米国にいる人はマスクが邪魔になるなんて知らない
日本でスマホを使っていればすぐに気づくはずのこの事実。しかし前述の通り、普通の人ですら半年間マスクを装着して都市生活を送る日本が特殊なわけで、普段からマスクをしない生活様式を送っている人にとって、Face IDが半年間無力化するなんて思いつかないわけです。
確かにAppleはグローバルに製品を販売している企業ですが、製品には必ず「Designed by Apple in California」と書いてあります。つまり、カリフォルニアの常識にない生活における前提は、そこまで加味ないと解釈して間違いありません。
ブリーフィングのたびに、役員に日本の特殊事情について話しますが、Face IDとマスク問題、通勤電車での初期のAirPodsの接続落ちの問題などもそうしたトピックだったりしていました。
しかしマスクで顔認証できない問題も、これから対策が進むかもしれません。というのも2017年以降、カリフォルニアで年々大規模化する山火事によって、その濃い煙がサンフランシスコやシリコンバレーに流れ込み、学校が休校になるなどの影響が強まってきました。
いわゆる「N95」グレード(細菌や花粉など直径0.3μm以上の微粒子を95%以上捕集できる)のマスクを買いあさり、空気清浄機とともに街やオンラインショップからマスクが消える事態が起きました。2018年には、空気の質に関する警報も出され、毎シーズン山火事の影響でマスクをするようになりつつあります。
そして今回のコロナウイルスの感染拡大で、空港などでマスクをする米国人の姿も珍しくなくなりました。つまり、マスクがより生活の中で一般化していくことで、「マスクをしているとFace IDが使えない」という実体験が、Appleが本拠地を置くカリフォルニアの人々にも拡がっていきます。
そのため、マスクで顔認証ができない問題は、そろそろ対策されるのではないかと期待しているのです。
確かにパスコードを入れれば顔認証をしなくてもロック解除できますが、半年間頻繁にパスコード入力をするならと簡単なものを設定してセキュリティを毀損するのもあまりいいこととは言えません。顔と指紋のハイブリッドにするとか、目の光彩認証に取り組むとか、方法はいくつかあると思っています。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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