クラウドを使ったデータ連携によって
アプリに対する考え方も変わる
今回のAdobeのCreative Syncのデモを見て、1つの誤解が解けてきたことがわかります。それは、Adobeのアプリは重たく高機能で、マシンやストレージ、使い方の習得も含めて、使い始めるのが大変、という“印象”があったことです。
しかし、Creative Syncによってたくさんのモバイルアプリを活用しながらクリエイティブ作業を行う様子は、筆者が持っていた印象とは真逆でした。
デスクトップアプリは、進化を続けながら、思ったことが何でもできる存在であり続けるのでしょう。しかし新たに加わっているモバイルアプリは、1つの機能もしくは目的をシンプルに便利に利用できることが主眼となっていました。
改善されてきたとはいえ、モバイル、特にiPhoneでは、大きなデータをアプリ間で引き継いでいくことが難しかったと言えます。しかしAdobeは、クリエイティブに特化したクラウドによって、アプリ間のデータや作業環境の移動を受け持ってくれます。
それなら、大きなアプリに加えて、1つの機能のモバイルアプリを活用する作業スタイルも、より円滑になり、クリエイティブのワークフローの中で、モバイルの位置づけがより明確になるのではないでしょうか。
Adobe Maxに力を入れるMS、いち早くSurface Bookを展示
デスクトップからタッチデバイスへの移行の波も
またAdobeは、2015年のテクノロジー業界で非常に重要なプレイヤーになっていると感じています。それは、AppleとMicrosoftというOSとハードウェアを作る企業にとって、なくてはならない存在と位置づけられているからでしょう。
Microsoftは、昨年からAdobe Maxに力を入れており、ちょうど10月6日に発表されたSurface BookとSurface Pro 4も、即日ブースを改修して展示を始めていました。加えて、Appleは、Adobeとのプライベートイベントを開き、iPad ProとApple Pencilを持ち込んで、最新のAdobeのモバイルアプリのデモをプレスとデザイナーに向けて開催しました。
基調講演では、iPad ProもSurfaceも、前述のCreative Syncを生かしたワークフローの上で共演していました。デスクトップマシンからタッチデバイスへの移行という立場を取るMicrosoftと、iPad Proという大画面タブレットによるコストメリットの最大化を狙うApple。
いずれもAdobeのクラウドに連携するアプリ群は、元々のワークフローに加わる、あるいはワークフローそのものを変革する上で、必要な存在になっていると感じています。
Adobeとともにこの波における重要なアプリ群は、自身もハードウェアを作っているMicrosoftにとってはOffice製品になるわけです。この文脈では、Googleの存在感が薄いなというのもまた印象的といえます。
引き続き、この分野についても空気感を含め、お伝えしていきたいと思います。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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