CdSを置き換える回路は一晩で
―― 森川さんは、なぜNuvibeを担当することになったんですか?
森川 三枝がUni-Vibeを作ったという話は聞いていて、回路的にとても面白いものなので、その原理を解説していただきましょうという、社内の勉強会みたいなものがあって。その中で話が盛り上がってきて、じゃあ作りましょうとなったときに、配属されたてで何も担当製品がなかったものですから……。
―― あの、なんか無理やりやらされた感が。
森川 最初はもっと「簡単なお仕事」みたいな感じで言われていてですね……。
三枝 あはははは。いやいや。
森川 この中に豆電球とCdSが入っているんですけど、抵抗値が波のように変わるんです。「それがどうなっているのかを調べてよ」というのが、最初の仕事だったんです。エフェクターのLFOの波形って大事なんです。三角を入れたり四角(矩形波)を入れたり、ノコギリを入れたり。そのどれとも違う独特の波形をしているらしくて、どう動いているかを調べた人が社内でもいなかったんです。
―― 森川さんは大学でそういう研究をされていたんですか?
森川 専攻は材料工学で、どっちかというとCdSがどういう風にできているか、CdSを作りたいという側の人間なんです。最初はそっちで粘っていたんですけど。
―― ああ、なるほど!
三枝 僕らのような電気屋は、素子を作るという発想はないですよね。回路で何とかしようとしますよね。彼は、素子で何とかしようという。CdSがないんだったら別の方法で、素子そのものを作って、それで置き換えればいいんじゃないかと。
森川 実際にメーカーと話をしたりもしたんですけど、向こうもやったこともないものをいきなり作れと言われても、難しいみたいで。あまり話がうまく行かない間に、三枝がその(トランジスタで置き換える)回路を一晩くらいで書いてきたんですよ。
三枝 えへへ。
―― あれっ? じゃあ一晩でできたんじゃないですか。
三枝 いやいやいや、最終的には彼がだいぶ手直しをしてね、苦労しましたよね?
森川 問題が多くて基板は何回も作り直しましたね。3、4回は作り直しました。
―― 三枝さんは、一晩で書けるならなぜ今までまでやらなかったんですか。
三枝 それは彼が材料を一から作って、ものすごい投資をしてやりたいというから、その反動で、まあ、つい。いや、それは嘘ですけど。
(後編へ)
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ
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