Outlookは、Microsoft OfficeやMicrosoft 365の主要プログラムの1つで、もちろん今でも利用しているユーザーは多いだろう。Outlookのメールや予定表といった機能は、Windows 10/11の標準アプリケーションである「メール」や「カレンダー」からもアクセスが可能だ。
1997年に初登場以来のOutlookの変遷を見る
ここでは、OfficeやMicrosoft 365に含まれているOutlookプログラムを他と区別するため「Outlook.exe」と表記する。以下「.exe」がつくものは、ウェブサービスやAndroid用アプリケーションではなく、Windows用のアプリケーションを意味する。
Outlook.exeは、1997年のOffice 97に初めて同梱された。それ以前のWindowsには、スケジュール管理プログラム「Schedule+」やメール用の「Microsoft Mail」、Exchangeクライアントといったプログラムがあった。この時期のMicrosoftの製品は、企業向けと一般消費者向けが分かれており、似たような機能をそれぞれで開発していた。
電子メールにはDOS時代から続く、「Microsoft Mail for PC」(ドライブ共有を利用してメールを配信する)があり、Outlook.exeのサーバーとなるMicrosoftのExchange Server(1996年に登場)は、このMicrosoft Mail for PCの後継として登場した製品である。当初のExchangeでは、Exchageクライアントでアクセスしていた。
そこでWindows 95にはExchageクライアントが一時付属したが、Exchangeが単なるメールサーバーからNotes(旧Lotus製)対抗の「コラボレーションシステム」に変貌していく過程で、クライアントとしてOutlook.exeが開発された。
当初、Outlook.exeとExchange Serverは、MAPIと呼ばれるマイクロソフト独自のプロトコルで通信していた。これは、LAN内での利用を想定したものだ。Exchange Serverは、SMTPやIMPA4などのインターネットプロトコルもサポートするが、Outlook.exeとはMAPIを用いていた。このため、一般消費者向けにインターネットメールを扱うプログラムは別に用意することになった。
1996年にInternet Explorer 3.0が登場すると、「Microsoft Internet Mail and News」というメール/ニュースクライアントが同梱された。ウェブブラウザー戦争でライバルだったNetscapeがインターネットメールが扱えたからだ。さらにMicrosoftはHotmailを買収し、自社のメールホスティングサービスとした。
このMicrosoft Internet Mail and Newsは、1997年にOutlook Express 4.0に改名された。Outlookという名前を持つが、実際にはOutlook.exeとは何の関係もない。
この頃、個人ユーザーもOfficeを購入すれば、Outlook.exeを使うことはできたが、カレンダーの同期は不可能で、たとえばデスクトップとラップトップで同じカレンダーを参照することはできなかった。同期が可能だったのは、デスクトップマシンとWindows Mobile上のカレンダーで、Active Syncと呼ばれる技術が使われていた。これはPalmシリーズへの対抗上、Windows CEデバイスに導入された機能だった。ただし、Active SyncではモバイルデバイスをデスクトップマシンとRS-232C(シリアル)で直接接続する必要があった。
2006年のWindows VistaでOutlook Expressは廃止され、「Windows Mail」が登場するが、Windows 7では消費者向けのメールクライアントは「Windows Live Mail」という名称に変更され、Windowsとは別の「Windows Essentials」というソフトウェアパッケージの一部として配布されるようになる。
2010年頃、Windows LiveサービスにOutlookの同期プロトコルの1つであるExchange Active Syncが導入された。Exchange Active Sync(EAS)は、Exchange ServerとWindows Mobileを同期させるために作られたプロトコルだ。これで、一般ユーザーもモバイルデバイスをインターネット経由で同期できるようになった。
Windows 8が登場した2012年にOutlook.comが導入される。Windows Live、HotmailメールサービスがOutlook.comとなり、ウェブ版OfficeなどのMicrosoftの一般ユーザー向けクラウドサービスがOutlook.comに統合される。
2015年には、Outlook.comはOffice 365のインフラを利用するシステムに切り替わる。これにより、Outlook.comはExchangeサーバーとして振る舞えるようになり、ようやく個人でもOutlook.com経由で複数マシン間でカレンダーなどを同期可能になった。しかし、その頃にはすでにGoogleカレンダーなどのクラウドサービスが普及していた。
現在のOutlook.comは、マイクロソフトのクラウドサービスの起点の1つでもある。Outlook.comと呼ばれるが、実際にアクセスすると「outlook.live.com」となる。これは、もともと「windows.live.com」だった頃の名残である。
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