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日本独自のパートナープログラム「Red Hat on Azure Partner Network」を拡充

レッドハットと日本MS、Azure Stackや次期SQL Serverでも協業

2017年09月05日 10時00分更新

文● 羽野三千世/TECH.ASCII.jp

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 日本マイクロソフトは9月1日、国内パートナー向けイベント「Japan Partner Conference 2017 Tokyo」を開催した。“オープン×パートナーソリューション”をテーマとするスペシャルセッションでは、1月に開始した日本独自のパートナープログラム「Red Hat on Azure Partner Network」のアップデートとパートナー事例が紹介された。

 レッドハットとマイクロソフトは2015年11月に、Microsoft Azure上でのRed Hat Enterprise Linux(RHEL)のネイティブサポート、Azureとオンプレミス環境で稼働するレッドハット製品の統合的な共同サポートを柱とする協業をグローバルで開始した。

 2017年8月にはグローバル協業の範囲を拡大し、Red Hat OpenShift Container Platform(OpenShift)上でのWindows Serverコンテナのネイティブサポート、Azure上でのOpenShift Dedicatedのネイティブサポート、RHELやOpenShift上でのSQL Serverのネイティブサポートを追加する計画を発表している。

 このグローバル協業に加えて、両社の日本法人は、国内独自のパートナープログラムRed Hat on Azure Partner Networkを1月に開始した。Azure上でのレッドハット製品(Red Hat on Azure)活用を顧客に提案する「Masterパートナー」、「Entryパートナー」を認定。認定パートナーには両社の製品サービスのサブスクリプションを特別価格で提供し、さらにMasterパートナーにはレッドハットから案件サポートを行う専任営業を派遣するという内容だ。“1年限定”のプログラムだとしている。

国内独自のパートナープログラムRed Hat on Azure Partner Network

RHEL on Azureでオートスケールする営業支援システムを構築

 Red Hat on Azure Partner Networkのこれまでの成果について、レッドハット クラウドパートナー営業部 チームリード シニアパートナーアカウントマネージャーの佐藤郁朗氏と、日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 OSS戦略担当部長の新井真一郎氏は、「9月時点で約100社のパートナー企業が参画し、8社がMasterパートナーに認定された」と説明した。

 すでに、MasterパートナーによるRed Hat on Azureを使ったシステム構築の事例も出ている。

 Masterパートナーである日本ビジネスシステムズは、従業員約9千人の金融・保険業の営業支援システムを、Azure上のRHEL環境を利用して構築した。

左から、日本ビジネスシステムズ 金山英知氏、レッドハット 佐藤郁朗氏、日本マイクロソフト 新井真一郎氏

 顧客は、もともと営業支援システムをオンプレミスのWindows基盤中心で運用していたが、「サービスカタログをWeb化し利用状況に応じてオートスケールさせたい」、「アプリケーションの検証環境がたくさん必要」というニーズから、今回Azureへ移行。Azureが備えているオートスケールの仕組みを利用し、仮想マシンのOSポリシー設定やミドルウェア展開もShell Scriptを作って自動化した。災害対策のために、MongoDBで構築したデータベースをAzureの東日本リージョンと西日本リージョンでDR構成にしている。

 日本ビジネスシステムズは今後、Azure上のRHEL環境のインフラ構築を、PuppetやAnsibleなどの構成管理ツールを使って自動化するソリューションを提供していくとする。

AzureとJBossで資産管理サービスをリニューアル

 同じくMasterパートナーのシーイーシーは、IT機器レンタル業のディーアールエスがエンドユーザー企業向けに提供してきた資産管理サービスのリニューアルを手掛けた。基盤をオンプレミスからAzureへ、データベースをOracle DBからSQL Serverに、IBM WebSphereをJBossへ移行している。これにより、従来比50%のコスト削減効果が得られたという。

シーイーシー 細田浩志氏

 シーイーシーは同日、OpenShift on Azureの導入作業を代行するサービス「コンテナプラットフォーム導入支援サービス」を10月初旬から開始することを発表した。同社のITリノベーションサービス「Re@nove(リノーブ)」の一部として提供する予定だ。

 また、日本マイクロソフトとレッドハットは同日、Red Hat on Azure Partner Networkの範囲を拡大することを発表している。これまではRed Hat on Azureを中心にパートナーを集めてきたが、プログラムの対象プラットフォームにSQL ServerやAzure Stackも加えて、SQL ServerやAzure Stackを基盤とするレッドハット製品を扱うパートナーを募っていく。

OpenShiftとマイクロソフトプラットフォームの連携強化

 前述のように、マイクロソフトとレッドハットは8月にグローバル協業を強化し、OpenShift上でWindows ServerコンテナとSQL Serverをネイティブサポートすると発表している。

 OpenShiftは、オープンソースのコンテナアプリケーショ基盤(CaaS)ソフト。アプリケーション実行環境としてDockerを採用し、DockerコンテナのオーケストレーションにはKubernetesを使う。オンプレミスやIaaS環境向けの商用版「OpenShift Container Platform」、AWS、GCP、Azureなどのパブリッククラウド上でマネージドサービスとして提供する「OpenShift Dedicated」、開発者向けの無償版「OpenShift Container Local」などの提供形態がある。

 レッドハットのテクニカルセールス本部 シニアソリューションアーキテクト 大溝桂氏は、6月の「DockerCon 2017」で発表されたDockerコンテナの利用動向に関する数字を引用し、「Docker Hubで公開されているDockerイメージは90万種類以上あり12憶回もダウンロードされていっるが、プロダクション環境でのコンテナ採用率は35%にとどまっている」と述べた。

レッドハット 大溝桂氏

 大溝氏は、これらの数値を「市場にはコンテナのオポチュニティがある」と捉える。「コンテナ単体を使うのは簡単だが、エンタープライズのプロダクト環境で利用するに当たっては、セキュリティ、運用管理、スケーラビリティなどいろいろ考慮が必要。OpenShiftはコンテナを使うための機能がすべてそろっており、エンタープライズグレードのサポートがある」(大溝氏)。

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