●HDDが水没するとどうなる?
HDDには、内気圧調整用の空気孔があります。
空気孔のおかげで急激な気圧変化によるクラッシュを防いでいますが、今回のように長時間水没するような状況下では、空気孔から浸水し、データが記録されているプラッタにダメージを与えて動作不良を引き起こしてしまいます。
水没後すぐ引き上げられたPCや、耐衝撃ボディを採用した密封性の高いポータブルHDDが浸水を逃れて生存したケースもありましたが、ほとんどのHDDは砂や泥がプラッタやアクセスアーム周りに付着し、再起不能状態になっていました。
また、HDD内部への浸水ダメージがほとんどなくても、泥水まみれで何週間も放置されたために、基板が腐食して読み取れなくなったパターンもありました。
●サルベージ業者への依頼
水没した端末をすぐ解体してHDDを取り出し、表面を軽く洗い流してから密封性の高い袋に入れ、「HDDサルベージサービス業者」へ送れば、高確率でデータを救出できます。しかし、記事執筆時点において、私の取引先でサルベージを実施した件数はゼロ。最大の理由は莫大な作業コスト。自然災害で故障したHDDからのデータ救出には、非常に高度な設備や技術が必要で、費用は高額になります。
国内大手のサルベージサービスを例に挙げると、水没したHDDを分解し、特殊溶液で内部洗浄をして、データ救出の可否を確認するまでの初期診断費用が2万円。さらに、データ量や論理構造に応じて価格が変動し、水没したHDDからデータを救出する全行程で数十万円から数百万円の実費がかかってしまいます。
水害のダメージに加え、事業停止による経済的損失、会社の建て直し、その上にデータ復旧費用となると……。被災地域の中小企業は、借金を背負ってでも事業を継続するか断念して、解散するか、非常に過酷な選択を迫られています。
(第2回「西日本豪雨 無事だったSSD」に続きます)
●倉敷市への募金窓口:
倉敷市社会福祉協議会
http://kurashikisyakyo.or.jp/
筆者──Imaha486
本業はしがないセールスエンジニア。連載を持っていた雑誌が休刊となってからは専ら仮想通貨をマイニングしつつ、なろう小説を書く日々を過ごしています。なお、今回の記事執筆に関する報酬は全て西日本豪雨被害復興目的に寄付します。皆様も被災地への温かいご支援を宜しくお願いいたします。
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