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渋谷ヤスヒトの「腕時計」トレンド・ニュース解説 第1回

「スイス2大時計フェア中止」新型コロナが時計業界に起こした大きな事件

2021年02月07日 12時00分更新

文● 渋谷ヤスヒト 編集●飯島恵里子/ASCII

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2019年のバーゼルワールドは、出展社が激減し空いたスペースを緑化スペースや水が流れるような演出でカバーした

出展社の信頼を裏切ったバーゼルワールド

 しかし2020年のバーゼルワールドは、新型コロナウイルス対策のために開催できないことになりました。そしてバーゼルワールド事務局は、開催中止をアナウンスする際に、回復不可能な「致命的な過ち」を犯します。出展社である時計ブランドに無断で「フェアは中止しない。2021年1月に延期して開催する」と発表したのです。

 さらに「中止だから出展料を返還してほしい」という出展社協議会のリクエストに対して、バーゼルワールド事務局は以下のような信じられない回答をします。

 「出展料の85%を1月に延期したフェアの出展料に充当する。残りの15%は延期の経費として徴収する。あるいは、出展料の30%を返金するが、40%は延期したフェアの出展料に振り向け、残りの30%を延期の経費として徴収する。どちらかを選べ。もし、延期したフェアへの出展を中止する場合は、出展料は一切返還しない」

 この回答にロレックスをリーダーとする出展社委員会と事務局の間の信頼関係は、修復不可能なまでに砕けてしまったようです。

 2020年4月半ば、長年フェアに出展し協力してきたバーゼルワールドの盟主的存在であるロレックス、パテック フィリップ、ショパールとチューダー、そしてシャネルの5ブランドは「バーゼルワールドからの離脱」と「ジュネーブでのWWGと同時期での新フェアの開催」を宣言。数日後にはこの動きにブルガリ、ウブロ、ゼニス、タグ・ホイヤーの5ブランドを傘下に持つLVMHグループもバーゼル離脱、ジュネーブの新フェアへの出展を表明。

 この結果、世界で最も歴史があり、最も規模が大きかった時計フェア「バーゼルワールド」は事実上、終了・消滅に追い込まれました。

 その後、バーゼルワールド事務局は、勝手に2021年1月に延期した2020年のバーゼルワールドの中止を正式に表明。さらに出展社の要求通りに出展料を返金する方針を表明したようですが、もはや後の祭り。

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