最近FitEarでは、開発体制の世代交代が進んでいる。例えば最新モデルのひとつ、「MH335ht」の開発は若手の堀田息吹氏が手掛けている。型番のhtも堀田氏のことだ。千葉のFitEar本社で代表取締役の須山慶太氏を含む新旧開発陣に世代交代の意図について聞いた。
オーディオ機器は、何も足さず何も引かない水道管であるべき
インタビューに先立って、イヤーモニターの製作が行われている作業現場を案内してもらった。FitEarの母体・須山歯研は歯科技工の会社だが、説明を受けながら歯科技工と補聴器・イヤーモニターの製造に共通点が多いことが興味深かった。また、カスタムイヤーモニターの型(耳型モールド)のオス型はよく見るが、メス型の方は見たことがなかった。ラボツアーならではの興味深さがあった。
FitEarのこれまでの製品開発について須山社長の話を聞いた。
プロの使うステージ・モニターでは音以外の要素、耐久性、生体親和性、サービス体制も重要だという。サービス体制に対するシビアな要求や、製造方法が職人的な手法からデジタルでのCADや3Dスキャン/3Dプリント技術に移行してきていることが聞けた。後者はスムーズな世代交代にも役立っているという。
FitEarのサウンドについて、須山氏の考えも聞けた。いわゆる水道管理論だ。水道管をただ水が通るように素の音を伝え、INとOUTでキャラクターが変わらないようにしている。オーディオ機器は音をよくするものではない。音源の劣化や変質を限りなく排除した製品作りが肝要とのこと。それがミュージシャンが聞きたい音であり、サウンドエンジニアの意図を反映しやすい音ということになる。水道管理論の実現には素の音を知っている人(マスタリングエンジニア、サウンドエンジニア)の確認が必要だ。そのために、マスタリングエンジニアの原田光晴氏の薫陶を受け、社内音楽セミナーなども実施しているとのこと。
リファレンス音源は、イーグルスの『ホテル・カリフォルニア』のほか、ドナルド・フェイゲン、アース・ウィンド・アンド・ファイアー、モーツァルトなどの曲だそうだ。
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