このページの本文へ

auがCM制作に生成AIを活用、その狙いは?

2024年03月13日 17時00分更新

文● 貝塚/ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

──どんな工程になりましたか?

奥村「工程で言えば、これまでの基準で考えると、無駄な作業が多いといいますか。『こう作りたい』というこちらの完成形のイメージに対して、生成AIがどんなものを出してくるのか、予想がつかないことがあります。もちろん、プロンプトを書いているのである程度はわかるのですが、まだ精度としては、狙ったものが完璧に出力されるという段階には至っていません」

──印象的な出来事はありましたか。

奥村「よく覚えているのは、持っていないはずのコップを突然手に持っているシーンが現れたり、衣装が、元のイラストと全く異なるものに変わってしまったりですね。男性キャストのシーンが女性イラストに変わってしまっていたり」

山中「正直なところ、最初は『これはやばいな』と思いました。これじゃ、見れる作品にならないんじゃないかと」

奥村「そうした面に、生成AIを使用する難しさもありましたが、同時に、生成AIを使う面白さもあったと思います。もちろん、生成AIが出力してきたものをそのまま使用するわけではないので、編集やプロンプトの修正を繰り返して制作を進めていきましたが、最終的には、ギリギリの戦いの中で、いいクオリティの映像に仕上がったのではないかと考えています」

AIは映像制作をどう変えていく?

──少し話題を変え、生成AIを、CMも含めた映像制作に使うことの意味や、今後の展開について、映像を制作するプロフェッショナルの皆様にうかがってみたいと思っています。まず、映像の生成という技術が普及していくことで、映像制作の現場はどのように変化していきそうでしょうか。

奥村「現段階での生成AIを前提とした話だと、まず『大量に作っていける』というところにわかりやすいメリットがあります。大量に作っていって、どんどんアイディアを試していける」

au CM「さぁ、何やる?」篇より

──これまでだったら「イメージにそぐわないな」と思ったときに、大きな手間をかけて修正する必要があったのに、はじめから大量のイメージを試して、条件に合うものを使えるようになる……というイメージでしょうか。

奥村「そうです。それから『世界観を拡張できる』というのも、AIの持つ特性だと思うんですね。0から1に進むところは、私たちが考えなければいけない部分ですが、1の外にあって、無数に広がっていく100までの過程を、生成AIがサポートしてくれる。これまでの常識では生まれなかった、不思議な印象を持つCMも増えていくかもしれませんね」

松本「最近では、芥川賞を受賞した方がChatGPTを使っていて話題になりました。まだ生成AIは、制作の過程のすべてを塗り替えるという段階までは至っていないと思いますが、映像においても、制作過程の中で活用することで、クリエイターの頭の中にあることを再現していくためのツールになってきていると思います」

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン