リモートスクリーンテクノロジーを実現するサーバボードのサンプル(写真は開発中のものです) |
LuiのPCオンデマンドは「リモートスクリーンテクノロジー」と称するNECの独自技術により実現している。ここでは簡単に、その仕組みを説明したい。
ホームサーバPCには、PCユニット(パソコン部分)に接続されたサーバ機能部(以下サーバボード)が内蔵されている。サーバボードは、PCユニットとPCリモーターのやり取りを一手に引き受けており、PCオンデマンドはサーバボードにより実現されている。
ホームサーバPCとPCリモーターとの通信の仕組み(イラスト:永野雅子) |
仕組みを順を追って説明しよう。まずパソコン部分は通常のWindowsパソコンと同様に、画面をグラフィックス機能(GPU)で生成する。通常ならこれがディスプレーに出力されるのだが、サーバボードはそれを秒間最大30フレーム程度でスクリーンキャプチャーする。
そして、画面の中から表示が更新された部分を抽出、画像圧縮したうえでネットワークインターフェースからPCリモーターに送信する。PCリモーターはそれを受信して、手元に表示されるWindowsの画面として表示する。
Windowsのリモートデスクトップ機能では、DirectXの表示や動画再生など、処理によってはリモート側で実行できないものもある。しかし、この方式ならそういった制約は少なくなる。使えるアプリケーションが拡大するのは非常に大きな利点だ。
Windowsの画面をキャプチャーして送るLuiの方式なら、動画再生はもちろん、DirectXを使うゲームでもPCリモーターで表示できる |
通信データ量を削減するために、データ圧縮の動的な調整も行なわれている。例えば、画面の広い領域が一度に更新される場合は、その領域を圧縮率の高い粗めの画像として送信する。逆にマウス操作やカーソル操作など狭い部分が更新された場合は、更新部分のみを圧縮率の低い鮮明な状態で転送する。
同社によれば、文字入力程度であれば1Mbps以上、画面の広い範囲が常に変化するフルスクリーンの映像再生では10Mbps以上の帯域が必要という。なお、通信データ量の設定はWindows上のユーティリティーで設定できるほか、PCリモーター側にも“画質優先/動き優先”といったモード切り替え機能があり、ユーザーが調整可能だ。
ホームサーバPCとPCリモーターとの接続の際には、ホームサーバPCのIPアドレスを確認するために、「メール交換方式」という面白い仕組みが用いられている。
メール交換方式によるサーバ~PCリモーター間の接続の仕組み |
接続の際には、まずPCリモーターからホームサーバPC宛てに、PCリモーター自身のIPアドレス情報を含むメールを送信する。サーバボードはパソコンの電源がオフの状態でもメールを監視しており、PCリモーターからのメールを受け取るとパソコンの電源を投入。サーバはUPnP対応ルーターの通信用ポートを開けるなどの処理を行ない、PCリモーターとの間でVPN接続を行なう。これでリモート操作が可能になる。
つまり、メールによってIPアドレスの解決を行なうことで、ダイナミックDNSサービスなどを使わずに接続を実現しているわけだ。