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連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第82回

IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 5月6日~5月12日

企業が奪い合う「クリエーター的エンジニア」、検索から見る20代後半~30代の悩み、スポーツ市場の未来は明るい、ほか

2023年05月15日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。

 今回(2023年5月6日~5月12日)は、企業における「クリエーター的エンジニア」「チーフ産業革命オフィサー」の必要性、国内コラボレーティブワークスペース市場、IoT機器を狙うサイバー攻撃の動向、スポーツ市場が拡大する理由、20代後半~30代の悩み=クオーターライフクライシス、についてのデータを紹介します。

■[人材][DX]2026年までに日本企業の60%が優秀な人材を奪い合いへ、求められるのは「クリエーター的エンジニア」(ガートナージャパン、5月11日)
・「クリエーター的エンジニア」や、CIOやCDOを超える「チーフ産業革命オフィサー(CIRO)」が不可欠に
・2026年までに日本企業の60%が、ITスタッフをクリエーター的エンジニアとして再定義する
・2026年までに、日本企業の60%超で優秀なエンジニアの奪い合いが起こる

 ChatGPTなどのテクノロジーと産業革命的な変換期に備えるために、これまでにないものを創造する「クリエーター的エンジニア」が重要になると展望する。チーフ産業革命オフィサー(CIRO)は、デジタルを前提とした企業への再定義を推進するリーダーで、長期の活動期間を設定することが重要という。「2030年に向けて、どのような人材が必要なのかについてプロファイルを定義する必要がある。同時に、優秀なエンジニアが真に活躍できる環境を用意することも重要」と助言している。

■[コラボレーション]国内コラボレーティブワークスペース市場は2022年、10%増の3334億円に、今後は生成AIが大きな影響要因に(IDC Japan、5月10日)
・2022年の国内コラボワークスペース市場は3334.5億円、前年比10%増
・リモートワーク実施中の企業(従業員1000人以上)は61%
・今後、生成AI関連サービスの影響は大きいと予想

 2月に調査した「国内コラボレーティブワークスペース市場予測、 2023年~2027年」より。2022年、同市場は3334億5600万円、前年比10%増となった。過去2~3年間の市場を牽引してきた業務デジタル化のための新規需要は鈍化したものの、デジタルワークスペースの活用を前提にさらなる業務効率化のための追加投資が高い成長につながったという。2022~27年は年間平均成長率(CAGR)6.4%で成長し、2027年には4537億7400万円になると予想。生成AI関連サービスが市場に及ぼす影響は大きく、本質的な働き方の変革、リスキリングを伴う従業員の配置転換につながると予想している。

国内コラボレーティブワークスペース市場予測、2021年~27年(出典:IDC Japan)

■[セキュリティ][IoT]IoT機器を標的とした週平均の攻撃数は68%増加、世界を上回る増加率(チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ、5月8日)
・2023年1~2月、IoT機器を狙う1組織当たり週平均サイバー攻撃数は前年同期比68%増(日本)、41%増(世界)
・週平均52%の組織がIoT機器を狙うサイバー攻撃を受ける
・業界別では「教育・研究」「ISP・MSP」「SI・VAR・販売代理店」がトップ3

 同社脅威インテリジェンス部門のチェック・ポイント・リサーチ調査より。1~2月の2カ月間、週平均52%(日本)/51%(世界)の組織がIoTデバイスを標的としたサイバー攻撃を受けた。攻撃数では週平均91件(日本)/60件(世界)となり、世界の数字は前年比41%の増加。攻撃対象の機器は、ルーター、IPカメラ、デジタルビデオレコーダー(DVR)など多岐にわたる。攻撃対象となった業界としては教育/研究分野が最多で、前年比35%増の週平均131件。学校が保存する豊富な個人情報が狙われること、学校や学生がサイバー攻撃に脆弱であることなどを理由と分析している。

IoTデバイスを狙うサイバー攻撃は過去3年、前年から増加している(出典:チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ)

業界別の攻撃数。教育/研究分野が最多となった(出典:チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ)

■[スポーツ]スポーツ市場の今後3~5年の年成長率は6%、「放映権」「ベッティング」が牽引、「女性スポーツ」にも期待(PwCコンサルティング、5月9日)
・スポーツ市場の今後3~5年は年間成長率6%と予想
・74%の組織は「Web3戦略がない」一方で、コレクティブル(トレーディングカードなどファン収集グッズ)分野ではWeb3とブロックチェーンが機会もたらす
・専門家の75%は「今後3~5年で女子スポーツの収益が15%以上増加する」

 日本を含む43カ国・500人以上のスポーツ関係者に成長機会や脅威について調べた結果をまとめた「PwC スポーツ産業調査(第7版)」より。今回は女性、サステナビリティ、Web3などをトピックとした。新型コロナによる危機を脱したこともあり、将来への楽観が目立った。成長要因としては「放映権」「スポーツベッティング」「女性スポーツ」など。放映権は、2024年までに600億ドルを超えると予想、放映権の今後3~5年の年間成長率予測は前回調査の約2倍となった。76%が、「放映権獲得で大手テクノロジー企業が有利な立場にある」と回答している。

市場成長の展望、過去3~5年間(灰色)と今後3~5年間の年間成長率。アフリカ、中東、オセアニア、アジア、北米で過去の成長を上回ると予想(出典:PwCコンサルティング)

予想される収益源別の年間成長率(出典:PwCコンサルティング)

Web3への関心は高いが、4分の3の企業はその戦略を持たない(出典:PwCコンサルティング)

■[生活]20代後半から30代に多い「クオーターライフ・クライシス」、何に悩んでいる?(ヤフー、5月10日)
・クオーターライフ・クライシス(QLC)に関するワードの検索は、25歳~30歳、40~45歳で多い
・QLC状態と仮定されるユーザーは「漠然とした不安」「人生 不安しかない」などの検索ワードで検索
・前向きになるための検索も、「夢をかなえるゾウ」「一人旅 おすすめ」など

 20代後半から30代が漠然とした不安や焦りを抱える「クォーターライフ・クライシス(QLC)」 に着目し、「不安」「焦燥感」などの検索ワードからこの世代の悩みについて分析した。「クォーターライフクライシス」はTwitterなどを通じて認知が広がり、その言葉を含む検索のボリュームスコアは2020年以来急増している。QLC状態にあると仮定されるユーザーの検索キーワードからは、どのような仕事をしたいか、転職すべきかで悩んだり、資格の取得も検討している様子が伺えるという。

カテゴリごとの特徴的な検索キーワードから、QLCの不安がうかがえた(出典:ヤフー)

「前向きになるためのヒント」が入ったワードをカテゴリ別に分類すると、書籍や映画などから刺激を受けたり、自分だけの時間を過ごすことを検討していることがわかった(出典:ヤフー)

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