析・管理できるツールとしてアドエビスを開発。最近になって国内でも広告効果測定システムという存在が認知されるようになってきており、その分野ではトップシェアという。
大阪でいま元気なのは、橋下府知事だけじゃない。大阪の会社が作ったECの基盤ソフトが、世の中を変えるかも!?