広島大学は2月6日、培養した自己骨髄幹細胞を関節に注入し、軟骨欠損部に磁力で誘導する手術を世界で初めて実施したと発表した。
これは広島大学病院整形外科のグループが実施したもので、骨髄間葉系幹細胞を関節に注入する再生外科手術。関節の軟骨は自己修復しにくい部分で、老化などにともなって減ってしまうと膝などの痛みとなって現れる。これまでにも人工関節や人工的に培養した軟骨を移植する手法があるものの、大掛かりな手術が必要だった。
今回実施された治療法は、本人の骨髄液を採取して骨髄間葉系幹細胞を培養。骨髄間葉系幹細胞は骨や軟骨、脂肪や筋になる幹細胞で、この細胞にフェルカルボトラン(MRIの造影剤に用いる磁性物質)を混ぜて細胞を磁性化。軟骨損傷箇所に注射し、そののちは磁力で欠損部に誘導する。
手術が不要なため身体への負担が少なく、関節軟骨が欠損した高齢者には大きなメリットとなる。万能幹細胞として注目される幹細胞再生治療だが、負担なく治療できる臨床応用の技術にも注目したい。