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企業価値につながるコンタクトセンター内製化 LIXILとARIが人とテクノロジーで実現

2024年01月17日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

提供: ARアドバンストテクノロジ

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在宅勤務をAmazon Connect + Mietaでリアルタイムに見える化

 無事にコンタクトセンターはスタートしたものの、新たな課題が持ち上がってきた。具体的には、コンタクトセンターのオペレータ含めての稼働状況の見づらさや必要なKPI指標のデータが取得できないなど、レポート機能の不足が課題であった。

 現時点でのAmazon Connectは、コール数や時間などの数字を表形式で見ることしかできない。データをCSVで吐き出しExcelで加工すれば数値は扱いやすくなるが、リアルタイムに状況を把握するのは困難だ。「SVのリーダーがAmazon Connectの画面を見て、誰が受付中で、どれくらい余力があるのか、瞬時に確認するのが難しい。スタッフ側がデータを活用するのも難しかったし、画面もコロコロ変わります」と、小田氏は悩みを語る。また、短期間でAmazon Connectのシステム構築を行なったベンダーは、AWSに関してはプロフェッショナルだったが、コンタクトセンターの業務含めたノウハウは持ち合わせていなかったので、継続的なパートナーとして不安を感じる部分もあったという。

 こうしたコンタクトセンターのオペレーション状況を把握するための「レポートの機能不足」といった課題から行き着いたのが、ARアドバンストテクノロジ(ARI)の「Mieta」だ。Mietaは、文字通りコンタクトセンターの可視化サービスで、Amazon Connectからのデータを取り込み、センター全体を可視化し、KPI分析や必要に応じてレポートの出力を可能にする。長らくコンタクトセンターの実務に携わり、サービスの企画も手がけたARアドバンストテクノロジの武居正子氏がLIXILへの説明を行なった結果、導入前提で話が進んだという。

ARアドバンストテクノロジ ユニファイドソリューションユニット CXスペシャリスト 武居正子氏

 きっかけは、Mietaというサービスの導入だったが、数回の打ち合わせを経た結果、小田氏としては、コンタクトセンター運営にまつわる不安が相談できたのも大きかったという。「私もコンタクトセンターに関わったのは4月からで、知識も書籍で得た程度のもの。他の自社コンタクトセンターは、規模が大きすぎて参考にならなかった。だから、武居さんの持っているコンタクトセンターの持っている知見はありがたかった。ARIさんとは長く組んでいけるパートナーだと思いました」と振り返る。

 武居氏は、「私はエンジニアではないので、技術面より運用側の視点でアドバイスさせていただきました。現場の人たちがパフォーマンスを上げていくのか、ノウハウを溜めていくにはどうしら良いのか、どうやって人を育てていけばいいのかなどを小田様と議論させてもらいました」と語る。両者で意気投合した結果、Amazon Connectの保守契約をARIに切り替え、Mietaを導入することで、在宅勤務の状況を可視化することにした。これが2022年3月だ。

Mietaで実現した目標の共有、メンバーへのケア、応対品質向上

 Mietaは、Amazon Connectのデータを取り込み、『エージェントスコープ』という機能を使うことで、オペレータの状況をリアルタイムにひと目で把握できる。「時間が長い人は上位に表示されるようになっているので、メンバーへのフォローもしやすくなっています」と武居氏は説明する。実際、運用中のエージェントスコープを見せてもらったが、誰がコールを受けているのか、どれくらい時間が経過しているのかなど、誰が何をしているのか瞬時に把握できる。

エージェントスコープの画面ではオペレータの状況が一望できる

 エージェントスコープは、本来SV向けのオペレータ管理画面だが、LIXILのコンタクトセンターでは、オペレータにも開放している。当初はSVしか見えないようにしたが、架電の順番が見えないオペレータとしては、いつ電話が回ってくるか分からないという不安があった。そのため、数ヶ月の検証の後、エージェントスコープの見える化をオペレータにも開放した。

 「誰が何件とっているかが分かってしまう」という懸念はあったが、結果として、この見える化は効を奏した。強力な見える化により、LIXILのコンタクトセンターの在宅勤務は大きく変わった。コール数も、応答時間も、後処理時間の状態など、一人ひとりのオペレータが今どういう状況なのか、把握することが可能になったのだ。

 2人のオペレータに聞くと、「Mietaを見れば、受電中なのか、その他の業務なのかが一目瞭然です。相手に配慮する際に、見える化は重要。Mietaがないと在宅の業務は厳しいと思います」(細目麻美氏)、「次に回ってくる順番が分かるので、時間があるのか、時間がないのか判断でき、間にできる作業が変わってきました」(前田愛実氏)という答えが返ってきた。

オペレータの細目麻美氏

オペレータの前田愛実氏

 他のメンバーの状況だけでなく、応答率も表示されるので、メンバー自身も意識するようになり、副次的な効果としては、競争心をあおる効果もあった。「Aさんが午前中に10本とったのに、私はまだ8本という話であれば、午後は頑張ろうという話になりますよね」と武居氏は説明してくれた。また、今までは同僚や上司と相談するときに、電話が入らないよう、「受付不可」というステータスを表示させていたが、Mieta導入後は他のオペレータの状況がわかるため、「受付中」のステータスでも相談できるようになった。オペレータの生産性も上がった訳だ。

 こうしたMietaの導入で得たメリットは「応答率」と「生産性」だ。まずAmazon Connectだけだった時に課題だった応答率だが、Mieta導入後は20%近く上がっており、ほぼ100%に近い応答率を実現している。これは他のオペレータの「今」が見られるため、コールを積極的に取れるようになり、相談も効率的に行なえるようになったためだ。

 Mietaの導入は応答率と生産性だけではなく、顧客対応の品質にもつながっているという。竹川氏は、「困っている人の可視化は特に重要です。リアルだったら隣で声かけできるんですけど、全員在宅。困った人をすぐにフォローすることで、次のコールが全然変わります。明るい声で出られる。だから、Mietaで応対品質まで上がったと感じています」と語る。

 小田氏は、「最初から在宅のコールセンターなので、家で1人でコールを受けているのですが、あたかも会社で一緒に仕事しているような体裁を取ることができました。メンバーも応答率を意識するようになったので、SVが言わなくとも、自律的にアクションを取れるようになりました」とまとめる。

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