イギリスのテックブランド、Nothingがワイヤレスイヤホンの最新モデル「Nothing Ear」を発売しました。アップルの「AirPods Pro」と比べながら、本機の音質や機能の特徴をレビューします。
2万円台で買えるスタイリッシュで多機能なNothing Ear
Nothing Earはノイズキャンセリングと外音取り込み機能を搭載し、専用アプリにはユーザーの聴こえ方に合わせたパーソナライゼーション、音を細かく好みに合わせて調整できるオーディオイコライザーなどが揃っています。今回のモデルからハイレゾワイヤレス再生が楽しめるLDACのオーディオコーデックもサポートしました。
さらに、6月に予定するソフトウェアアップデートを済ませてからNothingのスマホにNothing Earをペアリングすると、イヤホンからChatGPTを呼び出してAIチャット機能も使えるようになります。
Nothingの直販サイトでは本機を2万2800円で販売しています。アップルのAirPods Proは3万9800円とやや高価なワイヤレスイヤホンなので、多機能でスタイリッシュなNothing Earがお買い得に感じられてしまいます。
バランスの良さをキープ。しかも「楽しい音」になった
Nothingは2023年7月にノイズキャンセリング機能を搭載する「Nothing Ear (2)」というワイヤレスイヤホンを発売しました。筆者はひとつ前の世代の「Nothing Ear (1)」も試していますが、サウンドに関しては「バランスは良いけれど無難」な印象を持っていました。音楽リスニングはエンターテインメントなので、もっと感情を揺さぶるような音づくりを探求してほしいなぁと、その当時はもの足りなく感じていました。
ところが新製品のNothing Earは、活き活きとした個性的なサウンドを楽しませてくれるイヤホンになっていました。音の心臓部であるドライバーを改良したことが大きく効いているようです。Ear (2)にも大口径11ミリのダイナミック型ドライバーを搭載していましたが、振動板ドーム部のコーティングが「ナノ炭素素材のグラフェン」から、Nothing Earでは「セラミック」に変わりました。グラフェンコートは高音域の再現力を高める効果をもたらすと言われていますが、Ear (2)は引き換えに音楽の線がやや細く痩せている印象を筆者は受けました。
Nothing Earはセラミック振動板を採用したことにより、サウンドの輪郭線がシャープに、そして太く力強く描かれるようになりました。音場の豊かな広がりも感じられます。引き換えに少し高音域が固くなった印象もありましたが、イヤホンを長時間使い込むほどに音の響きが柔らかくなった手応えを得ています。
Amazon Music Unlimitedで、デヴィッド・ボウイの楽曲『Starman』を試聴しました。イヤホンはGoogle Pixel 8にペアリングして、オーディオコーデックはハイレゾ対応のLDACを選んでいます。
冒頭ではアコースティックギターによるコード(和音)のカッティングが小気味よくジャキジャキっと刻まれ、ふんわりとリッチな余韻を響かせます。ほどなくして、力強いボーカルが前のめりに浮かび上がってきました。エレキギターのエネルギッシュな高音を、艶やかなストリングスのハーモニーが包み込むコントラスト感もNothing Earは丁寧に描いてみせます。ドラムス、ベースのリズムはタイトで粘り強く、確かな安定感があります。Nothing Earは生演奏の躍動感を楽しませてくれるイヤホンです。
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