フィルム時代の一眼レフへのオマージュに溢れた、レトロかわいいニコン「Z fc」。これを持って猫散歩である。東京の下町、雨上がり独特の高湿高温、要するに一番しんどい暑さの中、そろそろ疲れたから帰るか、アスファルトの上は暑くて人も多いので、公園の中を突っ切ろうと水を飲みながら歩いてたら、猫がいたのである。
逃げないうちに遠くから望遠で狙うかとしゃがんでファインダーを覗いたら、あろうことかこっちへトコトコとくるではないか。慌てて広角系の標準ズームにつけかえて、もうこうなったら猫瞳AFよ、あとは任せたって感じで気にするのは構図だけだ。
そしたら足元にきてぐるっと回り始めたので、一緒に回転流し撮り。
この猫、すごく人なつこいのだ。世話をしている方に名前を聞いたら「ゴンタロウ」という。確かに、ゴンタロウっぽい貫禄だし、下町っぽい感じもして似合う。ゴンタロウが少し離れたところでちょこんとしゃがんだので正面から撮りたいのだけど、こっちが動くと向こうも呼応しちゃう。そういうときはそっとモニターを開いて腕を伸ばしてこんな感じで狙うのである。
そして、左手で猫を撫でながら撮る。
さらに、別の公園でも猫と出会う。といっても、暑くて蒸し蒸ししてる中、猫がのほほんと歩いてるわけない。偶然、低木の中で隠れてるというか涼んでるというか避難してるというか、そんな猫が隙間から見えたのだ。
望遠レンズをつけて、顔がよく見える隙間を見つけてにらめっこ。
にしても、この時期にカメラを首からぶら下げて歩くとストラップが汗臭くなっていけませんな。撮影終えてカメラをバッグにしまおうと首からはずすとき、ふと匂う。やはり夏の散歩は昼間ではなく夕暮れがいい。
今回、このニコンからZ fcを借りる際、一眼レフ用のFマウントレンズを装着するマウントコンバーターFTZもお願いしていたので、黄昏猫撮影用に古い単焦点レンズをつけることにした。手元に残っているFマウントのレンズの中から選んだのは2008年に発売されたシグマの50mm F1.4 HSM。デジタル一眼レフ時代を先導するレンズだった。絞り開放で撮ってもシャープで、そこからのボケもきれいなのだ。
これで撮ったのが冒頭写真。定期的に世話をしてる方々がいて、その時間が近づくとどこからともなくやってくるのである。これは晩ご飯をじっと待つ2匹の図。背景にコンビニの灯りを入れて逆光で狙ってみた。
一匹がチャシロ。見ての通りの名前。けっこう近寄らせてくれるけど、人への警戒心は強い。奥に見えてるのがポンタ。いわれてみるとなんともポンタっぽい。ぷくぷくしてて体格がよくて、人を怖れず撫でさせてくれる。
かなり暗かったのだけど、瞬時に猫瞳AFが効いたのには感心。ニコンのZシリーズは暗所のAFに弱いという印象があったのだけど、かなり改善されたっぽい。
というわけで、Z fcはカメラもってスナップ撮りながら散歩するのに、見た目も軽さもすごくいい。でもって、猫瞳AFが仕事してくれるので、猫を撫でながらとか猫がややこしい場所にいてややこしい姿勢で撮らなきゃいけないときなんかも「猫AFさんよろしく」ってんで構図とタイミングに集中できるからいいのだ。
真夏のコロナ禍ってもう冷房効いたところから出たくない条件勢揃いなんだけど、夕刻、人は少ないけど猫に出会えそうな場所をぶらぶら散歩するのも乙である。
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筆者紹介─荻窪圭
老舗のデジタル系ライターだが、最近はMacとデジカメがメイン。ウェブ媒体やカメラ雑誌などに連載を持ちつつ、毎月何かしらの新型デジカメをレビューをしている。趣味はネコと自転車と古道散歩。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジカメ撮影の知恵 (宝島社新書) (宝島社新書)』(宝島社新書)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『東京古道散歩』(中経文庫)、『古地図とめぐる東京歴史探訪』(ソフトバンク新書)、『古地図でめぐる今昔 東京さんぽガイド 』(玄光社MOOK)。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/
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