旭化成エレクロトニクス(AKM)が、3月4日付けのニュースリリースで、高級オーディオ用DACのデジタルとアナログの分離ソリューションを提案、それに沿った新しいラインナップとして「AK4191」(デジタル処理用)と「AK4498」(アナログ処理用)を発表した。
これは従来ワンチップで構成していたDAC ICから、デジタル信号を処理をするモジュレ―ター部分(デジタルフィルターやΔΣ処理を担当)を独立させ、アナログ信号を扱うDAC部と切り分けることで、さらに高音質を狙っていくコンセプトである。これによって、デジタル処理で発生するノイズが、アナログ信号に与える影響を最小化し、聴感上のS/Nを向上できるとしている。この2つのICをチップセットとして組み合わせることで従来とDAC ICと同様の機能を持たせされる。
高級なHi-Fi機器では、音質を向上させるため、デジタル回路とアナログ回路を分離して、干渉を減らす仕組みが取り入れられているが、これに似た考え方と言える。
デジタル担当のICであるAK4191では、デジタルノイズ成分の低減に加えて、オーバーサンプリングレートがいままでの8倍から256倍に高性能化、主に高域特性を向上させている。対応するデジタルデータもPCMが1536kHz、DSDが44.8MHz(DSD1024)と従来よりも大きく向上する。
アナログ担当のAK4498では、現在のフラッグシップであるAK4499と同じような電気的な余裕度と低域ノイズ特性を持たせた、オーディオ専用ICとして製造される。特性はTHD+N:-116dB、S/N比:128dBとされている。AK4499はS/N比:140dBをうたっているので、ここはスペックよりも実際の聴感重視なのかもしれない、
AK4191は2020年の第2四半期のサンプル出荷を予定。AK4498は量産ステータスにあるとのこと。2チップに分けることで、必要とされる基板の面積なども大きくなるため、当面はSACDプレーヤーやネットワークオーディオなど、据え置き機への搭載が中心になると予想できるが、AKMのDACはデジタルオーディオプレーヤーなどにも多数採用されているため、小型のデスクトップ再生機やキャリアブルな製品など、パーソナルオーディオ分野での応用もありうるかもしれない。
そうなれば、PCM:1536kHz、DSD:44,8MHzに対応するような高性能のDACやデジタルオーディオプレーヤー製品を作ることができるだろう。いまのところ、こうしたハイレゾ音源はないが、PCとの組み合わせであればアップサンプリングと組み合わせた再生なども考えられる。オーディオ製品の可能性を広げる新製品と言えるだろう。
この連載の記事
-
第281回
AV
HIGH END Munich 2024出展製品から、気になるエントリーオーディオをセレクト -
第280回
AV
水月雨がオーディオファン向けスマホを開発、複雑になりすぎたスマホ高音質再生への問いかけ -
第279回
AV
Chordの積み木型オーディオシステムが面白い、「Suzi」と「Suzi Pre」 -
第278回
AV
さすがにSpotifyもロスレス対応しそう、Redditユーザーがさらに解析結果をリーク -
第277回
AV
スマホがLE Audioに対応していなくても、なぜAuracastを使えるのか? -
第276回
AV
Amazon Musicも生成AIを使ったプレイリスト作成機能提供、あいまいな指示に応える -
第275回
AV
ソリッドなステンレス筐体とK2HDサウンド、iFi audioの「Go bar 剣聖」 -
第274回
AV
いよいよSpotifyもロスレス配信か、Redditに解析情報 -
第273回
AV
ソニーが米国で展開し始めた、重低音新シリーズ「ULT POWER SOUND」とは? -
第272回
AV
自然な文章でプレイスリスト作成をうながせる、Spotifyの新機能 -
第271回
AV
音楽生成AIの進化速度に舌をまく、無料でも試せるStable Audio 2.0を使う - この連載の一覧へ