前回(「最新のソニー『α9 III』はAFも連写も速くて最強! 気がついたら1500枚も撮っていた」)に続いて、広島県福山市にある鞆の浦。歴史ある街並みが人気のスポットなのだが、ここは港街であると同時に斜面の街でもある。猫で有名な尾道と同じ地形だ。港周辺以外は、海と山に挟まれた傾斜地がほとんどなのである。
そこで今回は、坂道と階段で撮る、いわば“高低差の猫たち”といきたい。冒頭写真は、まさに階段の猫。階段を上っていくと、ど真ん中でじーっと見つめてる猫がいるではないか。あまりにきれいにど真ん中にいるものだからこっちも猫をど真ん中に置いて撮影である。何段か下からしゃがんで猫目線で撮影。
この階段を上っていくと山頂に寺がある。古くて立派な本堂。荷物が重かったので階段に座ってたら猫たちが集まってきたので、3匹いっぺんに背中から撮ってみた。
参拝を終えたら、別の階段から降りることにする。と、後ろからクロネコがついてくるではないか。お、これは写真に撮ろうと立ち止まってしゃがんだら、なんと猫も、目の前にちょこんと座ってくださりやがりまして。
これじゃあ撮れないじゃないかと思ったけれども、撮れました。α9 IIIはモニタがチルトするので、こういうとき大変ありがたいのだ。α9 III、偉いぞ(この場合はこの距離でフォーカスが合うレンズも偉い)。
そして、場所を移動。高台にある別のお寺を目指すのだ。そこはもうすごく眺めがいいけど、急坂の上にあるから上るのが大変。そして訪問したら、別の急坂を下る。急坂すぎて、両端が階段状になっているほどである。
急斜面なので、下る途中で道沿いの民家の屋根を見下ろすことになる。屋根を見下ろせるってことは、屋根の上でくつろいでる猫も見下ろせるってことだ。
猫がいたのやね。近づいたら逃げそうだったので、坂の途中で座り、望遠ズームレンズに付け替える。車が通れるか通れないかという細い道だし、観光客もめったに来ないところなので座り込んでも大丈夫なのだ。時折通る地元の人にちゃんとあいさつさえすれば。
高齢化が進んで過疎化してる地域ならではの朽ちそうな家屋がフォトジェニックではあるけど、そこに古くから住んでいる高齢者にとっては不便な場所になっているわけで、切実な問題ではある。
さて、猫は探してると見つからないけど、座ってぼーっとしてるとどこからともなく現れるという法則がある。屋根の上の猫から目を離すと、坂の下にいつのまにか別の猫が現れて、こっちへ上ってくるではないか。
このおだやかな顔をしたハチワレ、こちらへ来るかと思いきや、私が座っている横をするりと抜けて、さらに上っていく。そして、坂の上からこっちを見下ろすのだった。
下から見上げてると、今度はまた別の小柄なハチワレが登場。まだ若い子のようで元気である。その小柄ハチワレが、さっきの猫を引き連れて坂を下りて来るではないか。よく見ると顔も背中の模様も似てるので、親子な気がする。
そしてこの2匹はどうなったかというと、前を歩いていた猫が振り返って「おいおまえ、いつまでもついてくるな」と言ったとか言わないとか。もちろん猫なので、にゃあとしか言わないけど、そんなのだった。
いやあ、やはり猫は面白い。結論。猫には高低差が似合う。
もうひとつ、猫を撮るときは決して追わず、小さくなってくつろぐべし。そうすると、猫はいろんな姿を見せてくれる。そして体は冷え、日が暮れそうになって慌てて出発するのだった。
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筆者紹介─荻窪 圭
老舗のデジタル系フリーライター兼猫カメラマン。今はカメラやスマホ関連が中心で毎月何かしらのデジカメをレビューするかたわら、趣味が高じて自転車の記事や古地図を使った街歩きのガイド、歴史散歩本の執筆も手がける。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『古地図と地形図で楽しむ東京の神社』(光文社 知恵の森文庫)、『東京「多叉路」散歩』(淡交社)、『古地図と地形図で発見! 鎌倉街道伝承を歩く』(山川出版社)など多数。Instagramのアカウントは ogikubokeiで、主にiPhoneで撮った猫写真を上げている。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/
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