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Google Cloudが「Generative AI Summit Tokyo '24」開催、生成AIの使い倒し方を示す

生成AI活用の先にある、日本テレビが本当に“創りたい”もの

2024年03月12日 08時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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チャットボットの先にある、日本テレビが本当に創りたいもの

 基調講演では、実際に生成AI活用を実践するユーザー企業として、日本テレビ放送網のDX 推進局 データ戦略部 担当副部長である川越五郎氏が登壇した。

日本テレビ放送網 DX 推進局 データ戦略部 担当副部長 川越五郎氏

 日本テレビでは、生成AIが本格化しいていない2022年に、“コンテンツ制作にAIを導入する”という目標を打ち立て、データやAIを用いたコンテンツ生成も活用の最終段階として定義していたという。「当時は『データやAIでヒット作ができるわけがない』と、鼻で笑われた」と川越氏。

 現在、AI活用の取り組みの第1弾として、「Mate(メイト)」という社内向けのチャットボットをVertex AIで開発中であり、2024年に入りプロトタイプもリリースした。このチャットボットでは、人の業務を奪っていくのではなく、相談できる、一緒に成長する生成AIを目指しているという。

開発中の社内向けチャットボット「Mate(メイト)」のキャラクター

 Mateでは、対話形式で翻訳や要約、マニュアル検索を依頼でき、サムズアップ/ダウンで定性評価できる仕組みも実装する。プロンプトや会話フローを内包したAPIを公開して、各業務システムから呼び出せるようにしたり、ノーコードでプロンプトやAIモデルの評価・検証ができ仕組みも盛り込む予定だ。

開発中のMateのUI、開発スピードや品質を鑑みて機能ごとに入口を分けている

 ただ川越氏は、「チャットボットを作って生産性を上げることがゴールではない」という。生成AIによる効率化は“小さな成功体験”であり、「チャットボットの先にある“3つのもの”」を創ることを目指しているという。

 ひとつ目が、“ITエンジニアのカルチャー”だ。組織やマインドのアジャイル化をして、スピード感のある開発体制を構築する。現在、15名以上のエンジニアからなる生成AI活用のためのプロジェクトチームを立ち上げており、Google CloudのTech Acceleration Programも利用してシステムの内製化を進めている。

Tech Acceleration Programの様子、Google Cloudのエンジニアからカルチャーも教わっている

 2つ目が“ノウハウやナレッジの蓄積”だ。日本テレビのデータ基盤は、これまでBigQueryで定量的なデータを管理していたが、生成AIでは、ナレッジやノウハウといった定性的なデータも必要になってくる。現在、社内のドキュメントをGoogle Workspaceに集約しており、非構造化データの蓄積や管理ができる環境の構築を進めている。

 3つ目が“リテラシー”だ。生成AIを利活用するだけではなく、課題やリスクを理解して、エンジニア自身がAI活用の敷居を下げられるようにする。実際に社内勉強会の実施やコミュニティの発足、ガイドラインの策定などに取り組んでいる。

 川越氏は、「生成AIを何らかの“機会”であると捉えるのが良いのではないか。我々は生成AIを“組織変革の機会”と位置付けた。是非、何の目的で使っていくのか、何の機会なのか、どうチャンスを活かすのかを考えて欲しい。そうすれば、おのずと生成AIの活用が進むのではないか」と参加者に語りかけた。

生成AIを“使い倒す”秘訣は「ユースケースをどれだけ知っているか」

 基調講演の最後には、Google Cloudの橋口氏が再度登壇。生成AI活用におけるGoogle Cloudの強みとして、フルスタックをカバーしたプロダクト構成、プロダクトの品質、コストパフォーマンス、一貫したサポート体制を挙げた上で、Google Cloudのパートナーエコシステムも紹介した。

Google Cloudのユースケース別支援パートナー

 Google Cloudが注力する6つのユースケース、“コンサルティング”、“マーケティング”、“ウェブサイト”、“デジタルコマース”、“顧客サービス”、“バックオフィス”のそれぞれで強みを持つパートナーが、同社の生成AIサービスだけでは届かない領域をサポートするという。

 橋口氏は、「生成AIは、技術の話というよりは、どこに使うかが非常に大事。こんなところで使えるんだというユースケースが沢山ある。それをどれだけ知っているかが、生成AIを使い倒す秘訣」と基調講演を締めくくった。

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