先週、バランスド・アーマチュアドライバーのメーカーであるKnowlesから2つの大きな発表があった。一つは5月17日に発表された「Dual-Diaphragm Balanced Armature」。もう一つは5月18日に発表された「An improved Target Response Curve for Insert Headphones」である。
Knowlesの新ドライバーはAstell&Kernも採用!?
Dual-Diaphragm Balanced Armatureを訳すと二重の振動板を備えたバランスド・アーマチュアドライバーという意味となる。プレスリリースによるとこれは小型のサイズで大出力が可能なドライバーであり、独立した二つの音響室および振動板が単一のコイルに接続された形式ということだ。これにより暖かみのあるクリアで自然な音が可能になるとしている。
またこの技術は先日発表されたAstell & Kernの新イヤホン「Pathfinder」に搭載されていることが、Knowlesのツイッターで明らかにされている。PathfinderはCampfire AudioとAstell & Kernの共同開発となる製品だ。先日、“春のヘッドフォン祭 2022”のCampfire Audioブースで披露され、ブラインドテストという形で来場者に素性を明かさないままの試聴機が用意されていた謎の新製品群にも採用されていたことが推測される。
Meet our new dual-diaphragm #balancedarmature: Crafted for high output in a small footprint, the dual-diaphragm design redefines best-in-class performance for the new Pathfinder #earphone by the #premiumsound phenoms at @CampfireAudio & @Astell_Kern. https://t.co/jaIrdqr8WEpic.twitter.com/gUewi6vQmT
— Knowles Corporation (@KnowlesCorp) May 16, 2022
An improved Target Response Curve for Insert Headphonesは直訳すると挿入型ヘッドフォンのための改良されたレスポンスカーブという意味となる。挿入型ヘッドフォンとはいわゆるイヤホンのことと思われる。では、レスポンスカーブとは何だろうか。オーディオ機器の開発に用いるリファレンスの周波数曲線のことだ。
よくヘッドホンやイヤホンのコメントで「音がフラット」(高音や低音が出過ぎずに全域で平坦)という言葉が用いられる。ただしこれはドライバーの周波数特性そのものがフラットで直線的ということではない。聴感上フラットに聞こえるカーブになっているということだ。本当にフラットな特性にしてしまうと、人間の耳には逆にフラットに聞こえなくなってしまう。
このために音響メーカーでは、聴覚に合わせて補正した周波数曲線を用意して開発に役立てることが多い。これをターゲットカーブと呼び、よく知られているのがハーマンが自らのスタジオで規定した「ハーマン・カーブ」だ。これはスピーカーのみならずイヤホンやヘッドホンの開発にもよく用いられている。
この連載の記事
-
第281回
AV
HIGH END Munich 2024出展製品から、気になるエントリーオーディオをセレクト -
第280回
AV
水月雨がオーディオファン向けスマホを開発、複雑になりすぎたスマホ高音質再生への問いかけ -
第279回
AV
Chordの積み木型オーディオシステムが面白い、「Suzi」と「Suzi Pre」 -
第278回
AV
さすがにSpotifyもロスレス対応しそう、Redditユーザーがさらに解析結果をリーク -
第277回
AV
スマホがLE Audioに対応していなくても、なぜAuracastを使えるのか? -
第276回
AV
Amazon Musicも生成AIを使ったプレイリスト作成機能提供、あいまいな指示に応える -
第275回
AV
ソリッドなステンレス筐体とK2HDサウンド、iFi audioの「Go bar 剣聖」 -
第274回
AV
いよいよSpotifyもロスレス配信か、Redditに解析情報 -
第273回
AV
ソニーが米国で展開し始めた、重低音新シリーズ「ULT POWER SOUND」とは? -
第272回
AV
自然な文章でプレイスリスト作成をうながせる、Spotifyの新機能 -
第271回
AV
音楽生成AIの進化速度に舌をまく、無料でも試せるStable Audio 2.0を使う - この連載の一覧へ