このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

製造業はいかにしてスマートになるか、その鍵を握るのは何か

「製造業は次の段階へ」SAP幹部、IoTとインダストリー4.0を語る

2016年08月19日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

――IoTは大規模なもので、マインドセットの切り替えが必要です。

 変化は簡単ではありませんね。ですが、製造業は「次のステップに行かなければいけない」と認識しています。SAPは、成功事例を提示することで支援していきます。

 多くの企業が、すでに「するかどうか」ではなく、「どうやって」の段階にあります。ソフトウェアの問題だけではなく、どのようにビジネスを変えるのかであり、SAPはサービスを提供するとともに、戦略面でのコンサルができる企業とも提携して支援しています。

 例えば、今後は製品を売るのではなくサービスを売るとなると、これはビジネスに大きな影響を与える戦略変更です。ITや技術ではなく、ビジネス上の意思決定となります。

 フランスの自動車サプライヤーFaureciaは、戦略コンサルとSAPを利用してプロジェクトを開始しました。CEOがChief Digital Officerを任命し、このCDOはCIOではなくCEO自身に報告する体制を整えました。CDOは戦略コンサルとSAPとともに、ビジネストランスフォーメーションを考えました。その結果、6~8種のプロジェクトを定義し、着手しています。

 これはトップダウンで戦略を考えて、定義して、実行するという、古典的ではあるが正しい方法といえます。これまでのようにサプライチェーン、製造過程、セールスプロセスの最適化にとどまらず、技術をどのように活用するかが重要です。また、社員は変化の準備ができているのか、教育やトレーニングの必要があるのか、適切な人材を雇用できるかなど、人事も関係してくるものです。ドイツでは、製造業がソフトウェア開発者やソフトウェアの知識がある人を起用することがトレンドになっています。

IoTの相互運用性、セキュリティ面での懸念は

――IoTにおける相互運用性は?

 通常新しい技術トレンドではまず、各社が独自に開発してその後標準化の動きが起こります。標準化は、立ち上がり期には発展を減速させますが、これなしには成功しないので重要です。

 IoTでは、マシンやセンサーをIT環境やバックボーンに接続する部分で標準化が必要となります。SAPはいくつかのコミュニティに参加しています。製品としては、顧客の製品に組み込まれたセンサーをHCPに接続するためのソフトウェアを用意しています。これは選択肢の一つであって、他にも接続部分で技術を提供する企業は存在します。最終的な目的はデータを取得して活用することです。

――セキュリティ面での懸念は?

 SAPは自社のデータセンターを持っています。私の意見では、われわれや他のクラウドベンダーが持つデータセンターは顧客が自社で構築・運用するデータセンターよりも安全だと思います。懸念の多くは、データが悪用されないかで、SAPは”データセンターのデータはSAPではなく、顧客が所有する”ということを明確にしています。

 われわれはSAP環境で自社のソフトウェアを動かす顧客を支援することに徹しています。主要な市場でデータセンターを構築しており、データがその国にある形で運用できます。顧客はドイツ企業という点でも、われわれに信頼を寄せています。

■関連サイト

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード