月刊アスキー 2007年12月号掲載記事
9月17日、米国で“無料”の音楽配信サービス「SpiralFrog」が正式にサービスを開始した。
iTunes Storeなど先行する同種サービスへの究極的なライバルになるのでは――同社の事業計画が発表された昨年夏には大きな注目を集めた。だが、同年12月に予定されていたサービスインを実現できず、その後内部紛争でCEOが辞任するなど、そのまま立ち消えになってしまうことも懸念されていたが、なんとかスタートまでこぎ着けた格好だ。
無料サービスの仕組みは広告モデルによるもの。会員登録時に性別や年齢、地域などを記入させ、それらの属性に合わせた広告がページ内に表示される。利用者は楽曲の検索やダウンロード中に、この広告を見ることになるわけだ。ダウンロードしたデータを保持し続けることは可能だが、30日に1回以上アクセスし、アンケートに答えて会員権を「更新」しなければ再生はおろか、追加ダウンロードもできないようになっている。
同社はこのサービスが違法コピーやネット共有への強力な武器となり、レコード会社やアーティストにとっての合法的な新たな収入源になる、と力説する。現在のところ広告収入の3分の2程度が権利料に回されているようだ。
音楽配信サービスの人気獲得のカギとなる楽曲データの提供企業だが、大手のユニバーサルBMGとEMIとの契約により、現在80万以上の曲と、3500本以上のミュージックビデオが提供されている。ただ、先行する有料サービス、例えば600万以上の楽曲数を誇るiTunes Storeに比べるとまだまだ貧弱なことは否めない。また、Windows MediaをベースとしたDRMを使用していることから、対応携帯機器へ転送して利用することは可能だが、iPodでは使用できない。
実際に試したところ、アイデアは悪くないもののユーザーインターフェースの使い勝手が今ひとつで、会員権更新の手間をも含めてサービスとしてやや使いづらいことは否めない。早い段階で一定数以上のユーザーと広告の両方を確保しなければ、先行きは苦しくなるだろう。無料という武器だけでどこまで先行者たちに立ち向かっていけるのか、発展途上とはいえ、サービスイン早々にして同社はある意味、正念場に立たされている。