龍谷大学と京都大学の研究グループは3月30日、科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業において、バイオエタノール生産に有望な酵母株を見出したと発表した。
通常、デンプンなどの多糖類からバイオエタノールを生産する場合、アミラーゼなどの多糖分解酵素で処理した後に酵母株を用いていた。多糖分解酵素は高コスト化の要因となりやすいため、多糖分解処理を必要としない一気通貫プロセスの開発が望まれていた。遺伝子組み換え酵母の利用も考えられるが、量産の際には封じ込めに余分な設備投資が必要という問題もある。
研究グループでは、京都大学構内の土壌より単離した酵母を培養試験を行ったところ、デンプンを糖化・発酵する一気通貫プロセスで高いエタノール生産能力を持ち、また生産したエタノールに対しても高い耐性を持つ酵母株を発見した。この酵母株は高温耐性やキシロース(藁や竹、おがくずなどに含まれる)発酵能力も高いという。バイオ燃料生産はトウモロコシやサトウキビ、イモなどの作物を使うと効率が高いものの、穀物の燃料利用は人の食料を奪うことになることから人道上望ましくないため、今回発見された酵母は人が食べられない木質部や食品廃棄物の燃料転換として期待される。
同種の非可食バイオマスを用いたバイオ燃料生産研究はさまざまな研究機関で行われている。英イースト・アングリア大学の研究成果(3月26日発表)によると、藁からのバイオエタノール生産には日本酒醸造用の酵母株と同系統の株が有望なようだ。藁は農業廃棄物なのでバイオエタノール生産は適したバイオマスだが、藁に含まれる化合物フルフラールが発酵を阻害する。このためフルフラール抵抗の高い酵母を模索した結果、日本酒を作る酵母と同系統の酵母を行き着いたという。
どちらの研究も非可食バイオマスからのバイオエタノール生産を目指しているが、遺伝子操作といった手法なしに、しかも京大敷地内や日本酒醸造用といった比較的身近なところで有益な微生物の用途が得られたという点も注目したい。