掲載当初、タイトルなど一部の漢字に誤りがありました。お詫びして訂正いたします(2013年4月25日)
実は昨年の秋にも同じスイスRSWの「NAZCA」と呼ばれるクロノグラフ腕時計を衝動買いしてしまった。この時の衝動買いの理由は、極めて奇異なリューズ・デザインだった。一般的に衝動買いには、2番目の理由や3番目の理由は存在しない。
腕時計の駆動エネルギー系は大きく分けて「他力」と「自力」の2種類がある。筆者の大好きな言葉でもある「他力」の代表選手はソーラー発電やボタン電池など、外部の電気的エネルギーによる駆動方式だ。
一方、「自力」の代表は、リューズを手で巻く「手巻」方式と、常時、腕時計を装着することで、人の腕の動きで腕時計内部の半円形のローター(回転錘)と呼ばれる一種の分銅を回してゼンマイを巻く通称「自動巻き」である。
自動巻き腕時計の悪い点は、腕は2本しかないのに腕時計がそれ以上あったりすると、装着せずに置いてある腕時計は2日もするとたいていは停止してしまうことだ。そんな止まった自動巻き腕時計を目覚めさせるだけの為に、腕に装着してただ腕を振ることも大変なので、大抵の自動巻き腕時計はリューズを指先で回してゼンマイを巻くこともできるように作られている。
以前ご紹介したNAZCAも今回の「OUTLAND PCB」もそのリューズ形状にクラシックカーでおなじみの“エンジン始動クランク・ハンドル”の形状デザインを採用している。加えて今回のOUTLAND PCBはその名前の示す通り、極めて魅力的なプリント回路基板(Printed Circuits Board)イメージの文字盤をコンビネーションしている。
腕時計とプリント回路基板という2つの言葉を聞くと、腕時計マニアのなかには、世界で最初に高精度の音叉腕時計を開発した米ブローバの「アキュトロン」を思い浮かべる人も多いだろう。今も一部のマニアに人気のあるアキュトロンは、プリント回路基板を文字盤のデザインに採用したのではなく、文字盤を丸くくり抜き、当時なら隠ぺいすべき駆動機構の一部である本物のPCBを露出するというマーケティング的な冒険をした腕時計だった。
OUTLAND PCBは、「クランクハンドル型リューズ」という極めて歴史的、メカニカルな要素を腕時計マニアの指先の触感を刺激するインターフェースとして採用した。そして、同時に20世紀が生んだ画期的なテクノロジーの1つであるPCB技術の産物としての美しい回路基板イメージを視覚的感性を刺激すべくピックアップした腕時計だ。次世代は聴覚も動員する腕時計が期待される。
「戦略的衝動買い」とは?
そもそも「衝動買い」という行動に「戦略」があるとは思えないが、多くの場合、人は衝動買いの理由を後付けで探す必要性に迫られることも多い。
それは時に同居人に対する論理的な言い訳探しだったり、自分自身に対する説得工作であることもある。このコラムでは、筆者が思わず買ってしまったピンからキリまでの商品を読者の方々にご紹介し、読者の早まった行動を抑制したり、時には火に油を注ぐ結果になれば幸いである(連載目次はこちら)。
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