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地域に拡がるスタートアップ支援 横浜市「YOXO」、広島県「ひろしまユニコーン10」の魅力

JID2023セッションレポート「地域活性のためのスタートアップエコシステム」

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JAPAN INNOVATION DAY 2023

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自治体はスタートアップ支援でなにを実現したいのか?

 では、なぜこうしたエコシステムが必要になるのか? 南野氏はまず横浜市のエコシステムと課題について説明する。

 横浜で注目されているのが、「みなとみらい21地区」。開発が進むJR桜木町駅やみなとみらい駅周辺のこの湾岸地域は、現在は高層ビルがどんどん建ち、グローバル企業などの本社や研究開発拠点などが拠点を構える。そして、その横に位置する開港以来のビジネス街が「YOXO BOX」のある「関内」で、スタートアップも集積しつつある。「中華街をはじめとした飲食店が多く、港を臨むロケーションで、賃料もとてもリーズナブル」と南野氏はアピールする。

 横浜市が目論んでいるのは、このみなとみらい21地区のグローバル企業などの本社や研究開発拠点と、関内のスタートアップを連携させること。「違うタイプの人材がクロスオーバーすることで、イノベーションがどんどん生まれてくる」と南野氏は語る。

 そして、市内におけるオープンイノベーション創出をさらに推進すべく2年前に立ち上がったのが、産学公民連携でのイノベーションを実現する団体「横浜未来機構」だ。正会員は大企業、中小企業、大学、スタートアップなど100者を超え、すでに10以上のプロジェクトが走っているという。また、スタートアップ成長支援拠点の「YOXO BOX」のほかにも、IoT分野の「I・TOP横浜」やライフイノベーション分野の「LIP.横浜」といった連携プラットフォームも用意されており、他の自治体や海外との連携も含めたエコシステムを構成しているという。

 こうしたエコシステムの形成を重視するのは、もちろん人口減少や超高齢化などの課題がある。大都市横浜市も2021年の378万人をピークに人口減少のフェーズに差し掛かっており、2025年には高齢者人口も100万人に迫る。産業構造が大きく変わっていることもあり、新産業を興していかないと、横浜市も衰退を避けられない。こうした強い危機感のもと、2022~2025の中期計画の中では「スタートアップの創出・イノベーションの推進」をテーマに掲げ、注力しているという。

 広島県の歳森氏は、「地方はスタートアップ自体が首都圏と比べて少ないのが現状。リソースを集約していかなければならない」とコメント。また、いつも同じメンバーにならないよう、他の地域と連携して、刺激をもらいつつ、広島県の企業もアピールしているとのこと。「バスケットボールを作っているモルテンさんのようなオンリーワンの技術をお持ちの会社も、全国的に知ってもらいたいと思っている」と語る。

 広島県が特に注力している実証実験に関しても、県内だけではなく、県外の企業や団体も巻き込んで進めている。ガチ鈴木は、自動水上モビリティを手がける株式会社エイトノットの事例を披露。「エイトノットはもともと大阪府堺市のスタートアップだが、広島県に強力に後押ししてもらって瀬戸内での実証実験を展開できた。こういう形での自治体との縁はスタートアップも自ら取りに行くべき」とアピールした。

ASCII STARTUP 副編集長 ガチ鈴木

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