AIの類推は、平然とした誤りを含む場合がある
最近話題になっているAIについて、もう少し正確に言えば“ディープラーニング技術”を用いた膨大な学習結果をもとにしたニューラル・ネットワーク型のAIのことである。
このタイプのAIはまるで人が作ったような出力結果(美しいイラストや自然な文章)を出力することができる。しかし、その反面で、まれにあり得ない回答を平然と返してしまうことがあるという問題が知られている。ニューラル・ネットワーク型AIのブラックボックス問題のひとつである。これはニューラル・ネットワーク型のAIがパターン認識で「考えて」いるために、似たようなパターンを取り違えられるとも考えられている。
最近のChatGPTでも「作家が自分について調べてみたら、身に覚えのない著作が並んでいた」という笑えない話があり、ネットで報告されている。人間ならば、その作家について少し調べるだけで間違いだということがわかる。
これは推測ではあるが、冬のヘッドフォン祭mini 2023では、finalが重低音の低価格ワイヤレスイヤホン「BASS2」を出展していた。また、finalには「E5000」というイヤホンもある。この二つの製品名に加え、ワイヤレスを示すことが多い「BT」の言葉がデータベースのパターン認識から連想されて「E5000BT」なる謎のイヤフォンが生まれてきたのではないだろうか。
こうした問題については、もしかすると開発元が有効な対策を打てるかもしれないし、学習が深まることで精度が上がるのかもしれない。しかし、AIがどのような過程を経てその結論を導き出したのかはブラックボックスなので、我々にはわからない。
概要をつかむ道具としては有効
一方で、やはりAIがとても役に立つ場面もある。一例を挙げてみよう。
つい先日「Bluetooth 5.4の仕様」が公開された。「もしLE Audioに関連するところがあれば確認しておきたい」が、全体を読むのは大変だ。そこで新しいBingに「先日公開されたBluetooth 5.4の新機能について簡単に日本語でまとめてほしい」と依頼したところ、瞬時に下記のような回答を得た(ほぼ原文のまま)。
Bluetooth 5.4は、2023年2月に発表されたBluetoothコア仕様の最新バージョンです。このバージョンでは、電子棚札(ESL)市場向けに開発された新しい無線規格が導入されました。この無線規格は、無線アクセスポイント(AP)と超低消費電力エンドノードとの間で安全かつ双方向の通信を実現するPAwRとEADという2つの新機能を含んでいます。これらの機能は、小売店や倉庫などで商品や在庫情報をリアルタイムで表示するために使用されるESLのデータ送受信を効率化します。
これを読むと、新しい仕様について私の場合は特に精読する必要がないということがわかる。これは大幅な時間の節約になる。ただし念のために概要程度には目を通しておいた。
このようにAIは便利であり、使い方によってはとても有効なのだが、AIの結果を盲信するのは良いことではない。やはりAIもツールの一つであり、何事もそうであるようにツールとは人間が注意しながら有効に使いこなすべきものなのだ。
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