「中国版艦これ」話題のゲーム会社に聞く

文●盛田 諒(Ryo Morita)

2017年10月20日 07時00分

 中国発のゲームアプリ「アズールレーン」が人気だ。

 日本では9月14日にiTunes Store/Google Playで配信をスタート。登録ユーザー数は国内200万人を超えた。擬人化した艦船をテーマにしたシューティング形式のゲームだ。ゲームシステムは異なるが、やはり艦船を擬人化した日本のゲーム「艦隊これくしょん-艦これ-」にイラストや雰囲気が似ているとして、ネットでは「中国版艦これ」と呼ばれることもある。

アズールレーンはシューティング形式のゲーム
画面は編集部ゲーム担当ちゅーやんくんの趣味です

 日本国内の配信会社はYostar社。同社運営担当の徐 遅(ジョ・チ)ディレクターに、ゲームが「中国版艦これ」と呼ばれていること、中国配信時に日本語の音声を使った理由、ユーザーから「クオリティが高い」と評価されるゲームを開発できる中国ゲーム市場の現状などについて聞いた。

中国版艦これ「言われると思った」

── 御社は配信元で、開発元は中国にありますね。

 中国のマンジュウ(Manjuu Co.ltd)とヨンシー(Yongshi Co.ltd)という会社が開発しています。

── 中国ではどのくらいヒットしたんでしょう。

 前に聞いた話だと、ダウンロード数は数千万回、デイリーアクティブユーザーが数百万人規模ということでした。

── なんと。ケタ違いですね。

 まあまあ、人口が人口なので。

── 中国では日本よりも前に配信しています。

 正式配信は6月ですが、βテストは昨年末からですね。日本でも8月末から9月頭までβテストを実施したあと、9月14日から正式に配信しています。

── 日本では最初から大ヒットというわけではなかったんでしょうか。

 反響は良かったのですが、今ほど期待はされていませんでしたね。

── 配信後は「中国版艦これ」と話題になりました。

 まあまあ、配信前からそう言われることはありましたし、言われるだろうと予想もしていました。お船をモチーフにしているタイトルですから。いくらゲーム性がちがうといっても、そういう声が出てくるということは当然予想していました。

── 実際にゲームをプレイしていると、「綾波」というキャラクターが、艦これに出てくる「島風」に似ている印象を受けました。

 インスパイアは受けていますが、艦これというより擬人化全体の話です。幻萌さんがやっているお船のゲーム(戦艦少女)もありますし、日本だと「MC☆あくしず」さんの文化もあります。「戦艦少女」は、日本でもう1年以上前から配信していますしね。

「綾波」という序盤に登場するキャラクター

── 日本の艦船をモチーフにしたゲームを中国政府の規制の中で配信するのはむずかしかったのではないでしょうか。

 日本の艦船をモチーフにしたキャラクターの名前をすべて動物や植物にしているのはその影響もあります。たとえば艦船「愛宕」の名前は「犬」になっていますね。ただ規制があるというだけで名前を「犬」にしているとか、キャラクターにけもの耳をつけているとは言いきれないのですが、影響があるというのは否定できません。

── ゲーム内のシステム「ケッコン」で艦名が変えられるというのも、あとから名前を「正式名称」に変えてもらおうということでしょうか?

 まあ正直、ユーザーの中ではそう解釈されていると思います。

(次のページ「中国人が『日本語』求めた」)

中国人が「日本語」求めた

── 中国版でも日本の声優さんを使われていますね。

 プレイヤー層は日本語を求めているわけですからね。

── 日本語を求めているというのは。

 日本のコンテンツが好きな人、中国でよく言う「二次元好き」がメインの層になっているところもあるので、日本の声優さんがしゃべることでみんな喜ぶんです。

── みなさん日本語はわかるんでしょうか?

 うーん、わかる方もいると思うんですが、むしろ雰囲気を楽しむというか。この手のコンテンツでよく「謎のドイツ語」とかあるじゃないですか。わからないことが格好いい部分もあるわけですから。言い方がやや悪いですが、韓流(K-POP)のような。あれもみんなが韓国語をわかって聴いているかというと、そうではないですよね。音楽性として高ければみんな好きになるし、そういうところじゃないかなとぼくは思います。

露出度の高さに34歳の記者もドキドキ

── 日本国内でもゲームのクオリティが高いと評判です。中国でクオリティの高いゲームが生まれるのは何か理由があるのでしょうか。

 中国はゲームの競争が激しいんですよね。かつてはストアランキング上位トップ50位が3ヵ月に1回のペースで入れ変わっているといわれる時期もありました。ゲームの寿命が短いことで、みんなクオリティを強く意識しています。クオリティの高いゲームが作られやすい環境といえると思います。

── クオリティが高い反面、「課金」要素は薄いですね。艦これもそうですが、アイテムを購入しなくてものんびりと楽しめる設計になっています。

 ユーザーは重課金に疲れているところもあると思いますので、広く薄く楽しんでもらえるほうがいいんじゃないかと。着せ替えアイテムもありますし、マップでライフがゼロになって戦闘ができなくなったとき左下のアイコンをタップすると100ダイヤで復活するモードもありますし。とはいえ、そのアイテムも1日1回使えるんですけどね。

お金をかけなくてもいろんなキャラをゲットして楽しめる

── お金を払おうとすればできるようにはなっていると。ユーザーの間ではエラー発生時の障害報告がとても詳細に書かれていることも話題になりました。

 個人的にはそれくらいやらないとダメだろうと思っているんですね。もともと中国企業なのでいろんなこと(障害)が起きてしまうと厳しめに見られる部分がありますし、単純に「石を配る」だけで終わりというのはダメだと思うんです。それよりもユーザーのみなさんに安心感を与えることが大事だと思っていて。実際書いているものにウソや誇張などは一切ないですし、あくまで書くべきだと思って書いていることです。

── 今後日本ではどう展開しようと考えていますか?

 まだ配信1ヵ月で運営はいろいろ安定していないところがあり、ゲームも改善できるところがあるので、安定して提供できるようにしたいと思っています。月末から来月のどこかに大型イベントも予定しています。まずはユーザーさんに満足いただくのが大前提なので、ユーザーを伸ばすためにこれをやろうというのではなく、まずは安定させていきたいと。今後にご期待ください。


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