「アジア最後のフロンティア」といった表現がニュース記事で使われるが、中国ネット市場にも最後のフロンティアと呼ばれる存在がある。それが高齢者だ。
文革世代で最新のテクノロジーには弱い中国の高齢者
コロナ禍での政策からの必要性でスマホの普及が進んだ
中国では都市と農村で大きな格差があるとよく言われるが、それでも若い世代はまずスマートフォンを持っている。日本を含めて、どの国でも高齢者のネット利用率は一般に若い世代より低いが、中国の高齢者は文化大革命を経験した断層の世代で、新しいことを学ぶのに特に消極的といわれている。そのためネット環境が整う中国でも、かたくなにフィーチャーフォンしか使わない高齢者も少なからずいた。
そんな中国で高齢者のネット利用が近年増えている。背景にはコロナ感染者がいない場所で活動してきたことを色付きQRコードで示す「健康コード」をはじめとした、ゼロコロナ政策がある。スマホがないと移動や生活すらままならなくなり、さらに強化されたデジタル監視社会下でスマホを使いだす高齢者は増えて習慣化した。
高齢者もやむなくとはいえスマホを使わなければいけない中、子供や孫からのおさがりという人もいれば、高齢者向けのかんたんスマホを持つ人もいる。2023年にゼロコロナ政策は終了したが、こうしたスマホは結構売れていて、昔から中国のIT製品に触れている人には懐かしい、低価格スマホメーカー「天語(K-Touch)」や音楽プレーヤーメーカー「紐曼(Newsmy)」といったブランドが、高齢者スマホによって復活した。
そうした製品の中には、日本円で1万円以下の格安スマートフォンもある。微信(中国向けWeChat)と抖音(中国向けTikTok)のほか、カメラや通話、ショートメールに機能を絞り、それぞれのアイコンだけを大きく表示させている。ノーブランドのものもあるが、この手の製品は商品ページに書いてあるスペックは大体信用できず、とはいえ故障はしているわけではないので、動くことは動く。カメラ性能もよろしくないが、大音量のスピーカーを備えたものもある。
最近ではフィーチャーフォンでも微信や抖音ほか、支付宝(アリペイ)や健康コードを搭載した製品が続々と登場している。写真を撮ってSNSで知り合いとやりとりし、ショートムービーをなんとなく見たいだけならこれで事足りなくもない。ガジェットマニアとしても、テンキーがついててショートムービーが利用できる製品というのはグッと来るかもしれない(?)。
また変わり種としては平安通という高齢者向け見守りスマート製品を出しているスマホがある。これは専用の各種IoTセンサーを設置して使うもので、たとえばキッチン用だとセンサーが煙をとらえたり、転倒時に手元の緊急ボタンを押したりすると、警備担当や緊急連絡先に連絡する。
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