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4年ぶりの会場開催となったSORACOM Discovery 2023基調講演レポート

生成AI×IoT、グローバル展開、衛星通信など 今年もソラコムはトピック満載

大谷イビサ 編集●ASCII

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 2023年7月5・6日、ソラコムは年次イベント「SORACOM Discovery 2023」を開催した。オンライン開催だった5日に続き、6日は新サービスや事例を大量に紹介する恒例の基調講演が会場に戻ってきた。生成AI×IoT、グローバル展開、衛星通信など気になるトピックも満載だった基調講演の模様をレポートする。

生成AI×IoT、グローバル展開、衛星通信など 今年もソラコムはトピック満載

ソラコム 代表取締役社長の玉川憲氏

グローバルのパートナーや事例が増えた1年

 「Connect-Reconnect」をテーマとして掲げ、4年ぶりの会場開催となったSORACOM Discovery 2023。基調講演に登壇したソラコム 代表取締役社長の玉川憲氏は、イベントの登録者数は4000人以上になったことをアピール。まずは最新動向とユーザー事例を紹介した。

 SORACOM IoT SIMは昨年、開始から7年で500万回線を突破し、ユーザーも2万を超えた。大企業のユーザーとしてロゴが増えたのは、象印マホービンやクラリオン、ヤマト運輸、オンワードなど。「動物のロゴが多くて、ほっこりしますね」と玉川氏。スタートアップとしてはスマート農業を手がけるFarmo、モビリティシェアリングサービスのLUUP、愛玩ロボットのLOVOTなどが新たにSORACOMを採用しているという。

 デバイス、テクノロジー、ソリューション、インテグレーションなどのカテゴリを持つSPS(SORACOM Partner Space)認定済みパートナーも159社に拡大。SPSプログラムはグローバルにも拡大しており、パートナーは昨年の23社から今年は40社に増加した。この中にはAWSのようなグローバル企業や、Sigfox事業を買収したUnabiz、DigiKeyのような半導体商社も含まれるという。

 公開事例は300以上に上っており、用途や業界はますます拡大している。ソラコム 執行役員 VP of Salesの齋藤洋徳氏は毎年恒例となった最新事例の紹介を行なった。

ソラコム 執行役員 VP of Sales 齋藤洋徳氏

 製造業やエネルギーの分野では、分電盤の安全管理の自動化を実現したダイキン工業(淀川製作所)、製造データをクラウド連携したトヨタ自動車、熱源機器の遠隔チューニングを行なっている北海道ガスなどが挙げられた。

 また、ポットを用いた「みまもりホットライン」のクラウド化にあわせて導入した象印マホービン、自宅でも簡単に睡眠を計測できるサービスを手がけるS'UIMIN、ドラレコデータをマルチクラウドで連携しているクラリオンライフサイクルソリューションズ、公園のカメラのオンライン化を実現している東京都豊島区、水槽の漏水を事前検知している川崎水族館(アイ・レジャー・エンターテインメント)、EVチャージャーで利用しているパワーエックスなども新たなユーザーだ。

 さらに、35カ国・400万以上の加盟店を持つ決済サービスの決済端末でSORACOMを利用しているイギリスのSumUP、業務用冷蔵庫の温度管理に利用しているイギリスのSollatekなどグローバルの事例も増えている。

 事例の中で増えているカーボンニュートラルの取り組みについて説明したのは、東京電力エナジーパートナーの勝岡伸圭氏。カーボンニュートラルや防災は経営理念の中にも組み込まれており、単に電力を提供するだけではなく、カーボンニュートラルという付加価値を提供していくことを重視しているという。

東京電力エナジーパートナー 常務執行役員 販売本部 法人営業部長 勝岡伸圭氏

 一言にカーボンニュートラルと言っても、エネルギー消費量を減らすシェイプアップ、カーボンフリーエネルギーへの転換を組み合わせる電化、カーボンフリーエネルギーを創出する創エネ、カーボンフリーエネルギーを調達するネットワークなど大きく4つのアプローチがあり、これらをどのように実施していくかは企業によって大きく異なる。そして、これらを検討するために機器の運転情報や電力の使用量データが必要になるため、IoT化やデータ分析が重要になるという。勝岡氏はデータ活用例として、キャンパスの電力利用量をリアルタイムに見える化している早稲田大学のカーボンニュートラルの取り組みを披露した。

 ソラコム自身もカーボンニュートラルを推進する。まずはAWS上に構築されているシステムを、省電力プロセッサーのAWS Gravitonに移行。これにより、オンプレ比較で77%、Graviton採用でエネルギー削減でさらに60%を削減する。また、エコSIMの採用により、プラスチックも削減。100万枚のSIMあたり4トンのプラスチックが削減できるという。

ガートナーの評価も向上 日本企業も、現地顧客も増加

 続いて玉川氏は、SORACOM Airの進化について説明した。2015年9月にスタートしたSORACOM AirはIoT専用のSIM。「AWSのようなIoTプラットフォーム」を目指し、データ転送やIoTデータの保存、可視化、遠隔監視、閉域接続などの操作をWeb/API経由で実現できる。初期費用は902円/回線(データ通信)、300MB込みで基本料月額330円/回線という使いやすい価格も大きな売りだ。

 サービス開始から8年が経ち、ソラコムもグローバルIoTプレイヤーとしての存在感が増している。調査会社ガートナーのマジッククアドラント(マネージドIoTプラットフォーム)では、昨年までニッチプレイヤーだったが、今年度はビジョンの完成度の高さを示すビジョナリープレイヤーへと飛躍した。「日本のスタートアップでこの位置に入るのはとてもまれなことなので、うれしく思っている」と玉川氏は語る。

 現在、SORACOM Air for セルラーは大きくグローバル対応のSORACOM IoT SIMと特定地域(日本)向けのキャリアごとのSIMが提供されている。日本国内のラインナップでは、GPSや見守り端末、スマートメーターなどに最適な5MBバンドルの「planX3」、遠隔監視や業務用タブレットでの活用が多い3OOMBバンドルの「plan-D」「plan-K2」、そしてカメラやロボットなどで用いられる「plan-DU」などがある。plan-DUは上り100GB込みという大容量プランも提供されている。

ソラコムがビジョナリーの1社へ!

IoT SIMの幅広いラインナップ(日本国内用途」)

 当初、特定地域(日本)向けのSIMからスタートしたSORACOM Air for セルラーだが、現在は後発となるSORACOM IoT SIMが90%を占めるという。さらにカード型のSIMに比べ、組み込み型のeSIMはすでに過半数を超えている。

 前述の通り、グローバルでのIoT事例は増え続けており、POCKETALK、フジテック、三菱重工、IHIなど日本企業のグローバル事例のみならず、海外の現地顧客の事例も増えている。前述したSumUpやSollatekのほか、養蜂家を支援するBeeHero、ヘルスケアでのデータを取得するWithingsなども現地顧客だ。

対応する国は162カ国へ 最強のIoTプラットフォームへ近づく

 SORACOM IoT SIMはカバレッジをさらに拡大させている。もっともスタンダートなplan01sの場合、対応する国は162カ国(昨年は150カ国)、対応キャリアは328(昨年は280)となり、そのうちLTE対応は228キャリア(昨年は192キャリア)まで拡大した。5GやLPWAのカバレッジも拡大しており、5G(NSA)は日本を含む31カ国、LTE-MやNB-IoTなどLPWAも日本を含む25カ国で対応しているという。「世界の国は196カ国あるので、残り20を切っている」とのことだ。

拡大するSORACOM IoT SIMのカバレッジ

 こうしたSORACOM IoT SIMのカバレッジの広さは、単にグローバルキャリアとの連携のみで実現されているわけではない。鍵になるのは無線経由でサブスクリプション(契約回線)を追加できる「サブスクリプションコンテナ」と、世界各地にランデブーポイントを設置することで低遅延な通信を実現する「ローカルブレイクアウト」という2つのテクノロジーだ。玉川氏は、「サブスクリプションをいつでも追加で、世界中のIoTデータを指定のクラウドに安全に送信できる。最強のIoTプラットフォームを目指してきたが、ようやく完成形に近づいてきた」と玉川氏は語る。

 とはいえ、グローバル展開においては、課題がある。その1つはローミング接続の期間が限られてしまう「パーマネントローミング規制」になる。ブラジルや中国、中東諸国、トルコなどで行なわれているこのパーマネントローミング規制により、ローミング接続によるIoT接続は難しくなり、現地のローカル回線やレギュレーションへの対応が必須となる。

 この課題を解決すべく、新たに作られたのが、特定地域用のサブスクリプションになる。今回発表された「planP2」はブラジル向けのサブスクリプションで、接続キャリアとして現地のTIM Brazilを採用。サンパウロにあるAWS南米リージョンでローカルブレイクアウト対応するという。7月よりリミテッドレビューが提供される。

ブラジル向けのサブスクリプション「planP2」

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