海外ブランドDALIの高級ヘッドホンを聞く
ワイヤレスでもいい音で聴きたい、そしてイヤホンではなくヘッドホンで聴きたいというユーザーのために、昨年末に発売されたDALIの「iO-6」を紹介したい。国内ではD&Mホールディングスの取り扱いとなり、量販店での実売価格は5万4000円前後である。
DALI(ダリ)はデンマークのスピーカーブランドであり、スピーカー専業だったDALIがヘッドホン分野に進出した初の製品が「iO-6」と「iO-4」だ。本稿で取り上げるのはiO-6だが、違いはiO-6にはアクティブ・ノイズ・キャンセリング機能が採用されていることだ。Bluetooth 5.0に対応。AAC、aptX、aptX HDに対応している。また3.5mmステレオミニ端子の付属ケーブルを使用してアナログの有線接続もできる。
外観的な特徴は、その美しいデザインだ。キャラメルホワイトとブラックがあるが、特にキャラメルホワイトモデルでは北欧のメーカーらしいデザインセンスが光る。外に持って出たくなるようなデザインだ。
また最近のトレンドを反映してiO-6にはアクティブ・ノイズ・キャンセリング機能が搭載されている。加えてトランスペアレンシー機能(いわゆる外音取り込み機能)がついているので、移動中にアナウンスを聞き取りたい場合には便利だ。アクティブ・ノイズ・キャンセリングは優秀で不快な環境音(電車の騒音など)はよくカットするが、会話や車内アナウンスの周波数帯域は通しやすいようなので使用感も良い。
凝ったつくりで、スピーカーブランドならではの真摯さがある
ここまでの機能は、実のところ、ほかのワイヤレス・ヘッドホンにもよくあるのだが、iO-6を真に特徴付けているのはその音質の高さと凝った設計だ。
スピーカーの専業メーカーであるDALIは初めてのヘッドホン製品を設計するにあたって、「基本的にヘッドホンは頭の両側に取り付けられたスピーカーである」というポリシーを立てた。これは一見するとよくある宣伝文句のように思えるが、DALIの真摯な点はそれを文字通りに実装したことである。
普通のヘッドホンの振動板はスピーカーの小型版のように思えるが、実はかなり簡易的な設計がなされていることが多い。これはヘッドホンの歴史的な経緯にもよる。しかし、iO-6のドライバーは、まるでスピーカーをミニチュア化したような手が込んだ設計がなされている。例えば振動板にはスピーカーのようなフリーエッジ(縁部)が設けられていて、振動板がより自由に動く。またマグネット部分にはスピーカーのようにボビン(芯材)を採用して振動が正確に行われるような工夫がなされている。
こうした凝った設計は、以前にも、デノンやAudioQuestの10万円を超えるような高級機では採用されたことがある。しかし、5万円前後の製品では例がなかった。iO-6はワイヤレスヘッドホンとしてはかなり高価な部類だが、内部を見てみるとこのように高価格が納得できるような設計がなされているわけだ。
また実際に使用してみると遮音性もかなり高いのでノイズキャンセリングがなくとも周囲の音はかなりカットされる。こうした点からも設計はかなり入念に行われて入ることがわかる。
なめらかで上質な表現が魅力、声が明瞭で透明
音を聞いてみると、低価格モデルにありがちな硬くて荒くきつい音とは無縁だ。スムーズでなめらかな上質さを感じることができる。透明感が高く、音声の明瞭感も良くヴォーカルもよく聞き取れる。低音域もパワフルだ。それに加えて海外メーカーらしい美しい音のチューニングも魅力的で、長い時間聞いていたくなる。iO-6の良さはカタログスペックでは表れにくい内部にこそあり、そうした魅力を持つ製品こそが良品と呼ぶことができるだろう。
ゼンハイザーからもワイヤレスヘッドホン新機種が登場
2月18日、ゼンハイザーから、aptX LowLatency対応のBluetoothワイヤレスヘッドホン「HD 450BT」「HD 350BT」が3月3日に発売されるという発表があった。
HD 450BTは、既発売の「HD4.50BTNC」、HD 350BTは「HD4.40BT」のブラッシュアップモデルで、ゼンハイザーならではの音質に加え、SBC、AAC、aptX、aptX LLといったBluetoothのコーデックに対応。特に、aptX LL対応ということで、動画視聴やゲームプレー時に音声が遅れにくく、ストレスフリーである点が強調されている。
HD 450BTは、ノイズキャンセリング搭載のワイヤレス・ヘッドホンだが、実売2万4000円前後と、Bluetoothヘッドホンとしてはやや高めに設定されている。Bluetoothヘッドホンは、低価格化や利便性の向上といった側面での進化が続いてきたが、流れが少し変わってきたのかもしれない。
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