デジタル化(デジタイゼーション)のメリットとは? 紙からの移行ステップや注意点

文●ユーザックシステム 編集●ASCII編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

本記事はユーザックシステムが提供する「DX GO 日本企業にデジトラを!」に掲載された「デジタル化(デジタイゼーション)のメリットとは?紙からの移行ステップや注意点」を再編集したものです。

 ペーパーレス化が推奨されるなか、紙ベースでの業務に課題を感じてはいても、なかなかデジタル化に踏みきれない企業も多いのではないでしょうか。ペーパーレス化は効率化だけでなく、SDGs、ESGの観点からも、社会全体が取り組まなければならない課題です。

 ここでは、紙で行なっていた作業をデジタル化すると得られるメリットや、デジタル化が可能な作業の例、デジタル化を効率よく進めるための手順を紹介します。

※デジタル化には、デジタイゼーション(アナログデータのデジタルデータ化)、デジタライゼーション(業務・製造プロセスのデジタル化)、DX(全体業務・製造プロセスのデジタル化、ビジネスモデルの変革)の3段階があります。今回は、デジタイゼーションの一例として、ペーパーレス化の進め方について考えます。

デジタイゼーション、デジタライゼーション、DXについて知りたい方は以下をご覧ください。

【徹底解説】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?必要性から成功事例まで
デジタライゼーションとは?効果や業種別の具体例と推進のステップ
デジタイゼーションとは?デジタライゼーション・DXとの違いや具体例を解説

紙ベースでの業務削減で得られる3つのメリット

 ペーパーレス化という言葉を耳にするようになり、政府も本格的に推進の動きを見せたことで、紙ベースで行なう業務の廃止が進みつつあります。

 しかし、まだ多くの企業で紙を主体として業務が行なわれており、ペーパーレス化は十分に浸透しているとはいえません。企業に限ったことではなく、官公庁や教育機関などでも同様です。

 紙ベースの業務をデジタルに移行することは企業にとってメリットが大きく、導入すればさまざまな効果を得られます。

 次の3点が主なメリットです。

書類の劣化や紛失を防止
 紙ベースの文書は、経年劣化による変色や文字のかすれが起こる可能性があります。

 デジタル化した文書であれば半永久的に電子データとして保管され、内容が読めなくなるといった心配はありません。

 また、データファイルは容易に検索ができるため、保管場所がわからなくなる、あったはずの場所にない、などの紛失のリスクも防止できます。

紙の印刷、保管場所、管理コストの削減
 紙ベースで業務を行なう場合、既定の様式で書類を作成し管理するまでにさまざまなコストが発生しています。

 印刷する際には、用紙やインクなどの用品代、プリンターの維持費がかかります。印刷した書類の保管には、保管庫やキャビネット、保管スペースといった経営資源の消費、ファイルケースといった管理用品を新たに購入する必要がある場合はそのコストも発生します。

 また、管理を担当する社員の業務時間に対してコストを消費していることにもなります。

 ペーパーレス化を進めた場合、印刷に必要な用品代は必要最低限に押さえられます。

 また、ハードディスクやSDカードといったデジタル記憶媒体は、紙とは比べものにならない情報量を保管できます。書類の保管にはほんのわずかなスペースしか必要なくなり、保管のためのキャビネットも不要になります。

 紙ベースの業務にかかるコストは、デジタル化によって大きく削減できるのです。

検索や閲覧、整理、共有の効率化

 紙文書のファイルは、探している1枚を見つけるために時間を要します。ファイルが数十冊、数百冊もあれば、さらに多くの労力と時間を費やすことになります。

 では、ペーパーレス化が進むとどうなるでしょうか。

 書類をデジタル化して電子ファイルとして保存すれば、キーワードや内容に含まれる単語で検索をして、瞬時に目的の文書を見つけ出すことが可能です。それだけでなく、文書のなかからさらに目的の箇所まで、すぐにたどり着くこともできます。

 閲覧後の収納にかかる手間もなく自動的に整理されるため、紙ベースのように返却場所を間違えて、次回の閲覧時に見つけられなくなるといった問題も発生しません。

 紙ベースの書類保管では、別の場所にある事務所が閲覧を申請する場合はコストや手間、時間がかかります。実際に保管場所に出向くか、保管場所の管理者に連絡し、FAXやメールで送信を依頼しなければなりません。

 デジタル化してあれば、オフィスの場所を問わず文書の共有はスムーズに行なえます。閲覧できる書類の種類や、閲覧可能な範囲などの設定も可能で、管理者を通さなければ閲覧できないといった属人化を解消できます。

 ペーパーレス化によって文書の閲覧業務を効率化できると同時に、非属人化も進められるのです。

デジタル化が可能な例とその方法

 上述のように、紙からデジタルに移行することにはさまざまなメリットがあります。

 では、どういった書類がデジタル化できるのでしょうか。紙作業からデジタルに移行できるものやその方法の具体例、デジタル化することによる効果を紹介します。

見積書、請求書、納品書などのデジタル化

 電子帳簿保存法により、見積書や請求書、納品書などの帳票は電子発行が認められています。

 手書きの帳票をFAXや郵便で送っている場合は、帳票をスキャンしてPDFファイルに変換し、メールで送信する方法に切り替えることで、デジタル化できます。

会議やミーティングでの資料を電子黒板やプロジェクターに表示

 会議やミーティングにおいて、出席者各人に配布していた資料を印刷するのをやめ、電子黒板やプロジェクターに表示することでペーパーレス化は進みます。

 使用した資料は会議終了後に出席者全員にメール送信するか、共有できる場所に保存すれば後からでも閲覧可能です。

 離れた場所にいるメンバーとオンラインで会議をする際も、同様の方法で実施できます。

クラウド型ストレージやドキュメントサービスの活用

 デジタル化した文書は、一般的に、クラウド型ストレージと呼ばれるクラウド上の保管場所に保存できます。また、クラウド上でドキュメント(文書)作成が可能な、Google Drive、OneDrive、Dropbox、Amazon Driveなどのサービスを利用して、文書の作成や共有が可能です。

 これらのサービスを利用することによってデータ共有の利便性が向上し、紙作業でかかっていた郵送コストや運搬時間を削減できます。

デジタル承認サービスを活用して業務をスピードアップ

 デジタル化が進んだ環境では、ワークフローシステムや電子承認サービスを活用できます。従来のような、承認印をもらうために複数の上司を訪ねて回る作業が不要になります。

 申請側、承認側のどちらもオフィスにいる必要がなく、ファイルにアクセスできる環境であれば、どこにいても必要なときに承認が可能です。

 居場所や時間を限定されることがないため、業務の大幅なスピードアップが期待できます。同時に、業務プロセスが効率化することにより、企業の競争力と顧客満足度の向上にもつながります。

紙作業からデジタル化を効率よく進めるためのステップと注意点

 では、実際に紙作業からデジタルへ移行する場合、どのようなステップを踏むといいのでしょうか。一般的には、次のような手順で進めます。

1. デジタル化対象物(紙)の候補を選定

 作業分析を行ない、現状でどのような紙作業があり、どのように従業員の負荷になっているのかリストアップします。

 このとき、デジタル化できない理由ではなく、できる理由を考え候補を選定します。

「この作業は紙のほうが便利だから変更しない」といった理由は、この段階では必要ありません。「紙でなくても業務ができるのではないか」といった可能性を拾い、そこから具体的なデジタル化の方法へとつなげていきます。

 作業分析とデジタル化できる理由をリストアップすることで、業務プロセスそのものを見直す機会にもなります。業務プロセスを別の方向から効率化しながらデジタル化できるような、発想の転換が生まれる可能性もあります。

2. デジタル化ポリシーを作成

 デジタル化するうえで、運用上必ず守らなければならないこと、ルールとして設定しておかなければならないことを検討し、デジタル化ポリシーを作成します。

 ネットワークに接続されたパソコンや、持ち運び可能なデジタル記憶媒体を利用する以上、ITリテラシーについての教育は欠かせません。作成したポリシーをもとに教育を進め、全体のITリテラシーレベルを底上げします。

3. ビジネスプロセスを確認してデジタル化

 実際の現場ではどのようなプロセスで業務が進んでいるかを確認し、デジタルに置き換えたときどのように進むかもシミュレーションします。

 例えば、現状では紙ベースで提出が必須の申請書や、紙での保管が義務付けられている書類であれば、完全なデジタル化は難しいといえます。また、紙以外の帳票は受け取らない取引先も存在するかもしれません。

 しかし、行政機関に提出する申請書のデジタル化も進みつつあり、電子帳簿保存法により紙での保管義務も少なくなっています。取引先と交渉して、紙の帳票は必要最低限の発行だけにとどめることができれば、ペーパーレス化は前進するでしょう。

 こういった具体的なプロセスを確認し、問題がなければデジタル化します。

4. ドキュメント管理の習慣を変える

 紙での管理からデジタルでの管理に移行したら、ドキュメントの管理手法を変更します。

 例えば承認作業では、上司のもとを訪れて承認を得るといった習慣は廃止し、デジタル上でやりとりする承認フローを整備します。これによって、デジタル化のメリットがさらに大きくなります。

 また、保管や閲覧の方法とルールも変更します。閲覧可能な範囲や共有の方法を再設定して、効率的に業務を進めていきます。

 デジタル化の全体像や注意点に関しては、「アナログのリスクとは?デジタル化(デジタイゼーション)を進めるためのポイント 」で詳しく解説しています。

紙からデジタルへの移行で業務をスマートに

 紙で行なっていた作業をデジタルでの管理に移行する際、どういったメリットや注意点があるのかを紹介しました。

 これまで行なってきた紙ベースの業務をデジタル化することは、企業全体の業務をデジタル化するうえで大きな一歩になります。紙からデジタルへ移行する作業を通して、業務効率化につながるポイントを見つける習慣がつくでしょう。今回紹介した手順は、次に実施するほかのデジタル化にも当てはめることができます。ポイントを押さえて、デジタル化を推進しましょう。

過去記事アーカイブ

2024年
01月
02月
2023年
01月
02月
03月
04月
05月
06月
07月
08月
09月
10月
11月
12月
2022年
01月
02月
03月
04月
05月
06月
07月
08月
09月
10月
11月
12月
2021年
01月
02月
03月
04月
05月
06月
07月
08月
09月
10月
11月
12月
2020年
02月
03月
04月
05月
06月
07月
08月
09月
10月
11月
12月
2019年
11月