Tizenを搭載した初のスマートフォン「Samsung Z」がようやくSamsungより発表された。フラッグシップの「GALAXY S5」とも似たスペックを持つSamsung Zは、ロシアで9月までに発売される見込みだ。だがキャリアはまだ発表されておらず、“満を持して”のリリースというには多少無理のあるローンチとなった。
予定通り、だが盛り上がりに欠けた「Samsung Z」発表
Samsungは、Intelなどとともに立ち上げたTizen Associationがサンフランシスコで開催した開発者向けイベント「Tizen Developer Conference」の前日にSamsung Zを発表した。
Samsungは以前から第2四半期中にTizenスマートフォンを発表すると語っていたので、Samsung Zの発表は予定通りではあった。ただし、業界の目は同じサンフランシスコで開催されていたAppleの「WWDC」に向いており、インパクトは薄くなってしまった。
Samsung Zのスペックは全体としてGALAXY S5と似ている。4.8型のフルHD Super AMOLEDディスプレーを搭載、カメラはメインが8メガ、フロントが2.1メガで、指紋認証や心拍数モニターなどの機能もある。2.3GHz動作のクアッドコアプロセッサー、2GBのRAMをベースとする。OSはTizen 2.2.1。ネットワークはカテゴリー4のLTEをサポート、バッテリーは2600mAh。サイズは138.2×69.8×8.5mm、重さは136g。色は黒とゴールドの2色展開となっている。
特徴は迅速な起動とマルチタスク機能。2D/3Dグラフィック品質をサポートし、スクロール、ウェブブラウジングのレンダリングなどの操作も快適に行なえるとしている。
GALAXY S5が発売された今春、SamsungはTizenスマートフォンを年内に2機種ローンチすること、1機種目はハイエンドとなり、2機種目はミッドレンジになるとの見通しを語っていた。また、提供地域についてもロシアやインドが挙がっていたので、Samsung Zはほぼ計画通りといえる。それでもロシアで発売するという以外はキャリアも価格も明かしておらず、楽観よりも懐疑の材料の方が多いのが現状だ。
Googleへの依存減らしたいSamsung
Tizenを搭載した端末は、Samsung Zで3製品目となる。2013年秋にカメラ「NX300M」を発表、続いて2月のMWC前夜にスマートウォッチの「Gear 2」でTizenを選んだ。Samsung Zはこれに続くものとなる。
モバイル業界におけるプラットフォームとエコシステムの戦いがスマートフォンでスタートし、いまだに主戦場となっていることを考えると、Samsung Zはこれまでの2製品と意味合いが異なる。やっとのことで、iOS、Android、Windows Phoneなどがひしめくスマートフォン市場にTizenが参入……と言えるからだ。
もちろん新しいOSという点でもライバルは多い。「Firefox OS」(Mozilla)、「Sailfish OS」(Jolla)の2種類は2013年にスマートフォンが登場しており、「Ubuntu」も準備を進めている。
Samsungにしてみれば、Android/Googleへの依存からの脱却に向けた大きな一歩といえるだろう。Samsungはスマートフォン市場で約3割のシェアを持つ。OSレベルで8割のシェアを持つAndroidの中で、約6割がSamsung製端末である。それでも、プラットフォームとエコシステムをGoogleが掌握している限り、Samsungの立場は弱い。TizenでSamsungはGoogleへの依存を減らし、エコシステムを自社の収益に変える仕組みを作りたいところだ。
Androidスマートフォンは現在ではどこも同じような端末を作っており、Samsungは優れたハードウェア、スケールメリット、そしてブランディングなどで王座を勝ち取ってきた。だが、ハイエンド側では消費者は新しいものを探し始めており、ローエンド側の消費者は”同じようなスマートフォン“を“少しでも安く”買いたいと思っている。価格競争になれば中国メーカーが優位だ。
Samsungはその対応策としてソフトウェアやサービスを強化しているが、Androidに依存している限り、戦略はGoogleに部分的に依存することになる。たとえばAndroidのUIの差別化一つとっても、自由度は低くなっている。Samsungが1月末にGoogleと結んだ合意はこれを決定づけるものとなっており、”たくさんあるAndroidメーカーの1社”に陥らないために、Tizenは重要な技術となる。
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